伊集院静さんの自伝的長編小説を映像化したドラマスペシャル『いねむり先生』の試写会・記者会見が8月11日(日)に行われました。
主人公サブロー役の藤原竜也さん、サブローを導く阿佐田先生を演じた西田敏行さん、脚本・監督を手がけた源孝志さんが出席し、原作者の伊集院静さんも特別ゲストとして登壇。「感動しました!」と完成した作品を絶賛しました。
試写会では、完成したばかりの作品が上映され、不完全で孤独な2人の男が寄り添いながら再生していく姿に、思わず目を潤ませる記者の方も!
その後開催された記者会見では、主演の藤原さんが「とても完成度の高い脚本で、嘘をつくことなく、正面から作品に向きあうことができました」と充実感たっぷりの笑顔で語り「近年あまりない、”大人な”ドラマです!”決してひとりではない”、”少しずつでも前に向かっていけばつかめるものがあるんだ”と感じていただける作品」と出来栄えをアピール。
また、先生役を熱演した西田さんは、故・夏目雅子さんと共演したときの思い出を振り返りながら「夏目さんと伊集院さんにこんなバックボーンがあったことを知って、本当に愛おしくなりました。ボクにとって縁のある人ばかり登場する作品なので、うれしくなってしまいました」と出演を決めた心境を明かしたほか、 “旅打ち”の撮影でロケ地をまわった際、西田さんが適当に選んだ馬券が的中したエピソードを披露!「ギャンブルの神様・阿佐田先生の魂が降りてこられたんじゃないかな」と話し、会場を笑いに包んだ場面もありました。
そして、原作者の伊集院さんは「西田さんは気持ち悪いくらい、先生とよく似ていました。驚いたのは、最初に西田さんが登場するシーン。本当に先生と最初に会ったときと同じような場面を作ってくれて、震えるような感覚がありました!」と打ち明け、作品の完成を祝福しました。
――最初に作品に触れたときの感想は?
「まずは、伊集院先生がゴーサインを出してくださったのが、うれしかったですね。また、『遺恨あり 明治十三年 最後の仇討』(2011年2月放送)以来、源孝志監督とまたタッグを組む喜びもあり、そして何より、大好きな西田さんと組めるのかと思うと、とてもうれしかったですね! 旅打ちに出たサブローと先生のように、撮影中は常に西田さんと一緒でしたが、西田さんと共にいる、その空気がボクの心を揺さぶってくれました! 名優と出会わせてくれて、監督、スタッフに感謝しています」
――実在の人物を演じるプレッシャーは?
「伊集院先生は同性から見てもかっこよく、こういう風になりたいと思わせてくれる大人。この役をいただいて緊張しましたが、先生とお会いしたとき、“監督と俳優にゆだねる”という意思を受け取りましたので、脚本の中のサブローをどう表現していくかだけを考えて、演じさせてもらいました。とても完成度の高い素晴らしい脚本で、不思議なもので忠実に脚本をなぞるだけで自分の感情をしっかりと埋めていくことができました。嘘をつくことなく、正面から作品に向きあうことができましたね!」
――マサコ役の波瑠さんと共演した感想は?
「波瑠さんは、スタッフの中でアイドル的存在でした! 撮影現場でも、夏目さんと雰囲気がよく似ているという声が出ていましたね」
――この作品に込めた思いとは?
「めったに巡り会えない、どっしりとして心温まる素晴らしい作品に、運よく会わせていただいたことに喜びを感じています。近年あまりない、”大人な”作品。”決してひとりではない”、”少しずつでも前に向かっていけばつかめるものがあるんだ”と感じていただける作品だと思います」
――最初に作品に触れたときの感想は?
「藤原さんはいつか一緒に仕事をしたいと思っていた俳優のひとりで、彼の才能をゆっくりと味わいながら共演したいと思っていたところに、素晴らしい脚本をいただきました! それに、ボクにとって縁のある人ばかり登場される作品なので、うれしくなってしまいましてね…。特にマサコのモデルになった故・夏目雅子さんとは、かつて共演していたときに、“あ、誰かと恋に落ちているな!”と感じさせる輝きを放っているのを目の当たりにしていたこともあり、夏目さんと伊集院さんにこんなバックボーンがあったことを知って本当に愛おしくなりました」
――実在の人物を演じるプレッシャーは?
「伊集院先生が撮影現場にお見えになり、モデルになった阿佐田哲也さんとよく似ていらっしゃるといわれたときは、うれしいやら何やら(笑)。“お腹がぽっこり”というのが先生の特徴のひとつなので、一生懸命ぽっこりさせようと思って、まさに“逆ロバート・デ・ニーロ”でした(笑)」
――旅打ちの撮影で思い出に残っているのは?
「新潟・弥彦神社の境内の中に競輪場があったのは面白かったですね! 夜、宿で監督や藤原さんと一献を傾けて作品について語り合えたのも楽しかったです」
――この作品に込めた思いとは?
「本当にやさしい人間というのは、社会のラインから外れて世の中を斜に見ている人の中に多いように思います。我々は競争に巻き込まれ、”勝たなければ”という意識をどこかに持っていますが、ギャンブルをやるということは、”負けるを知る”ということ。そういう境地に達している2人の男のロードムービーだと思います!」
――『遺恨あり』で組んだ藤原さんを再び主演に抜擢した理由とは?
「『遺恨あり』の主人公は侍で、藤原くんの持つスキルをすべてつぎ込めば素晴らしい演技ができると思っていましたが、サブローは光明を失った、いびつな心を持った男で、とても難しい役。とにかく、彼ならどう演じるか見てみたかった! なかなかこの役を演じられる役者はいないと思います」
――この作品に込めた思いとは?
「人は人によってしか救われない…という思いですね。この作品は単なる自伝的小説ではなく、伊集院さんから若い大人たちに対するメッセージ。人間というのは欠けたところがあればあるほど、やさしさが詰まっているのだと思います」
――完成作品をご覧になった感想は?
「きょう初めて作品を拝見して、切ないところがありましたね。亡くなる前に2人で病室から見た東京湾大華火祭のシーンもあり…。何十年前の過去の出来事も、つい”昨日のこと”なんだな…とつくづく思いました。彼女のファンの方にとっては心を揺さぶられるシーンも多々あると思います」
――この作品に込めた思いとは?
「この原作本が発売されたのは、東日本大震災から1カ月後でした。小説のテーマは、”人は人を救えるか”ということ。書きはじめたとき、それはできないのではないかという思いがあったのですが、ずっと先生のことを書いているうちに”人を救うのは人にしかできない”という結論に至りました。先生のセリフで”人は病気や事故で亡くなるのではない、寿命で亡くなるそうです”というものがありますが、あのセリフから全体の流れが変わっていき、”人は人でしか救えない”のだと思うことができた。このドラマも、それが自然とわかるようなエンディングだったことが非常にうれしかったですね」
ドラマスペシャル『いねむり先生』9月15日(日)よる9時放送!