実はコントが主戦場…邪道な漫才で注目されたコンビ・ラパルフェの次なる展望とは?|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#37

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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2018年にデビューしたラパルフェ。2年目には都留拓也のモノマネがSNSで注目され、知られるようになっていく。

スタートダッシュを決めたふたりは、『M−1グランプリ』の予選でもたびたび話題になり、お笑いファンのハートをつかんだ。

傍目には順風満帆に見えた。しかし実は解散寸前まで行くほど、不仲だったという。中学高校の同級生で、仲がよかったはずのふたりは、なぜ追い詰め合ってしまったのか。そしてどうやって立ち直ったのか。

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ウッディブレイクで深まるコンビ間の溝

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左から:都留拓也、尾身智志

──前編では、ラパルフェのキャリアは挫折から始まってると聞きました。

都留 そうですね、あれはやる気なくなったもんなぁ……。本当にどうしたらいいのかわからなくなりましたね。でも大学時代の成功とか、養成所で一歩抜けてたこととか、小さい成功体験はあったから、あのころの感覚が恋しくなるんですよ。それで2019年に、わらにもすがる思いでやったのが『トイ・ストーリー』のウッディのモノマネだったんです。

──絶望の中で生まれたネタだったんですか。

都留 大学のお笑いサークルでも平場でやってましたね。ピンネタで大会に出たこともあるんです。それを引っ張り出してきた。

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尾身 都留くんはもともとモノマネが得意で、中高生のころからいろんな先生のモノマネしてたよね。

都留 プロになってからはあんまりやってなくて。でもちょうどTikTokが流行り始めたころで、今ほどコンテンツがなかったから、いろんな人の目に触れやすかったんでしょうね。ここでなんとか僕の気持ちは一時的に回復しました。

──相方がバズったとき、尾身さんの心境は?

尾身 普通に応援してました。コンビとしてひとりがポーンと行ってから、あとからコンビで行くっていうパターンもあるなと思ってたんで。知名度が上がるのは単純にいいことだなと。

都留 当時は僕のネタ動画も、長尺のやつは尾身が撮影に来てくれて、編集もしてくれてましたし。

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──コンビ仲はよかったんですね。

都留 うーん……。

尾身 コンビ仲はよくなかったです。

都留 土佐兄弟さんって有輝さんがネタやって、拓也さんが編集するんですよ。それなら僕たちも、尾身が編集してくれていいんじゃないかなと思って、やってもらうようになったんで。

尾身 それ自体は別に悪くないんですけど、コンビのコントのほうでは相変わらず結果が出てないことに、もやもやしてて。

都留 TikTokに僕が注力しちゃって。ライブに出なきゃいけないんだけど、忙しくてどうしても片手間になるからネタもなかなかウケない。

──ネタは都留さんが作ってるんですか。

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都留 昔はふたりで考えてましたけど、2019年から僕が考えるようになりました。もともとは僕が0→1を出して、それを尾身くんがふくらませる。でも僕からしたら、家で考えてきてない人に文句を言われる筋合いがないって思うようになっちゃって。バズってる上に、ネタまでこっちがいろいろやってる状況で口出されることにイライラして、自分で書きますって言ったんです。

尾身 ネタ合わせが終わって駅まで歩いてるところで都留くんが「尾身くんのことをおもしろいことを考えてない人にしか見られない。もう君が何を言っても僕の耳には届かないから、これからはひとりで書かせてほしい」って言い出して。僕も僕で、じゃあやってみろよって感じで、よけいに溝が深まりました。

都留 それからは僕がネタを持っていっても、「つまんないよ、これ」っていう態度をされる時期が続いて。お互いに無視し合ってましたね。2021年までそんな感じでした。

焦りと不安で空回ったふたり

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──プロになったのが2018年で、あっという間に都留さんがブレイクし、その反動でコンビ仲が悪くなった。2021年に何があって状況が好転したんですか。

都留 一度は解散も決まってたんですよ。尾身くんから解散しようって言われて。

尾身 僕が2020年に結婚して子供も生まれて、家のことで手いっぱいになったんです。都留くんはひとりで相変わらずがんばってるけど、僕はライブにエントリーするお金を払う余裕すらない。僕が家族のためにバイトしなきゃって思ってるのに、都留くんは「ここは借金してでもライブ出ようよ」と言ってくる。それはちょっと僕の状況をわかってなさすぎるじゃないですか。子供と奥さんが熱出して「今日のライブ休ませてほしい」って連絡したときも「そんなことでライブ休めるわけねぇだろ」って言われましたし。

都留 こっちとしてもモノマネでバズってしまったからこそ、コントもがんばってバランス取りたい時期だったんですよね。このままだとコンビとして認知してもらいにくくなるって焦ってたんです。

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尾身 それで揉めに揉めて、2021年の『M-1』1回戦終わりに解散したいって伝えました。

都留 でもその年のM−1で爆ハネするんですよ(笑)。

尾身 年内で解散するって決めたのに、どんどん勝ち進んでいく。そのたびにマネージャーさんが「尾身さん、あんなこと言ってましたけど、今ならまだ間に合いますよ」って言ってくるし、まわりの芸人からも「考え直したら?」って言われる。結局、今までで一番いい準々決勝まで行けて、そこでもめちゃくちゃウケたんで都留くんに「ごめん。やっぱり解散したくない」って言いました(苦笑)。

──そんなギリギリのところまで行ってたんですね。都留さんも、尾身さんを引き止めるために、いいネタを書いてたとか……。

都留 いや、全然!

──(笑)。

尾身 でも、僕も変だと思うんですよ。解散が決まってるのに、いいネタ書けるかな?

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都留 2021年にドラマ『ドラゴン桜』の続編が放送されて、この流れで阿部寛モノマネを使ったいい漫才ネタが書けるって確信してたんですよ。それは尾身くんにもLINEで伝えてたんです。でもね、本人はそれをまったく覚えてなくて。僕になんにも計画がないと思って、解散を切り出してるんですよ。

尾身 LINEあんま見なくて。

都留 僕としては解散とかもう関係なかったんです。いいネタができるのはわかってたし、解散しようがしまいが、その後の僕の評価のためにも、しっかり予定をこなそうと思ってただけ。

──阿部寛でコント漫才をするかと思いきや“M-1の闇”を暴き出す展開はしびれました。

都留 ラパルフェというコンビとしてっていうよりも、お笑い芸人として思いついちゃったんだから、絶対やんなきゃいけない。半ば使命感でしたね。

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尾身 いや、M-1のネタ1本だけすごくいいのが突然できるのはわかるんですよ。でも事務所ライブでやるコントの新ネタもすごくよくなってて。初めてピラミッドライブの2番目のところで勝ち上がったし。解散決まってるのに、なんでギア上がってるんだとは思いましたよ(笑)。

都留 解散するからって、今自分がスベっていい理由にはならないから。でも尾身くんが「やっぱ解散しない」って言ったことで、仲直りできんですよ。僕としても、自分の計画の正しさを実証できたし、尾身くんも僕の話をちゃんと聞いてなかったことを反省してくれた。

尾身 都留くんも僕の育児のこととか、ある程度理解してくれるようになりましたね。

───今日の撮影風景を見ていても、ふたりが自然体でしゃべっていて、本当にいい同級生コンビに見えたから、そんな危機があったとは意外でした。

都留 お互いにストレスを減らして再スタートを切れたのは、2021年のM-1のおかげですね。

正統派と邪道の間で

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──困難も乗り越えて、この先はどんな初舞台を踏んでいきたいですか。

尾身 コンビとしてはお笑い番組にもっと出たいですね。『有吉の壁』とか。

──まだ出てないんですか!?

尾身 出てそうですよね。自分たちで言うのもなんですけど(笑)。

都留 一回くらい出てたんじゃないかな?(笑)

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尾身 あと僕個人としては、役者仕事もがんばりたいですね。去年演劇にも出たんですよ。

都留 自分の血を牛乳パックに混ぜ込む狂気的なスーパーの店長役をやってたね。コントでもサイコパスをやらせたことあるんですけど、似合いすぎてウケないんですよ(笑)。

尾身 サイコパスのいい塩梅は探り中です。あと僕、意外と体張れるんですよ。演技と体張る仕事、どっちもやっていきたいです。

──なにがなんでも賞レースで結果出すぞっていう方針ではないんですね。

都留 いや、賞レースも決勝には行きたいです。今の時代、ファイナリストしかテレビに出てないじゃないですか。去年のM-1もワイルドカードで準決勝進出が、かなり惜しかったんですよ。ギリギリのところまで行くと、もし決勝行ったらどうなるのかなって想像しちゃいましたね。

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──おふたりの主戦場はコントです。だからこそ、漫才は肩肘張ってないぶん自由にのびのびできて、いい結果につながってるのかなって思うんですよ。

都留 絶対それはでかいっすね(笑)。なのでこれからは『キングオブコント』。そこに向けて新ネタライブもいっぱいやってますし。売れる売れないに関わらず、芸人の経歴としてコントでやってやったぞっていうかたちを残したいですね。お笑い芸人として胸張れる結果がそんなにないまま、モノマネでハネてしまった。

──どんなかたちであれ、ハネるのはいいことなのでは?

都留 いや、僕はどっちでも逃げてたんですよ。モノマネでテレビ出てるときは「本当はお笑い芸人なんだ」って思って、お笑いの現場でウケなかったら「別にモノマネではウケてるしな」と言い訳してる時期があった。だから自分の拠りどころであるお笑いでちゃんと結果を残したいです。

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──学生時代は東京03さんやバナナマンさんが好きだったと聞いたことがありますが、彼らのように単独ライブで見せていくってことは考えませんか?

尾身 僕らのスタイルって単独ライブ向きではないんですよ。というか、お客さんがラパルフェの単独に行きたいとはあんま思わないんじゃないでしょうか(笑)。

都留 それもキングオブコントで決勝に行ってからじゃないですかね。

尾身 今までM−1では邪道なスタイルで目立ってきたから、プレーンなコントで評価されるのって本当に難しいんですよね。僕らは結局、邪道を武器にするのが一番向いてるんじゃないかと思うし。正統派と邪道のどっちも武器にするなんて都合のいいこともなかなかできないだろうし。ネタを書いてないほうが好き勝手言ってるだけですけど(笑)。

文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平

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ラパルフェ
都留拓也(つる・たくや、1994年6月3日、東京都出身)と、尾身智志(おみ・さとし、1994年7月10日、東京都出身)のコンビ千代田区立九段中等教育学校の同級生で、大学時代にはお笑いサークルの賞レース『大学芸会2016』で、魔人無骨(今の令和ロマン)や、ラランドを抑えて優勝した。2017年、ワタナベコメディスクールに26期生として入学、2018年の卒業とともに正式にコンビを組む。都留はドラマ『ドラゴン桜』で阿部寛が演じた桜木建二や、アニメ『トイ・ストーリー』のウッディのモノマネでブレイク。『M-1グランプリ』の予選では、大会そのものをネタにしたり、ニューヨークの漫才を“完コピ”して、話題となった。YouTubeチャンネル『ラパルフェの俺がついてるぜ』と、サブチャンネル『ラパルフェの中身由紀恵』は不定期更新中。

【後編アザーカット】

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