相性抜群の“ラク”な関係、悩んだら“来世”でがんばる──梅田彩佳×赤ペン瀧川
梅田彩佳(うめだ・あやか)
1989年1月3日生まれ、福岡県出身。2006年、第2期AKB48追加メンバーオーディションに合格。その後、総選挙16位となり選抜メンバーへ。チームBキャプテンとなる。NMB48での活動を経て、10年間所属したAKBグループを2016年に卒業。14年に出演したブロードウェイ・ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(TETSUHARU演出)や、『THE WIZ ウィズ~オズの魔法使い~』(宮本亜門演出)への出演をきっかけに、ミュージカルに目覚める。
5月2日〜5日、音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』に出演。
赤ペン瀧川(あかぺん・たきがわ)
1977年12月27日生まれ、神奈川県出身。映画プレゼンターとしてテレビ、ライブ、コラムなど多方面で活躍。スライドとトークを武器にさまざまな添削(ツッコミ)する姿が強烈で、巷で「天才スライドトーク職人」と呼ばれている。また、ドラマ『ドクターX』や『相棒』(ともにテレビ朝日)などに出演し、俳優としても活動している。『今から観てもギリ間に合う「Destiny」3話までのおさらい by赤ペン瀧川』配信中
テレ朝動画logirlで配信中の、怪談、心霊体験、心霊スポット、都市伝説……など、この世の中に存在する「あやかし」案件を深掘りする “あやかしエンターテインメント番組”『恋する♥怪』。このたびlogirl公式YouTubeにて第1回から最新回までを一挙無料公開することが決定した。メインMCとして出演中の梅田彩佳と赤ペン瀧川を番組収録後に直撃し、公開を記念した対談を敢行。今回は番組冒頭の人気コーナー、梅田から瀧川への“お悩み相談”に焦点を当て、お互いの悩みや番組の思い出、おすすめの映画まで語ってもらった。
悩みすぎたら伊勢神宮にすぐ行く(梅田)
──収録、お疲れさまでした。『恋する♥怪』は“あやかし案件”をさまざまなゲストからお話しいただくというものですが、番組冒頭の梅田さんから瀧川さんへの“お悩み相談”も今や名物コーナーです。今日はそのあたりをメインに深掘りできたらと思っています。
梅田 いつの間にか毎回、私が相談してるオープニングになってます(笑)。
瀧川 すごく悩みが尽きないもんね! なんでそんなに尽きないんだろ?
梅田 隔週で瀧川さんと会ってるんだけど、なんでなんだろ? けど、2週間のうちっていろいろありますよね?
──はい、ありますね(笑)。
瀧川 すごいよね。俺はないのよ、相談する悩みが。
梅田 そんなに悩むことがないんですか?
瀧川 うん、ない! あるのはあるんだろうけど、結局はどうにか自力で解決すべき問題でしかないものが多いから。あと、人に相談するのがそもそも得意じゃないのかな。梅田さんは湧き出るように相談事が出てきてる。
梅田 めちゃくちゃ出てきます。2週間もあれば悩み3つぐらい出てきます! ほんと毎回相談させてもらってますからね。今日の収録でも「お酒弱くなったんですよね」っていう相談を……。
瀧川 お酒は、物理的にお酒の量と同じぐらいの水を飲んでおけばいいと言われてはいるからね。
梅田 全然飲んでなかったんです。だからこの間(ファンクラブのツアーで)マネージャーさんに運ばれてました。放送では言えなかったんですけど、こうやって(※はがい締めのポーズで)引きずられて帰ってましたから。「ああ、終わった!」と思って(笑)。
瀧川 その姿を見るファンはうれしいだろうね。「推しが泥酔して連れていかれてる!」って。酔っ払うとどうなるの?
梅田 めっちゃご機嫌になりますね! 泣いたり、怒ったりとかは全然なくって。演技論を語るとか絶対ない! あと嫌いな人もすぐ言っちゃう(笑)。
瀧川 いいお酒だね。でも、嫌いな人ってほんと減ったんだよね。
梅田 私もほんとひと握りですよ。嫌いというか苦手な人っているじゃないですか。
瀧川 演劇をやっているとそういう人と出会うからね。
梅田 舞台の座組だと、ほんといろんな人に会うじゃないですか。そのときに悩みが生まれていたので、よく瀧川さんに相談してました。
瀧川 やっぱりまじめなのよ。俺は舞台とかであんまり悩みが生まれないのよね。運がよかったのかな。俺のまわりの人は知らないところで、「瀧川めんどくせぇな」って俺についてすごい悩んでるかもしれないけど(笑)。
梅田 ははは! 私は悩みすぎて伊勢神宮とかすぐ行っちゃいます。夜11時ぐらいに「悩みすぎたな。よし、明日朝5時に起きて(伊勢神宮に)行こう!」って。
瀧川 いやいや、伊勢神宮の前にいくつかあるじゃん? もうちょっと何か手近なところで解決のタネが。伊勢神宮はラストよ。
梅田 たしかに(笑)。伊勢神宮に行けないときは明治神宮に行ってはいます。神社がすごい好きなので。
──瀧川さんは、普段から人のお悩み相談を受けているんですか?
瀧川 いや、ないですよ! 僕に相談する人なんていないよ。梅田さんだけですからね(笑)。
梅田 うそでしょ!? 瀧川さんの毒舌じゃないけど、マイクに乗らないところでも、「あの人はひどいよね」って言ってくれるところがすごく好きで。隠す方は本気で隠すし、そういう人だと壁があるし、芸能界だから仕方ないけど、私はそれがない人が好きだから。
瀧川 あんまり相談されることないんだよな。
梅田 瀧川さんに相談したい方、いっぱいいると思う。でも機会がないとできないですもんね。いつもポップに答えてくれて、私にない考え方をされるので、相談するのおもしろいんですよ。
瀧川 人の悩みを聞くのは好きかもしれない。俺には人の相談に乗る才能があるのかな……。
──あると思いますよ。梅田さんは普段からけっこう悩むタイプなんですか?
梅田 なあなあにしたくなくて白黒つけたいから、ちゃんと考えたいタイプです。なあなあでなんとなく現場にも行きたくないし、人間関係とかいろいろどうしようかなって思ったときに相談したくなります。自分より人生経験がある人に話を聞きたくて、年上の方とお話しするのが好きなんです。
──ひとりで悶々と悩みを抱えるというよりは?
梅田 悶々としたら伊勢神宮へ行きます(笑)。
瀧川 年上の人に聞きたくなるのはわかるな。
梅田 絶対に似たような経験をしているはずだから、どうやって取り組んできたのかなって。私には経験値としてないから知りたいです。
斬新すぎる赤ペン瀧川流“悩み解決法”
──これまでたくさん瀧川さんに相談されたと思うのですが、印象に残っているアドバイスはありますか?
梅田 私は基本的にネガティブで“陰”に入っちゃうんですよ。でも、瀧川さんはポップに「そんなことないんじゃない?」と全部明るく返してくださるのが私にとって救いでした。本気で相談したときに、相手も「そうだよね……俺もさ……」ってなられると、自分の気持ちもめっちゃ落ちていくなって。でも瀧川さんに「そんなことないでしょ!」とか、「あの人ほんとやばいよね!」と言ってもらったときには、私も「やっほー!」ってなる(笑)。私の陰と真逆、瀧川さんは陽の返しをしてくれるから、新しいプラスになる考えが毎回楽しくて。
瀧川 俺はいろんなことを「しょうがいない」とあきらめがちな人生なんですよ。すぐ「この宿題は今世ではもう無理! 来世で!」って。
梅田 えー、すごい! 私と考え方が全然違う。私は絶対「今世!」って思う。
瀧川 絶対無理! 今世で解決できない悩みなんか死ぬほどあるよ。今世で叶えられない夢とかもめっちゃあるから。俺はめちゃくちゃラップうまくなりたいけど、まじで今世では無理だから。もう無理無理!
梅田 絶対叶えたいってなっちゃう。それは年齢からですか?
瀧川 年齢もだし、ガッツもそうだし。やるべき仕事、やらなきゃいけない仕事を優先した場合、ラップ練習する時間は絶対取れない。だから脱サラして新しいこと始める人とか見ると、本当にすごいしかっこいいと思う。だって俺は今にしがみついてるもん。なんとか“赤ペン瀧川”という仕事で今世を乗り切るために。高みを目指そうなんて、てっぺんでいい景色を見ようなんて思わない。これを逃すもんかってキープしてる。だから夢とか希望とか目標も本当にないの。
梅田 10代、20代のときも「こうなりたい」とか、目標はなかったんですか?
瀧川 そもそも俳優を始めたきっかけが、定年がないという理由でしかないから。この仕事を続ければ定年もなく、10代の仕事と30代の仕事が変わって新しい仕事をしていられる。俳優だったら60代も楽しいんじゃないのか?で始めてるから。
梅田 それでも続いてるのは、すごくないですか?
瀧川 めっちゃラッキーだよ。続いてるんだもん。辞めていく人は、ある程度頭がいい人なの。ある程度目標を持ってそこにたどり着けない自分との葛藤があって「ダメだ、このままじゃいけない」と心が折れるんだけど、目標のない俺は特に折れない。折れるほど目標を高く設定してないから、折れようがない。
梅田 これだけは人生でやっておきたいこともないんですか?
瀧川 ……ないっ!! 死なないようにはしようと(笑)。だから目標や夢がある人は超リスペクトしてる。梅田さんはありますか?
梅田 今年中に絶対これを達成したいということ、めちゃくちゃあります。今年はお芝居を中心にしたいのと、あとボイトレ。私は30歳からボイトレを本格的にやり始めたんですけど、遅いみたいで。歌がうまい人たちは、子供のときからやってるから遅いんだよ、ってボイトレの先生に言われて。「私は子供からやってる人たちと同じ土俵に立とうとしてるんだ」と気づいたら、ミュージカルの現場に行くとガクブルするわけです。
昨年はありがたいことにミュージカルで1年間埋まっていたから、そのミュージカルの曲の練習しかできなかったんです。基礎というものが二の次になっちゃってて……だから今年の目標は「基礎を固める」。さすがに1年では絶対に固められないから、まず基盤を。ボイトレの先生にも「10年はかかるよ」と言われてるから、今年は基礎を固める1年目にできたらいいなって。何歳になってもミュージカルに出るという夢があるので。でもひとりじゃできないから、みんなに助けてもらいながら。
瀧川 素晴らしい……(拍手)。
梅田 そう思ってますけど、ぐうたらする日もありますよ。お酒でベロベロになってマネージャーさんに担がれて帰った日もあるし(笑)。
──実際に瀧川さんからもらったアドバイスで、今でも梅田さんが実践していることはありますか?
梅田 けっこうタイムリーな悩みが多くて、現場に戻ったらすぐ実践してました。それが自分に合う合わないは置いといて、ひとつやってみるってことで、何か世界が変わるかもしれないから。あと、私そんなに凹まなくてもいいんだ、そんなに深く考えなくよかったことなんだ、はたから見たら別に大したことじゃなかったのかなと思えて心が軽くなりました。
瀧川 ……ありがたい。持ち帰っていただいてるのね。
──瀧川さんは「梅田さん、こんなことで悩んでるんだ」と、驚いたお悩みはありますか?
瀧川 わりと人間関係の悩みが多いですよね。あと、やっぱりまじめだなと。悩みが育って人に相談するまで俺は自分の悩みを育てきれないから、その前に「あいつはバカだからしょうがない」で終わるから。そうやって悩みの芽が育つ前に捨てるから。やっぱり現場には(変な人が)いるからね……。向こうから見たらこっちも変な人かもだけどね。
梅田 めちゃくちゃ最高(笑)。
──(笑)。瀧川さんみたいな考え方の人って、あまり怒らないイメージがあります。
瀧川 うーん、怒らないな。最後にすっげえ怒ったのは舞台の現場では30前半、テレビ局では30中盤ぐらいかな。俺が怒ったら最悪。舞台のときも、ゲネを止めて舞台監督を泣かしちゃいました。
梅田 ゲネを止めてまではよっぽど! 不満が溜まったまま本番なんてできないですから、伝えたほうがいい。
──そういう人のほうが信頼できますよね。
瀧川 めんどくさいと思いますよ。鬼ギレしたのはあれが最後だな、10年ぐらい前かな。
──実際にその現場にいたら、ゾッとしますよね。
梅田 それこそ怪談話になりますよ。
瀧川 梅田さんは終わったあとにめっちゃ爆笑すると思うよ。「キレてたなー」って(笑)。
梅田 人がキレてる姿は、はたから見てるとおもしろかったりしますからね。
瀧川 しかも俺は退路を断つからね。うまい人は退路を残して怒るけど。追い込もうと思ってたから。何にも使えない、このくだり(笑)。
梅田彩佳はかなり“ラク”できる人
──改めて、番組で共演してお互いの印象って変わりました?
瀧川 最初にお会いしたのは古坂(大魔王)さんの『サン・ジェルマン伯爵は知っている』(テレビ朝日)だ! そこから空いて『恋する♥怪』ですよね。梅田さんの印象はだいぶ“ラク”ですね。こういうお仕事だといろんな方と会いますけど、相当“ラク”な人です。だから、ふたりセットでなんかやってくれないかな?って。
梅田 すごくうれしい。何かやりたいです。お悩み相談コーナー作りって、ふたりでお悩み相談を受けましょう!
瀧川 僕と梅田さんに相談してきてくれる人はいるんですかね? 最終的に「今世では無理!」になるから。梅田さんは何がしたい?
梅田 「これやりたい」と言ったら(logirlで)やってくれそう。でも、放送で言えないことしか出てこないかも(笑)。実はマイクがオフのときに瀧川さんと話してる時間も好きで。以前、瀧川さんのライブを観に行かせていただいたんですけど、放送では言えないことばかりでめちゃくちゃおもしろくて最高でした。ああいうの大好きなんです。
──梅田さん、せっかくなので相談しきれてないお悩みがあれば、ぜひ。
梅田 最近時間があったのでいろんな人に連絡してみようと思ったんですけど、久しぶりの人に連絡するときはどうしてますか? アイドル時代に仲よかったマネージャーさんに「久しぶりに思い出したんでLINEしました!」と送ったらすぐに「ご飯行こ!」と来て。会ったときに「何があったの? 梅ちゃんから急にLINEが来てびっくりした」と言われて。みんなは他愛ないLINEって送ったりしないのかな。
瀧川 俺も久しぶりに用事がなく連絡することがないからな。でも、豊かなことかもしれないね。連絡をもらった相手はうれしいもんね。
梅田 誰かの目とか、耳に入る行動をすると仕事にもつながるよ、と教えていただいたことがあって。だからやってみようと思いまして。
瀧川 映画とかを観ててエンドロールに知り合いのプロデューサーがいたら「(映画)観たよ」って送るとかはやるかも。でもさ、梅田さんは久しぶりに連絡すると心配されちゃう人なんだね(笑)。危なっかしい人だと思われてるのかな?
梅田 たしかにアイドルのころはトガってたから。当時そのマネージャーさんに「大っ嫌いだ! 帰れ! むかつく!」とかずっと言ってたからかな(笑)。
瀧川 ははははは! すげえ、よく今まともになったよね。そうでもしないと生き抜けない世界だったのかな。
梅田 あのころは自己主張がないといけなかったですからね。今は溜めて溜めて考えて考えて「これは言ったほうがいい」と思ったら相手に伝えるし、言うタイミングは考えるかも。昔は思ったらその場ですぐ言ってたけど(笑)。
瀧川 今のアイドルもそうなのかな。
梅田 私がいたころから10年しか変わらないけど、今のほうが穏やかだって聞きました。そう思うとすごくおもしろかった時代を生きられてたと思います。
瀧川 団体で働いてるとそうなるよね。しょせん、こっちはひとりだからね。
梅田 ひとりのほうが大変じゃないですか? 卒業してもう8年とかになるけど、ひとりでずっとやってる人はすごいなって。
瀧川 コンビやトリオを見ると「楽しそうだな」ってうらやましくなるけど、もはや無理だしね。
梅田 来世で(笑)。あと、人生で初めてぐらいの苦手な人がいて……。
瀧川 たまにいますよね。俺も、すげえポンコツのディレクターさんいたもん。打ち合わせに入った瞬間に「こんな人いるんだー」って。そのときのチームが“ヤバい人”を感じ取れる人たちだったんで「俺たちは俺たちでがんばろう」と一致団結したこともあった。だから、どうしても苦手な人がいるならみんなにシェアができたらいいかもね。
梅田 なぜかまわりにその人と仲いいと思われてて。でも相談したら、私以外の人も困ってたみたいで。
瀧川 まともな人が多いわけだから。ヤバい人のことは、みんなヤバいと思っているよ。とにかく味方を見つける。
“どうしたらいい?”赤ペン瀧川から梅田へ逆お悩み相談
──瀧川さんは普段悩むことはないとのことですが、梅田さんに相談してみたいことはないですか?
瀧川 ある! 梅田さん、食べ放題って行ったことある? ちょうど昨日家族で焼肉食べ放題に行ったんだけど“食べ放題に行ったときの浅ましさはいつ治る?”って思ったんだよ。すごい時間に追われながら「なんで俺は食べ放題にしてしまったんだろ……」と、浅ましさと向き合う90分。いや、ひどかったね。
梅田 もとを取りたい、という謎の精神が出てきますもんね。
瀧川 小学3年生の息子の食欲なんて大したことないのよ。彼は大して食えないから、むしろもとを取ろうとしてるのは俺と妻でしかないわけ。時間いっぱいに食べて、ちょっと気持ち悪くなったりとかして、スイーツとかも食えないぐらい。なのに俺は、きなこバニラアイスを頼んだあとに杏仁豆腐もまだいこうとする。食べ放題じゃなかったら、もっと平和な時間が流れていて、穏やかな気持ちで過ごせていたはずなのに。46歳でこの浅ましさ、みんないつ卒業するの?
梅田 絶対無理だと思う(笑)!
瀧川 前に『ハライチのターン!』(TBSラジオ)で、岩井(勇気)さんがチャンカワイさんと一緒に帝国ホテルのバイキングに行った話をしてたのね。帝国ホテルはカレーがおいしいらしいんだけど、カワイさんはお皿いっぱいにカレーをよそってたんだって。すごくない? バイキングで、ひと皿をカレーで埋めるという、本物の金持ちにしかできないことを。その話を聞いたときに、なんて豊かなんだろうって。
しかも、そのカレーを食べ終わったあとに、カワイさんはまたカレーを持ってきたんだって。帝国ホテルのバイキングでカレーを2杯いっちゃう、これぞホンモノ。その話を聞いてるのに、俺は昨日の焼肉食べ放題であんなに浅ましいことを。20代の店員さんは時間いっぱい食べてる俺を見て、どう思ったんだろ……。「あいつ浅ましいな」と思っただろうな。バイキングに行くと、俺に対する俺の価値が下がるなって。どんどん自己嫌悪に陥っていく。
梅田 もとは絶対取りたいですよ。私も、ミスタードーナツの食べ放題で(1個ずつの)料金確認しますもん。ドーナッツを7、8個食べないともとが取れないとか。値段を確認しながら食べてます(笑)。単価が高いから、これ入れておこうって。
瀧川 昨日、近々で、愚かとはこういうことかと悩んだな。息子の食べ方が美しかったですよ。「お腹いっぱいだからもういらない」って。杏仁豆腐もアイスも食わず、腹9分目で終われるお前はかっけえなって。
──ここで少し、番組についても伺えたらと思います。これまでいろいろな怪談師がゲストに来て「あやかし案件」を披露してくれたと思うのですが、印象に残っているエピソードはありますか?
梅田 私はずっと言ってるんですけど、(由乃)夢朗さん。もう大好きでおもしろかった。ちゃんと霊とか呪物とかにリスペクトを置いて話してるというのが、すごく素敵だなと思って。怖いものが好きな怪談師もいらっしゃいますけど、霊をリスペクトしてると言ってる人に初めて会ったので。それから夢朗さんYouTubeは観てますね。
瀧川 僕はもともとYouTubeで怪談を漁り出したきっかけが、いたこ28号さん、田中俊行さん、村上ロックさん。あと、響洋平さん、吉田悠軌さんだったんですよ。怪談好きのきっかけをくれたレジェンドの人たちに会えたのは、すごくうれしかったですね。
梅田 田中さんの藁人形はめっちゃおもしろかった。おもろいし、怖いし、超最高だった! あと、いたこさんから教えてもらった話をそのまま友達に教えてあげてます(笑)。
瀧川 Dr.マキダシさんとかも好きだったな。怪談ブームが起きてる理由は、発信のハードルが下がったことも大きいと思うんです。ホラー映画だとCG、VFX技術とかで怖いものを作り出して、実際に目の前に映し出せるじゃないですか。けど怪談は、語りと人の想像力だけでどれだけ怖いものを作り出せるのか、わりと真逆の作業なんですよね。最新技術のホラーが発達すればするほど、全部をかたちにできるという、真逆の文化である怪談が盛り上がってくるんだろうなって。正解を映像にできないからこそ、より怖いみたいなことが怪談にはまだまだ隠されているから魅力だと思います。『恋する♥怪』ではそういうのを目の前でやってもらえたのが、すごくおもしろかったですね。
──今日の対談から、おふたりの相性のよさもとても伝わりました。
梅田 あ、ひとつ、瀧川さんでめちゃくちゃうれしかったことがあって──舞台本番中にあった収録で、その日はたしか公演後で自分でも意識ないぐらい、すごく疲れた顔をしていたと思うんですよ。そしたら瀧川さんが、いつもより(多く)回してくれて「優しい……」と思いました。あのときは、ありがとうございました。
瀧川 ほんと? たまたまじゃないかな(笑)。俺、そんな察する能力は高くないと思うんだけど。
梅田 台本に“梅田”と書いてある部分も、瀧川さんが言ってくださって。めっちゃ優しい!と思いました。
瀧川 たぶん「梅田さん、これ言わないのかな?」って進まなかったんだろうね(笑)。
──最後になりますが、2年弱番組をやってきてお互いのことをわかってきたかと思います。今、瀧川さんが梅田さんに1本映画をおすすめするとしたら?
瀧川 『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』という映画が6月に公開されるんだけど、アカデミー賞で作品賞にもノミネートされた作品。その映画がとてもとてもよかった。寄宿学校が舞台なんだけど、冬休みに家庭の事情で帰れなくなっちゃった問題児がいて。その問題児と教師、寮母さんの3人で2週間を過ごすというストーリーなんだけど、全員めんどくさいの。主要人物全員の性格がよくないのに、なんでこんなに泣いちゃうの?ってぐらいおもしろい。人の優しさとはこういうものなのかって。逆に梅田さんから僕におすすめ映画はありますか?
梅田 ちょっと待ってくださいよ! 瀧川さんにおすすめするのしんどいよ!
瀧川 見てない映画はたくさんあるんですよ。偏ってますから。
梅田 えっと……なんだろ。ブロードウェイで『ハミルトン』(2020年)というミュージカルがあるんですけど、チケットが1枚10万円以上するほどプレミアなんです。ディズニープラスでだけ映像化されていて、1幕は人間関係で、2幕は政治とかの話もあって、難しいのが好きな瀧川さんにはいいかも! 主演の方が脚本も書いて、作曲もして、自分も出演されてる。みんな歌がうまいし、曲もいいし、曲調もラップとか入ってて超かっこいいし、物語もおもしろい。私はすごく好きです。
瀧川 それは観たい! ちなみに『アメリカン・ユートピア』(2021年)は観た?
梅田 観てないです。観たほうがいいですか?
瀧川 観たほうがいい映画なんて世の中にはないんだから(笑)。でも『アメリカン・ユートピア』はスパイク・リー監督で、トーキング・ヘッズのフロントマンのショーなんだけど、すっげえおもしろいよ!
梅田 舞台の映像をそのまま観られる作品はすごく好きですね。おもしろそう、観る!
『恋する♥怪』
全話配信を観るならコチラ!
logirl公式YouTubeチャンネル
取材・文・編集=宇田川佳奈枝