即席ユニットでも、初M-1で“ボコウケ”怪奇!YesどんぐりRPGの初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#8(前編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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Yes!アキト、どんぐりたけし、サツマカワRPG。それぞれピン芸人として活躍する3人が『M-1』に出場するために結成したユニット。それが「怪奇!YesどんぐりRPG」だ。

わずかひと晩で生まれた『プレイヤーチェンジ』、どんぐりたけしのネタをリサイクルした『ムール貝』。彼らの代名詞となる“漫才システム”は、遊びながら生まれたという。

軽やかに、楽しみながら、お笑いの世界を刷新していく若き三銃士に、その初舞台を聞いた。

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

どんぐりたけしは、怪奇!のスタイリスト

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左から:どんぐりたけし、サツマカワRPG、Yes!アキト

──今日はなぜ衣装ではなく、私服で撮影に臨んでくれたんですか?

たけし なんでだろう……。

サツマカワ いや、編集者さんの指定ですよ! やめてくださいよ、こっちが私服で行かせてくださいって言ったみたいじゃないですか! どんぐりも「なんでだろう…」じゃないんだよ(笑)。

──そうだったんですね! 大変失礼しました……。

アキト 怪奇!が急にエゴ出したと思われてたんですか?

サツマカワ そうだったら、めちゃめちゃ痛いヤツらじゃないですか(笑)。

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──でも、3人ともすごくオシャレですよね。

サツマカワ オシャレなんだとしたら、どんぐりのおかげですね。YouTubeでもどんぐりにコーディネートを教えてもらう企画やりましたもん。

僕、オシャレがまったくわかんなくて。この「つらいけどサンバ」っていうTシャツも、『歯のマンガ』のグッズなんですけど、マンガが好きで100着くらい買ったんですよ。オシャレわかんないなりに、いつも同じTシャツ着てればこだわりあるっぽく見せられるかなと思いまして……。

アキト 俺も服はどんぐりたけしに教えてもらってます。一度クレジットカード渡して、全身コーディネートお願いしたことありますよ。

たけし あれは楽しかったなぁ! 値段気にしなくていいですもん!

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サツマカワ スタイリスト的な仕事もできそうだよね。でも、どんぐりたけしは服代稼ぐために、いまだにバイト3つ掛け持ちしてるんですよ……。

たけし そうですね。朝は6時〜10時でお弁当屋、10時半〜14時はラーメン屋、午後空いてる日は学童保育入ってます。

アキト 芸人なんてラクなバイトを好んでやる生き物なのに、ラーメン屋で昼働くヤツなんて、ほかにいないですよ。

たけし あはははは(笑)。阿佐ヶ谷の「一笑」っていうめちゃくちゃ人気店なんで、やりがいがあるんですよね! 最近ようやく、麺を茹でさせてもらえるようになりました。

アキト 辞める気持ちになってくれよ。

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たけし バイト代はまるごと服代につぎ込むんで、芸人の仕事で食えてないわけじゃないんですよ。でもまあもっと売れても、バイトは辞めたくないかもしれない……。

サツマカワ こいつはバイトが好きなんですよ。

たけし なんかわかんないけど、好きなんですよ(笑)。

アキト すみません! 初舞台のインタビューだって聞いてきたんですけど、今日こんな感じで大丈夫ですか?

遊んでいたらできた『プレイヤーチェンジ』、どんぐりがスベった『ムール貝』

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──では、気を取り直して……。「怪奇!YesどんぐりRPG」は、普段ピン芸人の3人によるユニットですが、結成のきっかけを教えてください。

サツマカワ M-1に出るために、僕がふたりを誘いました。2018年なので、なんだかんだ4年目ですね。こんなにがっつり活動するとは思ってなかったです。

アキト さらっと始めた感じだったのに、まさかM-1の挑戦が4回目になるなんて……。

サツマカワ 僕がもともとM-1で決勝に行きたい願望が強かったんですよね。アキトとどんぐりと組む前は、吉本の先輩芸人のTEAM近藤さんと、TEAMサツマカワっていうコンビでチャレンジしてました。

2015年から2017年まで出てたんですけど、2018年に急に近藤さんが出られなくなって。それで当時僕がハマってたアキトとどんぐりを誘って、「怪奇!」を組みました。

個人的には、「TEAMサツマカワ」ってM-1ファンにはそれなりに認知されてる感覚があったので、「あの片割れのサツマカワが、知らないふたり連れてきたぞ!」ってざわつかせられたらいいな、という打算もありましたね。

たけし 組む前から3人で『ミルク工房うし』っていうライブもやってましたよね。杉並区立産業商工会館の和室でした。

アキト あったねぇ。

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──3人でのネタ作りって最初のころはどうしてたんですか?

サツマカワ 3人で集まって遊びながらです。「ちょっと、どんぐりここ立ってみて」「じゃあ俺ここ立つわ」「おお! いけそういけそう」ってやってたら「プレイヤーチェンジ、プレイヤーチェンジ」ってなって「これこれこれ!」みたいなね(笑)。

たけし ほんとにそう(笑)。

サツマカワ 案は次々に出してて、縦一列になってギャグやるとか、椅子に座りながらやるかとか、いろいろやりましたけど、結局ひと晩であの『プレイヤーチェンジ』が形になって。

アキト たしかに早かった。

──『プレイヤーチェンジ』を作って、そのあとネタ合わせはするんですか?

怪奇! ネタ合わせ……?

──こういうギャグの流れでいこう的なのは……?

サツマカワ いや、基本は完全にアドリブ……。

アキト&たけし ……。

サツマカワ すみません、嘘です。めっちゃ合わせてます。

アキト まじめに話すと、結局ネタによりますね。途中でやる個人のネタは知らないことも多いです。

たけし 要所だけ決めて「あとはテキトーに」みたいな。本番で「これ出してきたか!」って思うことは、よくあります。

サツマカワ テレビ出させてもらう機会が増えて、事前にネタ動画を提出することがあるんですけど、そういうときは困ります。「あの番組のネタ見せは、どのネタやったんだっけ?」って忘れちゃうとか。

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──『ムール貝』は、どんぐりさんのピンネタだったんですよね?

たけし そうです。お客さんには全然ウケないのに、芸人さんにおもしろがってもらえて。

サツマカワ 僕とアキトはうしろで観てて、腹抱えて笑ってましたよ。全然ウケてないのも含めておもしろかった(笑)。「あのネタめっちゃいいね」って言ったら、どんぐりが「じゃあ3人でやってみます?」って言ってくれて。

たけし ひとりじゃうまく消化できなかったあのネタも、3人でやってみたらなんか形になったんですよね。

サツマカワ あのネタでも結局M-1落ちたのは悔しかったですよ。

──今年はすでに3回戦まで行っていますが、新たなネタはどうですか?(※取材は10月中旬に行った)

サツマカワ 実は今年衣装をそろえてるんですよ! 3回出て、何が審査員の方のNGになってたのか精いっぱい考えた結果、とりあえず衣装をそろえようと。

たけし 今までのバラバラな感じじゃなくて、統一感を少しでも出そうと。

サツマカワ あと、個人のギャグは封印して、ちゃんと漫才っぽいというか……むちゃくちゃはやるんですけど、ギャグではないものを見せるつもりです。

『プレイヤーチェンジ』はめちゃくちゃバズると思ってた

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──怪奇!としての初舞台っていつになるんでしょうか?

サツマカワ 2018年のM-1の1回戦前に出た『M-1未対策ライブ』ですね。

たけし 懐かしい……。

サツマカワ シャラ~ぺが主催のライブです。

たけし 今何やってんのかな、シャラ~ぺ。

アキト 福岡でウーバーイーツしてるらしいよ。

サツマカワ 東京がイヤんなっちゃってね(笑)。

──手応えありましたか?

サツマカワ ほんとにボコウケして、こりゃいけるぞってなりましたよ。M-1も3回戦まで行って、そこでも全組中一番ウケたんですよ。

アキト あれはウケたなぁ。

たけし まわりの芸人さんにもめちゃくちゃ褒めてもらったのに……。

サツマカワ なぜか落ちちゃって。やっぱり漫才じゃないと思われたんですかね。

アキト 初舞台ですからね、僕らも漫才があんまよくわかってなかったんですよ。マイクの前でしゃべればなんでも漫才じゃないか!って思ってましたね。

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──漫才がわからないなんて絶対ウソじゃないですか(笑)。その手応えがあったから、続けていくことになった。

サツマカワ 手応えもそうですけど、GYAO!にアップされた3回戦の動画を観たテレビスタッフの方々が、番組に呼んでくださったのが大きかったですね。それから呼ばれた番組は全部出させてもらうのを続けてたら3年経ちました。

アキト 3回戦の動画が上がって1カ月経たないくらいでオファーが来たんだよな。

サツマカワ テレビ観てくれた人がYouTubeのチャンネル登録してくれる流れもできて。TikTokとInstagramも、YouTubeと同じ日に始めてますね。

アキト 高画質でネタ撮ろうってことで、かが屋の加賀翔に頼んで、真冬の河原でネタやって撮ってもらいましたね。

サツマカワ お笑い好きじゃない人に、ネタ動画観てもらいたくても、劇場の定点の汚い画質のヤツだと無理なんですよ。

自分たちでも、『プレイヤーチェンジ』はめちゃくちゃバズる可能性のあるネタだと思ってたので、お笑いファンより遠くに届けようと考えたとき、河原でいい画質で撮ろうかって(笑)。

──ネタの届け方を、戦略的に考えていたんですね。

アキト あの動画がすごく伸びたんですけど、当時は僕のアカウントだったので、お金が全部僕に入っちゃうなぁっていううしろめたさがありましたね……。

サツマカワ そこで3人のチャンネル作らないとまずいなと思い、怪奇!のチャンネルを作りました(笑)。

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ネタは四六時中考えている

──ギャグを専門にする芸人を“ギャガー”と呼ぶのも浸透しました。ひと昔前なら、“一発屋”と呼ばれたタイプの芸人が、ギャガーとして尊重されてる空気を感じます。

サツマカワ ギャガーにそんな流れありますか?

たけし いや、僕わかるなぁ。一発ギャグってスベリ笑いありきみたいな空気ってあるじゃないですか。罰ゲームに一発ギャグやらせてスベらせて笑うとか。でも、最近はギャグもお笑いの武器のひとつとして、しっかり認知されてきた実感があります。

アキト コロナに入ってから、ひとりでなんかやれる人が使ってもらいやすいっていうのは感じますね。笑いがひとりで完結できるから、リモート収録やソーシャルディスタンス保った収録でも使いやすかったんだと思います。

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──3人とも怪奇!での活躍はもちろんのこと、ピンとしてもネタ番組やライブに出つつ、単独ライブも精力的で、ほんとストイックです。

アキト サツマカワは急に新ネタ100個下ろすライブやるし、どんぐりも月3回新ギャグ45個下ろすライブやってるよね。

──ギャグを作らずにはいられない。

アキト そうですね。なんなら今もしゃべりながら考えてますからね。

サツマカワ 左脳でしゃべって右脳はずっとネタ考えてる。

アキト そういう感覚だよね。

たけし 怖いよ!

アキト でも、どんぐりもバイト中にネタ考えたりするでしょ。それと同じよ。

たけし たしかにそうですね(笑)。

 

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怪奇!YesどんぐりRPG
Yes!アキト(サンミュージック所属)、どんぐりたけし、サツマカワRPG(ともにケイダッシュステージ所属)によるユニット。2018年、『M-1グランプリ』に出場するため結成。2018年から2020年まで3回戦敗退だったが、2021年は準々決勝に進出。今年10月『怪奇!YesどんぐりRPGのラジオばあちゃんの踊り場の間ん家のうさぎ』(ラジオ関西、金曜20時45分〜21時)で初レギュラー番組を獲得。YouTubeチャンネルは『怪奇!YesどんぐりRPG』

文=安里和哲 写真=青山裕企 編集=龍見咲希、田島太陽

【前編アザーカット】

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【インタビュー後編】

舞台で狂うために、常識人でいる。怪奇!YesどんぐりRPGのこれから|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#8(後編)

 

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