ツギクル芸人グランプリ優勝・ストレッチーズ「いつか清木場俊介さんにお礼を言いたい」|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#13(後編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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『ツギクル芸人グランプリ2022』で優勝したストレッチーズ
高校と大学をともに過ごし、プロになったふたりには、事務所移籍や定まらない衣装など、紆余曲折があった。
王道漫才にたどり着いた福島と高木に、その軌跡を聞く。

【インタビュー前編】

『すごいよ!!マサルさん』に憧れたストレッチーズの初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#13(前編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

ストレッチーズ、事務所移籍のワケ

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左から:福島敏貴、高木貫太

──前編では大学時代までのお話を聞きましたが、そこからおふたりはどうやってプロになられたんですか。

福島 僕は夏のインターンで、芸人になろうと思いました。グループワークで5日間話し合って、最後に発表するやつですね。ほかのグループがホワイトボードを使ってプレゼンするなか、僕のグループは、僕が提案したコントをやったら、それがすごいウケて。

うれしかったんですけど、会社だけでウケるだけじゃ物足りないというか、もっと広い世界でおもしろいことしたいなとふと思って、芸人やろうかなと。

高木 僕は就職と芸人でずっと迷ってて。一応就活はしてたんですけど、夜勤明けで眠すぎて一次面接すっぽかしたことがあって。実家だったんで母親に「今日一次面接って言ってなかったっけ。何してんの?」と叱られてるときに、言い訳で「いや、俺お笑い芸人になるからいいんだよね」と口走って。その流れでやりましたね。

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──タイミングは別々だったのに、ふたりでやっていくことにした。

高木 ふたりとも芸人になるんなら、このままふたりでやったほうがいいよねっていう共通認識はなんとなくありました。

──最初は今の太田プロダクションじゃなくて、タイズブリックという事務所に所属していたそうですね。

高木 はい。大学3年生の冬に『大学生M-1』で優勝したんですけど、『学生HEROES!』(テレビ朝日)っていう番組のオーディションに受かって。4年生の春から1年間準レギュラーで出させてもらったんです。そこの制作にタイズブリックが入ってて、卒業後も一緒にやろうよって声かけてもらったんですよね。新しく芸人部門を立ち上げてくれたんですけど……。

福島 ただ、オーディションが全然回ってこなかったんです。オーディションって事務所枠があるんですけど、立ち上がったばかりの事務所には当然オーディションの案内が一切来ないんですよね。

ライブで仲よくなった芸人とかにそれを話してたら、「それヤバいよ」って言われて、そこで初めて危機感が出て、タイズブリックを出ましたね。

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──どういう経緯で太田プロに入るんですか。

福島 タイズブリック時代に、太田プロのヤマザキモータースさんが主催をしてた1~2年目の若手が出るライブに出させてもらってて。そこでヤマザキさんに「事務所を辞めました」って報告をしたら、うちの養成所おいでよって言ってくださって。

ヤマザキさんが講師をしてたんですけど、「お前らお金ないし、無料でいいよ」って言ってくださって。卒業してから所属になりましたね。

──養成所に行っていたんですね。

福島 本当はネタ見せで所属になるシステムもあったんですけど、ヤマザキさんが「養成所出る正攻法のルートのほうが先輩も信頼してくれる」って配慮してくださって、そうなりましたね。

高木 振り返ると、毎回大人に誘われて「行きます!」って言ってるなぁ。すごくまわりの人に恵まれてきたなと思います。

さすらいラビーとの混同。そしてM-1とK-PROへの恩

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──太田プロに入って状況は変わりましたか。

福島 結局、M-1がでかかったなと思います。太田プロ入った直後に、M-1が復活したんですよ。当然エントリーしたんですけど、最初はまだ入って間もなかったんで、「ストレッチーズ(太田プロダクション)」じゃなくて、「ストレッチーズ(フリー)」で出てたんです。でも、3回戦まで進んで初めて「3回戦まで行くなら、太田プロ名乗っていいよ」ってマネージャーさんが言ってくれて……。

高木 違うなぁ。さすらいラビーの話だな、それ。

福島 あれ?

高木 2016年はさすらいラビーだけが3回戦行ったんだよ。あの年は俺ら2回戦で落ちてる。俺らが3回戦行ったのはタイズブリックのときだもん(※M-1は2015年に復活)。

福島 そうだそうだ。

高木 翌年は準々決勝まで行ったから、もう完全に太田プロだったし。すみません、インタビュー中に事実誤認があって(苦笑)。

福島 まぁ、さすらいラビーとはタイズブリック時代からほとんど同じ境遇だから。

高木 ほぼ同じ人間なのかな。

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福島 いずれどっかでさすらいラビーが「僕らがツギクル優勝したときは……」って言うよ。

高木 「それ、ストレッチーズの話だよ!」って(笑)。

でもたしかに太田プロ所属になった翌年には『M-1』も準々決勝行って、当時は芸歴3~4年目だったんで手応えもあったんですよ。ちょうどそのタイミングで『笑あがき』(NHK)っていうドキュメンタリーにも出させてもらって、あれも大きかったです。

──どんな番組だったんですか。

高木 若手芸人が1カ月間、先輩に弟子入りしてお笑いを磨く密着ドキュメンタリー番組です。僕らはオーディションでパンクブーブーさんに選んでもらって。あの時期は事務所変えたとたん、いい波が来てる感じはありましたね。翌年から新ネタをひたすら下ろす60分のライブも始めたりして、とにかくネタ作ってました。

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──『ツギクル』でもネタ数400本と紹介されてましたね。

高木 二度とやらないどうしようもないネタも入れてるし、正確な数はわからないですけどね(苦笑)。まあそれぐらいの勢いでネタ作ってるということで……。でもネタを量産し始めてから、質もちょっとずつ上がった実感はありますね。

福島 K-PROさんにもずっとお世話になってて。1年目のときからずっとK-PROの児島(気奈)さんは「ストレッチーズはおもしろい」と言ってくれてて、ちょっとずつライブも出させてもらって。

M-1の準々決勝行ったら、ライブのオファーも増えて、ユニットライブにも入れてもらったり。キングオブコント優勝前のハナコとか、トンツカタン、東京ホテイソンもいて切磋琢磨させてもらっていましたね。ネタを作るにあたっては、M-1とK-PROはかなり重要だった気がします。

やっとしっくりきた衣装

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──改めてYouTubeで振り返ると、ストレッチーズの衣装の変遷がおもしろいなと。

福島 たしかにそうですね。最初は僕がポロシャツにネクタイ。下はよくわかんない青いチノパン。

高木 あれ一緒に買ったよな? WEGOとか?(笑) あの時期はお客さんのアンケートも「福島の乳首が透けてネタに集中できなかった」という意見が散見されましたね。

福島 高木はコーデュロイシャツに蝶ネクタイだった。

高木 コーデュロイシャツとポロシャツのコンビってなんだよ……。 

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福島 でも、1年は絶対それで通したね。ただ、THE MANZAIの予選であんまウケずに落ちたとき、高木が「ネタもまだまだだけど、衣装もちょっとなめられないようにするか」って言い出して。それでスーツにしました。

最初はただの濃紺のリクルートスーツみたいな感じでしたけど。それはふたりで三井アウトレットパークに買いに行って。

高木 南大沢のな。

福島 スーツ屋さんで話しかけてくれた店員さんに「芸人やってて衣装用のスーツが欲しいんです」って正直に相談したら、その人が関西で働いてたときに「天津の木村(卓寛)さんに売ったことあります」って言い出して。それは縁起がいいなと。

高木 僕はピンクのジャケット羽織ってましたね。

──その縁起のいいスーツの次が現在?

福島 そうです。1年半前くらいからですね。

高木 で、僕が1年くらい今のスーツ着て。いろんな人に言われましたよ、「やっとしっくりきた」って。

変な言葉を言ってたふたりが、オーソドックスな漫才にたどり着く

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──そして今年『ツギクル芸人2022』で優勝されました。昔は漫才コントに入るネタが多かった印象なんですが、今回の『水掛け論』や『怒ってる?』ってしゃべくり漫才っぽいですよね。

高木 たしかに。もともと僕がいろんな種類のネタを書いてしまうんですよね。漫才コントもあれば、コントに入らないのもあるし、福島が変人なパターンもあれば、僕がちょっと変わってるのもある。

そうやっていろんな種類のネタを作ってると、まわりとかお客さんから「ストレッチーズが何者なのか、よくわかんない」って言われて。

福島 それで僕もネタの種類を絞ったほうがいいんじゃないかと提案してたんですけど。

高木 ネタの種類を絞ると、限られた範囲で正解を出さなきゃっていうプレッシャーで作れなくなる恐怖があって。のびのび考えられる状態を維持するために、いろいろ作り続けてましたね。でも、去年の頭に「コントに入るのだけ、一回やめてみようか」って話して。

福島 そうですね。

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高木 「俺、何々やりたいから、お前、何々やって」とか、「こういうシーンってありますよね」ってコントに入るのだけ封印したんです。しゃべくり漫才だけ作って、舞台でもそれだけやるって決めて、ちょっと変わったかもしれないですね。

福島 たしかに『怒ってる?』って今までのストレッチーズにはあんまりない形なんですよね。あれは2020年のM-1も準々決勝で落ちて「ちょっとこれやばいな。なんか考えよう」ってなったときに生まれたやつなんです。

ふたりで振り返ったときに、今までのネタは実は会話をしてないってことに気づいたんですよ。たとえば、さっき撮影中にカメラマンさんの方が「Amazonのネタが好き」っておっしゃってたんですけど、あれも僕がAmazonで買った商品についてひとりでしゃべってる。それに対して高木がコメントしていく形なんですよね。

──ツッコミとか会話っていうより合いの手のような。

福島 やっぱり僕が一方的にしゃべるのが多かったんです。でも「漫才って会話だよな」というオーソドックスなところにいって。

ふたりで話すネタが少ないから作ってみようってことで、笑いはともかく、とりあえず会話の構造を作ろうってことから作ったのが「怒ってる?」「怒ってないよ」っていうやりとりで。それが意外とウケたので、仕上げていきましたね。

福島の背中を押した清木場俊介

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──今年こそM-1準々決勝の壁、突破できそうですね。

高木 したいですね。5年連続準々で敗退してるので。

福島 準決勝進出者のリストから初めて大会のホームページに宣材写真も出るんですけど、そこの壁はやっぱりありますね。

──ネタもそろそろ決まったころですか。

福島 いや、今年作ったネタはまだどれも形にはなってないですね。ただ、やっぱり今年が一番行きやすそうな気がするんですよ。僕らが波に乗ってるとかではなくて、世間とかお客さんの流れ的に、今年が一番のチャンスだと思うので。目指すのはやっぱり優勝ですね。

──応援してます。これで取材は終了です、ありがとうございました。

福島 ……すみません、一個だけ話足してもいいですか?

──もちろんです。

福島 前編でお話しした芸人になったきっかけのところで、言い残してたことがあって……。

僕、ずっと元EXILEの清木場俊介さん好きなんです。EXILEを脱退して、ソロでやってる生き方がカッコよくて。「EXILEももちろんよかったんだけど、僕はもっと歌いたいものがある」という清木場さんのスタンスにならって、僕も慶應ルートを脱退したんです。

「せっかく慶應出たんなら就職したほうがいい」という声を振り切って芸人になれたのは、清木場さんのおかげですね。

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──なるほど……。

高木 インタビュアーさんピンときてないけど。

福島 当時は本当に学歴捨てちゃうくらいの決意だったんですよ!

で、そのころ一番響いた曲が「唄い人」でした。“僕は僕の唄いたい唄を唄う/誰かがどう心を閉ざしても”っていうサビの歌詞に背中を押してもらいましたねぇ。

高木 ……なんでそれどうしても言いたかったんだよ。

福島 最近取材受けることが少しずつ増えてきて、いつもと同じことしゃべっちゃってる気がして、あんまり言ったことない話しておきたくて……。

芸人になるって言ったら、お母さんにも完全に心閉ざされちゃったんです。だから当時の心境にはすごくマッチしてましたね。いつか清木場俊介さんにお会いできたら、お礼を言いたいですね。

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文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=龍見咲希、田島太陽

ストレッチーズ
2014年デビュー。福島敏貴(ふくしま・としき、1992319日、埼玉県出身)と高木貫太(たかぎ・かんた、1991724日、埼玉県出身)のコンビ。『大学生M-1グランプリ2012』優勝。『ツギクル芸人グランプリ2022』優勝。ラジオアプリGERA『ストレッチーズのプリ右でごめん』は毎週水曜日更新。

ストレッチーズ第1回単独ライブ『ヘマル』が7月18日(月・祝)に東京・北沢タウンホールで開催される。

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【後編アザーカット】

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