自分たちのおもしろさを疑わなかったコンビ時代…カリスマ率いるリンダカラー∞の初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#32(前編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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ひとりのカリスマが、ふたりの信者の相談に乗る「カリスマンザイ」で、今ブレイク中のトリオ・リンダカラー∞(インフィニティ)

誰も見たことのない“漫才”で注目を集めるが、実は3人組になったのは2022年と最近だ。紅一点の りなぴっぴ加入前は、カリスマのDenと、坊主頭のたいこーのコンビだった。

芸人たちの初舞台について聞くインタビュー連載「First Stage」。この前編では、小学生からの幼なじみであるDenとたいこーの出会いから初舞台、りなぴっぴの加入までが明かされる。

若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

 

幼なじみの初舞台は、修学旅行

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左から:りなぴっぴ、Den、たいこー

──先に撮影を行いましたが、3人とも最高でした。

Den 僕らは被写体がうまいんでね。

──Denさんの堂々とした佇まいと、たいこーさんの強い眼差し。ふたりは芸歴8年目なので、まだわかるんです。でも、2年前にまったくの素人からスタートしたりなぴっぴさんの表情が、カメラを向けられた瞬間に一変したことに驚きました。もともと芸能関係の仕事をしてたんですか?

りなぴっぴ 全然してないです。ずっとバイトとかしてました。

Den りなぴっぴは、もう完全にプロですね。

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──カリスマであるDenさんの指導の賜物?

Den いやいや、完全なるポテンシャルです。僕ら3人の中で、一番スター性があるのが彼女ですよ。

りなぴっぴ ありがとうございます(笑)。

──そんなりなぴっぴさんのこともすごく気になるんですが、リンダカラー∞の歴史を、順を追って聞きます。Denさんと、たいこーさんは、小学校の同級生なんですよね?

Den そうですね。小学校3年生で同じクラスになって以来、ずっと一緒にいる仲間です。学校が終わると、たいこーの家に遊びに行くのがルーティーンでしたね。

たいこー 親が共働きで家に大人がいないんで、みんなが遊びに来てました。

Den 何人かで集まってましたけど、それぞれゲーム、マンガ、パソコンでエッチなもん見るって感じで、みんな自由にやってましたよ。

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──学校生活はどんな感じでしたか。

Den ウチの小学校ってちょっと特殊で、マジメに勉強する文化がなかったんですよね。

たいこー 正直にいえば、荒れてましたね。

Den なんかもうね、みんな、善悪があんまりわかってなかった。僕も校長室登校を1カ月させられてました。あえて悪さをしてやろうなんて気持ちは、これっぽっちもなかったんですけど。

たいこー ただ、ふざけてただけ。それが笑えると勘違いしてたんすよ。

──中学生では、より荒れた?

Den いや、中学で変わるんですよ。普通、中学校って運動ができるとか、ヤンキーでケンカ強いヤツが力を持つじゃないですか。でも僕らの中学校は、おもしろいヤツが一番だし、モテました。

──ちなみにDenさんはおもしろいヤツでしたか。

Den もちろん。最強でしたよ。

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──おふたりは横須賀の出身ですね。

Den 横須賀にお笑いの文化があるわけじゃないし、中学も上の世代はとんでもなく荒れてたんで、僕らの代だけおもしろいのが正義でした。上の世代の影響で、修学旅行の行き先も岩手でしたもん。定番の修学旅行先に行くと、他校の学生とケンカするから(笑)。僕らの学年は平和主義だったのに。

たいこー 岩手ではホームステイして、川下りとかして楽しかったっすね。

Den そういえば、たいこーとの初舞台は中3のときの修学旅行ですね。僕とたいこーと、友達ふたりで漫才をやりました。

──4人で漫才って、すでに型に捉われてなくて、すごいですね。

Den 自由ですよ。お笑いをやるのは好きだけど、観る側としてはあんま知らなかったし。だからネタを作るときも「漫才ってこんな感じじゃね?」って、みんなで話し合って考えましたね。まぁ結局は、いつものノリで舞台出れば大丈夫っしょって感じでやりましたけど。

たいこー まぁ中学生の余興なんて、知ってるヤツが出てくるだけで盛り上がるんで。ネタでウケたっていうよりも、みんなずっとテンションが高いって感じでしたね。

──どんなネタをやったんですか。

Den 漫才コントをやった記憶があるけど、あんまり覚えてないんですよ。まぁ4人でネタ作るのも、披露するのも楽しかった。それだけです。

俳優でもアーティストでもよかったけど

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──中学で漫才をやって芸人になることを意識し始めた?

たいこー いや、それはないっすね。僕ら、高校は別々で。俺は高校卒業で就職して、Denが大学卒業したころに、俺から誘いました。2017年ですね。

──たいこーさんは、なんで芸人になりたいと思ったんですか。

たいこー 自分がやってみたらどうなるんだろうって気持ちだけですね。別にめちゃめちゃ熱心にお笑いを観てたわけでもないし、特別好きな芸人がいるわけでもない。『M-1(グランプリ)』の出囃子に乗って出てくる感じがかっこよくて憧れてました。

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Den たいこーに誘われて、すぐやることにしました。僕はちょっと就職活動もしましたけど、本気ではなくて。でも正直、自分のカリスマを世界に見せつけられるなら、俳優でもアーティストでもなんでもよかった。ただ、自分の能力値を考えると、お笑いがずば抜けてたんで、芸人になろうと。

──ふたりは23歳で、芸人の養成所に入りました。なぜ、ワタナベエンターテインメントの「ワタナベコメディスクール」を選んだんですか。

たいこー どんな事務所があるのか、よくわかってなかっただけです。吉本は知ってたけど、上下関係が怖いらしいっていうのは聞くからやめました。

Den 小学生のころ、さんざん怒られてきたんで、もうコリゴリなんですよ(笑)。

たいこー 地元のモスバーガーの2階で、いろんな養成所をネットで調べてワタナベに決めたよな。
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Den そうだったわ。検索して最初に出てきた事務所にしようって言ってたら、吉本の次が、ワタナベだった。

──ワタナベのSEO対策が見事だった。

Den 実際、ワタナベでよかった。「先輩の言うことは絶対!」とか、ないから。

──「お笑いがずば抜けてる」という自己認識だったDenさんは、養成所でも抜きん出てましたか。

Den もちろん、人間としては「俺はレベルがちげぇな」って思ってましたよ。でも、ネタは作ったことがなかったんで、ロジックもわからなくて、そこは苦労したかな。それこそ、芸人としての初舞台では、心がぽっきり折れた瞬間がありましたね。

 「俺たちがおもしろくない可能性あんのかよ!」

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──何があったんですか。

Den 最初のランク分けで、Bランクになったんですよ。最初は「なんで俺らがAじゃねぇんだよ」とも思いましたけど、よく考えたらプロの作家が見て「B」なんだからこれが事実なんだろうと。「あの俺たちがおもしろくない可能性あんのかよ!」ってかなり落ち込みましたね。次のランク分けのライブに出るまでの1カ月間はしんどかった。

──カリスマ、初めての挫折。

Den まぁそっからすぐAランクに上がって、そこで優勝するんですけどね。でも、あの初舞台は鮮明に覚えてる。今までの自分を否定された感覚に陥りましたから。あの感覚は、あの瞬間、あの場所でしか得られないものだった。

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たいこー 俺は大丈夫だと思ってましたよ。まぁすぐに勝てるだろって。

──たいこーさんも大物感があります。

たいこー いや、当時はお笑いの世界のことがよくわからなかっただけですね。養成所でも、お笑い好きの人たちがトガった感じでマウント取ってくるのが、意味わかんなくて。単純におもしろいこと言えばいいだけなのに、何やってるんだろうって思ってましたよ。

Den たいこーは、こういうとこカッコいいんですよ(笑)。まぁ俺も、速攻で「やっぱりレベル違うじゃん」と、折れて落っこちてた天狗の鼻をつけ直しましたよ。これが俺の標準装備だから。

たいこー でも、もっとヤバい初舞台もありました。養成所に入る前、アマチュアとして1回だけM-1の1回戦に出たんですよ。東京だとちょっと厳しいから、大宮の劇場に行って。トップバッターだったんですけど、舞台に出て10秒くらいでDenがネタを飛ばして。それで俺もテンパってゴチャゴチャした記憶があります。

Den こいつウソついてます。

たいこー はぁ?

Den 10秒じゃない。3秒だよ。

りなぴっぴ ははは(笑)。

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Den たしかにあれは初めての感覚だったっすね。今思うと極限状態だった。テンパってる自分と、その自分を客観的に見てる俺が共存してた。

たいこー でも、なんかウケたんだよ。

Den そう、これはすごいことですよ。記憶も曖昧で、真っ白の状態で、笑いを起こしたんですから。

たいこー 今思えばあり得ないんですけど、「こんだけウケたら、1回戦通るだろ」って思ってたわ(笑)。

Den それは俺もよ。

たいこー ネタのクオリティを審査員が見てるとかもよくわからなかったから、単純に笑いの量だけだったら、俺らもいけるんじゃないかなって勘違いしてましたね。

漫才の枠をぶち壊したかった

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──養成所を卒業してすぐ、若手芸人によるテレビ番組『ウケメン』(フジテレビ)にもレギュラー出演するようになりました。

Den 『はねトび(はねるのトびら)』(フジテレビ)の総合演出・近藤真広さんも入ってたんで、 王道の活躍路線ですよ。僕らは最年少で入れてもらったので気合いも入ってました。結局、力及ばずで2年弱で終わっちゃいましたけど。

──当時のインタビューを読むと「ボケのデンさんが投げかける突拍子もない設定に、たいこーさんが熱いツッコミで応える」とあって、想像つかないんですが……。

たいこー ははっ(笑)。

Den 僕がアフリカに行ったというネタをやってるころとかですかね。アフリカの辺境の地でオリンピックが開催される。そこで僕が選手宣誓をお願いされそうだと。日本人ってバレたら、槍でひと突きされちゃうから、ちゃんとしなきゃっていうネタで。そこには理由もなければ道理もない、ナンセンスですよね。ほかのネタも「なんかこの景色見たことあんな」から入って「デジャブだわ」って4分間言い続けるとか。めちゃくちゃでした。

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──型にはまった漫才が嫌いだった?

Den そうっすね。「お願いします」「いきなりなんだけど」「ありがとうございました」って定型文とか使って、漫才っぽいことをする。そういう漫才の枠に捉われたくなかったんですよね。とにかく新しいものを生み出したかったですね。

──その思いでふざけ倒すDenさんに、たいこーさんは熱いツッコミを返していたと。

たいこー 熱いツッコミっていうか、単純にすごくでかい声出してただけです(苦笑)。

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Den 僕のボケで、たいこーが困ってるのがおもしろいんですよ。それは小学生のころから変わらない。昔はネタとか平場でたいこーを困らせてたけど、りなぴっぴが入った今は、人生まるごと使って困惑させるのが、テーマになってますね。

たいこー リンダカラー∞になってから、もう2年経ちますけど、いまだに戸惑ってます。

Den ふたりで漫才やってるときは、伝統と歴史がある漫才文化をとにかく壊したかったんですよ。でも、リンダカラー∞になってから「壊す」よりも「作る」ほうに関心が向いている。古い漫才をぶっ壊すんじゃなくて、新しい漫才を立ち上げる。この3人なら、やれますね。

​​文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平

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リンダカラー∞
Den(1994年2月22日、神奈川県出身)、たいこー(1993年8月5日、神奈川県出身)、りなぴっぴ(1998年2月10日、山形県出身)のトリオ。小学生から幼なじみだったDenとたいこーで前身となるコンビ「リンダカラー」を結成。2022年5月、Denのファンである りなぴっぴが加入し、「リンダカラー∞(インフィニティ)」に改名する。2024年、若手芸人の登竜門『おもしろ荘』(日本テレビ)で「カリスマンザイ」を披露し、準優勝した。

 

【前編アザーカット】

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若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>