たまに行なうリバイバル企画。今回は、2013年夏に行なったインタビューを再録します。当時は、アイドルブーム全盛期。
さあ、ここから↓
彼と初めて会ったのは、かれこれ7、8年前のこと(※2013年夏時点)。
陽気で気さくな“松井寛(マツイヒロシ)”さん…“royalmirrorball”の名でも知られる、日本のR&B界を代表するコンポーザー&アレンジャー。
「MISIA(ミーシャ)」をブレイクに導いた仕事や「東京女子流」のアレンジワークなどと聞くと「!」ってなる人も多いんじゃないだろうか?
そんな“松井寛”さんへのインタビューを再録して、お届けします。
-さちひろ(以下、略):この業界に入ったきっかけはなんですか?
松井(以下、M)「PARCO主催のオーディションで2位になって「テイ・トウワ」さんとか「ZABADAK」さんとか有名なグループの方もいらっしゃって…そこからPARCO音楽出版。でPARCOのCMをやったり…」
-なるほど。そこからPARCOのCMソングとかも?
M「そう。86、7年とか。その頃、コマーシャルって花形職業だったから。みんなキラキラしてるし、何だこれー?って」
-「糸井重里」さんとか…確かに、CM業界が一番活気がありましたよね。
M「当時、代官山に住んでいる相手に資料を届けに行ったら、キャッチボールが出来るぐらいの広さの部屋でさ。なんなんだこの豪邸!ってね」
-ホントですか?すごい!
M「一流になるとこんな豪邸に住めるの?!って…じゃぁ、売れるために本当にがんばろうってw」
以降、松井さんは積極的にCMソング関連の仕事を手掛けていく。
PARCO音楽出版など、幾つかのプロダクションを経てソロワークへ。
誰もが知っているであろう♪“顔がいのちの吉徳”なども、彼の仕事だ。
-そこから…最初に手掛けたアイドル関連の仕事はなんですか?
M「たぶん「高橋由美子」さんじゃないかな?」
-「MISIA」さんはその後?
M「そう。九州に行っていた知人から電話がかかってきて『松井!凄いのが見つかったからやるからね!』って」
-なるほど。「東京女子流」さんの仕事のスタートはどこからになります?
M「藤原くんっていうディレクターと、avexの佐竹くんとで「東京女子流」をやることになってね…」
-で、お伺いしたいのが…まず「東京女子流」の編曲をするじゃないですか。その後で、さらにリミックスを“royalmirrorball”名義で…あれって意識をどう使い分けてるんですか?
M「簡単に言うとね。(最初の編曲は)中間試験を受けてる気分w…はい、1個出来ましたね。じゃぁ、はい次!みたいなww」
-あぁ!
M「言い方を変えると、カヴァー曲のアレンジをしてるみたいな」
-そういうことなんですね。以前(松井さんと)話していた時に『やる時は必ず自分のremixを入れたい』っていう話をしていて。その思いもあるのかなぁ、と。
M「1枚目とかは、拙い感じだったからね。このアレンジを、どのレベルに合わせていくのかっていう…それならいっそ、こういうパターンも行けるんじゃない?って提示してみたり。その選択の評判が良かったから、結果的に続いてるんじゃないかな」
-でも“アイドルとR&B”の組み合わせを全面に打ち出したっていうのは「東京女子流」の特徴ですよね。松井さん的にはどう思いますか?アイドルとR&Bの相性って。
M「うーん…オケはガチャガチャしてるほうがいいよね」
-オケがガチャガチャしてる方が…
M「本当は(BPMを)速くしたうえで、決まった構成のA→B→Cみたいなパターンにした方がいいんだろうけど。今メジャーな」
-なるほど。
M「テンポが速いのはさ、崩れ落ち方が半端ないんだよね。分かりやすく言うと、ダサくなるスピード、ブームが去るのがホント早い。パラパラとかね。」
-ブームが去る?
M「そうそう。だから、テンポが速いモノをやる時って、俺は物凄く慎重にやる」
-そうか。確かにそうですよね。速いモノって。
M「例えば、BPMが100のモノって、けっこう長ぁーく聴いたりするじゃん。いつになっても、ちょっと思い出したりして。でも、BPMが140を超えるモノって、あとからは絶対に聴かないw」
-言われてみると。
M「だから昔から、速いモノと遅いモノ、どっちにする?って聞かれたら…俺は常に遅い方を勧めてる」
-その視点を持ったことはなかったですね。
M「映像とかでもそうだけど…」
-(BPMは100くらいの中庸が良いという)その視点を持ったことはなかったですね。
M「映像とかでもそうだけど…良いって思うモノの定義って、実は難しいよね。過去に聴いた時に凄く気持ちの良い経験をした記憶とかをリアルに感じさせないと、たぶん共感はしてもらえない。それは匂いのようなもので。現代音楽みたいにモノ凄く訳の分からないものをつくってしまうと、逆に拒絶しか生まないから」
-そう考えると「東京女子流」はベタな選択とも言えるんですね。
M「そう。今の流行りモノと、ベタなモノとをうまく、ね」
瓢々と語る「松井さん」。記すのを躊躇うような際どいネタも交えながら…
今(※2013年夏時点)の日本の音楽シーンの話題へと、さらにトークは進む。
M「あと世界的な話でいうと「Daft Punk」が何をやるのかによって、世の中の音楽ってグイッと変わるでしょ」
-確かに。
M「そういう意味では…今後、ひょっとしたら「Shakatak」みたいなモノが出てきたり」
-…「Shakatak」?!
M「笑w今の日本って、ガラパゴスなんだよ。チャートがさ、全く(世界の流行りの)影響を受けない」
-あぁ、そういうことか。
M「だって、あれだけ「One Direction」が推されてさ、昔だったらドッカンドッカンいくはずなのに」
-たしかに、全然いかないですよね。なんというか、はしゃいでる若い兄ちゃん…w
M「そう。あと「江南スタイル」なんも、日本だけは全然…」
この後も、音楽業界を俯瞰した話は尽きず…。2020年夏から先、今後も要注目です!
※J-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』
2020年6月18日(木)、25日(木)27時~:ゲスト出演予定(パーソナリティ:木村コウ)