「ヨントン」は生放送と同じ!? それでも推しとの会話は難しい|「林美桜のK-POP沼ガール」第2回

林 美桜のK-POP沼ガール

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「林 美桜のK-POP沼ガール」
K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム

私は、イベント参加型オタクです。
コンサートをはじめ、そのほかのイベントも積極的に参加するタイプ。

サイン会、ミーグリ(*1)、ハイタッチ会、お見送り会……
そして「ヨントン」。

このヨントンというのは韓国語で「영통」と書きます。「영상통화」(=ビデオ通話)をギュッとした言葉なんだそうです。

CD購入特典などでイベントに申し込んで当選すれば、我が推し様と数十秒から数分、1対1でビデオ通話できます。

新型コロナウイルスの影響を受けて生まれた、推しとの新しいコミュニケーションのかたちなんですが……

↑素晴らしくないですか?

コロナ禍、常に頭の片隅に「K-POP(推し活)はどうなってしまうのか」という悩みを抱えながら生活していた私にとって、ひと筋の光でした。

誰もが先の見えない苦しい状況だったなか、会いに行かずとも直接応援できる、こういったイベントを生み出し、実現してくださった方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ここで言わせてください。
「감사합니다(カムサハムニダ)」

アナウンサーは「ヨントン」が得意!?

募る気持ちを抑えて、本題に戻りますが……

私はヨントンが得意かもしれません。
(とはいってもほんの数回しかやったことがありませんが……)

これは新しい発見でした。

ここで、ヨントンの準備から本番直前までの流れを見ていきたいと思います。

まずは準備。当日までに推しについてリサーチ。今までのヨントンの傾向などを把握します。

続いて、話す内容を決めて韓国語を勉強。可能であれば、韓国人や韓国語を話せる友人に、話す内容の韓国語訳が正しいか、発音などをチェックしてもらいます。

迎えた当日。スマートフォン・照明・ストップウォッチなど機材の準備、カンペ作り。本番ギリギリまで、話す内容の確認・尺調整を行います。

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30秒ヨントンver.

このあたりは、自分で言うのもあれなんですけれども……自信があります。

なぜなら、アナウンサーの仕事とほぼ同じだったんです。
初めてのヨントンのとき、なぜこんなにスムーズに準備ができるのかと自分で自分に驚いてしまったほど(笑)。

カンペ作りでは、自分が本番で早口になるタイプなのは重々承知しているので、噛みやすいところはカンペに波線を引いて強調して、特にゆっくり読むことを意識できるように。

息を吸い忘れると語尾が速くなる傾向が強いので、息継ぎのタイミングにはスラッシュを引いておき、目線がずれない位置にカンペをセッティング。

話す内容の確認・尺調整では、日々の放送準備と同じく、焦らないように締めコメントを用意。会話終了までの尺が残り20秒、10秒、5秒、3秒だったときのパターンもそれぞれ考えておきます。

「ひとつ目のお題のトークが盛り上がって、残り20秒まで押してきたら、ふたつ目は捨てて3つ目のパターンで締めよう!」

ストップウォッチを見ながら、さまざまなパターンを予想し、潔く質問を捨てたり変えたりできるように準備します。

ヨントン本番は、まるで生放送番組!

そしていざヨントン本番。尺管理しながら楽しくトークするのですが、ここでもアナウンサーのスキルをフル活用。

アナウンサーは日々「リアルタイム」というのを背負っています。

生放送の番組だと、CMや次のコーナーに移るとき「絶対にこの時間までに終わらせて」というタイムリミットが決まっています。それに向けてスタッフさんたちが「残り何十秒、10秒前、9……3、2、1」と出してくれるカウントに合わせて、内容をまとめていくんですね。

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ですから、ヨントン中に急きょ登場するカウントにも焦らず対応することができました(何を偉そうに)。
むしろカウントを見て意気揚々としてしまいました(恐ろしい)。

なんでも器用にできないタイプの人間なんですが、つつがなく進行できたヨントンを通じて「ああ、私、毎日それなりに仕事していたんだな」と実感しました。

新人のころ、先輩方から熱心に教えていただいたこと、今ここでしっかり活かされています。

もう一度ここで言わせてください。
「ありがとうございます」

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林美桜がヨントンで失敗したこと

そんな私もヨントンで失敗したことが……あります。

たとえば、興奮して自分ばっかり話して、肝心の推し様の話を聞き忘れたことがあったな……。

推し様からいただいたお言葉は
「はい」「アンニョン」
のみ。

ナイスなタイミングで相づちを打っていただいちゃって、気持ちよく話しちゃいましたけど。
いや、なんのためのヨントン(白目)。
(いろいろと申し訳ないし、興奮するとどうしようもないほどおしゃべりになる自分が心底イヤ)

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あ! あともうひとつ。

ヨントン終了後、画面が暗くなったあとに自分の顔が反射して映ってしまうんですが、そのときの顔があんまりにもニヤニヤしていて、

「こんな顔で推しと……話してた……?」

と、楽しかったヨントンの記憶が飛ぶくらいショックを受けたことがあります。

ヨントンのご予定がある方は、終わったらすぐ画面から目線を外すことを心がけてくださいませ。

ついさっきも、ヨントンに応募してしまいました

そしてこんな原稿を書いていたらヨントン欲が高まり、新人アーティストBOYNEXTDOOR(*2)のヨントンにちゃっかり応募してしまいました。
当たるといいな……(笑)。

次回は……
得意なこともあれば、苦手なことももちろんあります。

私の大変苦手なこと(もうお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが)
「対面イベント」について書けたらなと思っております。

林美桜のチョアチョア♡メモ

*1/ミーグリ
「ミート&グリート」の略。少人数のファンを対象に開催されるイベントで、ハイタッチ会よりは長く推しと挨拶や話ができます。コンサート後に会えたり、オンライン形式だったり、さまざまなかたちがあります

*2/BOYNEXTDOOR
2023年5月30日にデビューしたばかりの新人ボーイズグループ。ラッパーでプロデューサーのZICOがプロデュースしているということもあって期待が大きい。ドアを使ったパフォーマンスが眩しいほどフレッシュ! キュートな歌詞はぜひ日本語訳を調べてほしい!

文=林 美桜 編集=高橋千里

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