カメレオン女優・髙石あかり、役と向き合い、奮闘する日々

focus on!ネクストガール

lg_f-o_14_b_t

#14 髙石あかり(後編)

旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。

髙石あかり(たかいし・あかり)。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、舞台や数々のテレビドラマへの出演を重ねている。初主演を果たした映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)がヒット。現在、続編となる映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)や『わたしの幸せな結婚』(2023年)が公開中。後編では、役づくりや最近の仕事に迫ってみることに……。

インタビュー【前編】

「focus on!ネクストガール」
今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。

作品ごとに、違ったアプローチを

2-L1008932-Edit

──現在公開している『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)や『Single8』(2023年)など、作品ごとに演じるキャラクターが全然違うのですが、そのあたりの役づくりはどうしていますか? 本当に『わたしの幸せな結婚』(2023年)もそうですけど、三者三様のキャラクターというか……まったくバラバラなのがすごいなあと思って。

髙石 3つとも違った役づくりをしているかもしれないですね。『わたしの幸せな結婚』は原作があったので、原作に寄せるにはどうしたらいいか?というのと、寄せた上でそれを実写化する……その実写化する意味だったり、もっと恐怖を倍増したり、違った恐怖のようなものをつくるにはどうしたらいいか?ということの難しさがありましたし、『Single8』の“夏美”は“女の子”としての素みたいなものを出さないといけなくて。どちらかというと『ベイビーわるきゅーれ』の“ちさと”が私の素に近かったりするので、だから『Single8』では、逆にヒロイン感のようなものを出すにはどうしたらいいんだろう?というのをすごく考えました。昨日、すごく仲がいい友人と一緒に『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』を観に行ったんです。作品中の私は、普段とはまた違う私なので「違うね」と言われることも多かったりするんですけど、その子からは(“ちさと”は)「まんまやん!」と言われて。自分でも自分がどんな人間なのか、あまりよくわかっていないので。そういう新鮮な意見をもらえておもしろかったなと。

──『Single8』は、ティピカルなヒロイン像みたいな女の子ですよね。『ベイビーわるきゅーれ』の“ちさと”が、一番素に近い……なるほど。ボクは3作品を立て続けに観たこともあって、もうカメレオン的に変わってくなと思いながら観ていました。現在放送中のドラマ『墜落JKと廃人教師』(MBS/2023年)は、どうですか? 役柄的に。

3-L1008952-Edit

髙石 正直(“扇言”を演じるのは)すごく難しいなと思っています。テンポ感を意識し出すと、役ではなくなってしまったりとか。心地よいテンポ感にしようとすればするほど、自分の持っているテンポ感になってしまう。でもそうすると、あのふたり……灰仁(灰葉仁)と(落合)扇言の持っているローテンションの掛け合いみたいなものではなくなってきてしまうというか。今まで身につけたコメディのスキルが使えないのはすごく難しいですし、逆にとてもおもしろいなとも思って、毎日撮影していますね。

──原作マンガ(『墜落JKと廃人教師』白泉社)は、テンポを重ねて、という感じじゃないですか。ドラマも、ほぼ掛け合いですよね。

髙石 はい。ずっと掛け合っていますね。恋愛要素があったり、キュンキュンしたシーンのある作品を今まであまりやってこなかったので、照れた表情ってどうやるんだろう?とか……そこが難しいポイントです(笑)。

──最初のほうは直球で好きとまではいかなくて、様子をうかがいつつ……途中から照れ始めて、気持ちが変化するという。

髙石 そうですね。好きという気持ちに気づくみたいなことは、ちゃんと段階を経てという感じで……。

──そうですよね。

髙石 でも確実にドキドキはしているので、その表現は、今までにない新しいお芝居要素だなと思います。

──原作マンガを読まれて、どうでしたか?

髙石 もう、どハマり! ドラマのお話をいただいて、まず第1話を読んでみようと思って読んだその日に15巻全部を購入して(笑)、どうしよう、本当に好きになってしまって……と。“灰仁”もそうですけどヒロインの“扇言”……すごく女子人気も高いキャラクターなので、それを崩さずに役に落とし込むにはどうしたらいいんだろう?とか、マンガを読みながら扇言のセリフを追ってみたりとかしつつやってみても「全然違う! できない!」と。やっぱり好きになると「これじゃない! これじゃない!」となってしまって。よけいに難しさがあったなと感じています。

──ドラマの撮影現場はどうですか?

髙石 役柄のまま、TikTokをよく撮っていて。ダンスや手の動きを、合間に練習してというのが楽しいなと思っています。難しいんですけど。

──これから『墜落JKと廃人教師』を観る方に、注目ポイントを。

髙石 テンポ感の大事な作品で、芝居ももちろんですが、音だったり編集だったり、すべてが関わってくる作品です。本当に思い入れの強い作品で、それを多くの方に観ていただきたいですし、ぜひ笑って……この人たちは何をしているんだ!と、引き目で何か感じてもらいつつ、でも急に来る落差のある胸キュンシーンだったり、そういうものにもキュンキュンしてもらえたらなと思います。

地元・宮崎にも恩返しができたら

9-Q1014431-Edit

──会話のテンポが、本当に心地よいですよね。話は少し変わりますが、仲がいい女優さんはいます?

髙石 宮崎を舞台にしたローカルドラマ『ひまわりっ~宮崎レジェンド2~』(2022年/テレビ宮崎)で一緒になった平祐奈さんと、仲よくさせてもらっています。本当に(平さんが)大好きで……よくご飯に行ったり。すごくパワーがある太陽みたいな方なので、そのパワーをもらいに「そろそろ充電しに行かせてもらってもよろしいでしょうか?」というのを、時々連絡しています(笑)。

──この作品の舞台の宮崎は、髙石さんの地元ですよね。撮っているとき、いつもと感覚が違ったりしましたか?

髙石 そのときは、実家から撮影現場まで、母が運転してくれる車で通っていました。不思議ですよね……撮影の景色が小学生のときに通っていた通学路だったりとか。実家に近い場所もあったりとかして。目の前に広がっているのは、一応仕事現場ではあるんですけど、その向こう側の景色はプライベート。少しずつ……育ってきた大好きな地元なので、恩返しみたいなものができていたらいいなというか、そういううれしい気持ちも交えながらお芝居しました。

──なるほど。髙石さんは舞台の経験もいろいろとありますよね。舞台と映像作品とでは、演じるときの感覚が違うところがあったりします?

髙石 根本は一緒だろうなと思ってやっていたんですけど、最近では全然違うと思うようになっていて。表現の仕方が180度違う。今、撮影している『墜落JKと廃人教師』でやっていることは、舞台をやっているときとは真逆だと思います。それを、今回撮影していて気づきました。

──たとえば……。

髙石 『墜落JKと廃人教師』は、感情というより、言葉の掛け合いみたいなものが軸で。だから感情で演じるとテンポが遅れたりとか、間が悪くなったりとか。そういう……友達と話すときに、あまり感情を意識して話したりとかはせずに、くだらない話をバーッてしゃべっている。そのときは、たぶん“無”だなということに気づいて。そこから言葉のニュアンスを考えるようになりました。今までは、感情さえあれば、言葉の始まり方とか終わり方は気にしなくていいと思っていたんです……ぐわーって感情を動かしさえすれば。でも実際、映像のほうでは、どう美しく言葉を発するかというか……それは汚くてでも、そうなんですけど、映り方とかすべてに意識を向けていないといけないみたいな。荒々しさがあったほうが魅力的に見えるのが舞台で、繊細な何かをしているというのが映像なのかな……。もちろん、役で変わってくるとは思うんですけど『墜落JKと廃人教師』では、それをすごく意識して演じています。

──その違い、すごく腑に落ちます。髙石さんが今後やってみたい役柄はありますか?

髙石 今まで殺し屋とかいろいろな役をさせてもらったんですけど、やったことのない恋愛モノにもいつか挑戦してみたいと、少し前まで思っていたら……今回『墜落JKと廃人教師』の話が来て、すごい縁だなというか。挑戦したいと思っている時期にやらせてもらえるのはすごくうれしいなと思いつつ。なので、次は……もう、欲張りですよね(笑)本当にたくさんの役をさせてもらえているんですけど、もっともっと信じられないくらいダークな役とか、サイコパスな役をやってみたいですね。サイコパスな役……めっちゃ、やってみたいですね。何かが欠落している人を演じるのは楽しいなと思うので。

──サイコパスな役をやりたいという女優さん、多いですね。

髙石 やりがいがあるんでしょうね。

──サイコパスな役か、(髙石さんは)もうやっちゃっていますけど、殺し屋の役をやりたいと、皆さんおっしゃる。

髙石 ですね、かけ離れたものをやりたいです。

マイブームは“靴下集め”

4-L1008889-Edit

──仕事の話からは離れますが、プライベートに関する質問を。最近、何かハマっていたりします?

髙石 最近は、靴下を集めるのにハマっていて(笑)! 今日も……あんまりあれですかね? 靴下を見せるもんじゃないですかね?(笑) 今まさに履いているんですけど(※と言いながら、見せる)こちら! 6色。これ6色あるんです。最近100円ショップで見つけて「うわかわいい!」と。くるぶし丈の靴下のほうが好きではあるんですけど、地方に行ったりすると、とりあえず買っちゃいます。もちろん自分の中で、これが好き!みたいなのはあるんですけど。

──実用的ですしね(笑)。そのきっかけは、気づいたら靴下に目が行っていたみたいなことですか?

髙石 始まりは……マネージャーさんから靴下をいただいて、その靴下のがすごくおしゃれで。それが始まりの始まりかもしれないですね、たぶん。

──趣味関連は、一度ハマると、一気にガッといくタイプですか?

髙石 はい。前にも、編み物にハマったことがあって……すごく凝ったぬいぐるみをつくって、人にあげたりしていたと思います。

──なるほど。女優以外で、今後挑戦してみたいことはあります?

髙石 やってみたいこと……スカイダイビングとかバンジージャンプとか。あと、インドに行ってみたくて。そもそも海外というところへ、今まで行ったことがなくて……日本とまったく違うところに行きたいんですよね。なんかビルとか……周囲がそういうところじゃないところ、なんか香りとかも、きっと違うんだろうな。

──行かれる日を楽しみにしています。

髙石 はい、ありがとうございます。いつかは!

取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=高良まどか 編集=中野 潤

5-L1008899-Edit

************

髙石あかり(たかいし・あかり)

2002年12月19日生まれ。宮崎県出身。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、舞台や数々のテレビドラマへの出演を重ねている。初主演を果たした映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)がヒット。ドラマ『生き残った6人によると』(MBS/2022年)、舞台『鬼滅の刃』(2020年)、映画『わたしの幸せな結婚』(2023年)など、数々の映画やドラマへの出演を重ね、現在、主演を務める映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が公開されており、ヒロインを務めるドラマ『墜落JKと廃人教師』(MBS/2023年)も放送中。

focus on!ネクストガール