女優・恒松祐里は“悪女”を演じたい。その役づくりと演技プラン

focus on!ネクストガール

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#13 恒松祐里(前編)

旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。

恒松祐里(つねまつ・ゆり)。子役としてデビューしたのち、ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』(2015年/フジテレビ)、『トーキョーエイリアンブラザーズ』(2018年/日本テレビ)、『女子高生の無駄づかい』(2020年/テレビ朝日)など、数々のドラマに出演。映画では『くちびるに歌を』(2015年)や『タイトル、拒絶』(2020年)などでも印象的な役柄を演じ、『きさらぎ駅』(2022年)では初主演を果たした。Netflixオリジナルドラマ『全裸監督 シーズン2』(2021年)のニューヒロイン役でも話題に。現在配信中の新作・Netflixオリジナルドラマ『今際の国のアリス シーズン2』に「ヘイヤ」役として出演。この「ヘイヤ」役に挑むに至った経緯から、話を伺った。

「focus on!ネクストガール」
今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。

『今際の国のアリス』げぇむのリアルすぎるセット

──配信中のNetflixオリジナルドラマ『今際の国のアリス シーズン2』の話を伺います。最初は……。

恒松 オーディションです。2021年の1月くらいで、オーディションの前の日が『全裸監督 シーズン2』のキャスト情報が解禁された日だったんです。ちょうどその次の日にオーディションがあって、これは自己紹介で使わなきゃダメだな!と思って……「昨日(『全裸監督 シーズン2』への出演が)情報解禁されたんですけど、この作品にも出演して“Netflix女優”になりたいです、お願いします!」と言ったら、皆さん笑ってくださって。

オーディションに臨む前に原作も読んだんですけど「ヘイヤ」という役が力強くて、これは絶対に受かりたいなというか……考え方がちょっと私に似ている部分もあったりしたので、すごく気合いを入れてオーディションに臨みました。

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──「ヘイヤ」と考え方が似ているというのは、どのあたりですか?

恒松 「ヘイヤ」ってすごく強いんですけど、その強さというのは悲しみとか苦しみを乗り越えての強さで……私は「ヘイヤ」のような境遇ではないんですけど「ヘイヤ」みたいにちょっと悲しいことがあったり、つらいことがあっても、あまり人に言わず強さで覆い隠すところがあって。そういう我慢してしまうところが「ヘイヤ」と似ていて、マンガを読んでいても、そういうところにすごく惹かれて……実際、自分のそういう部分を強めて、役づくりをしていましたね。

──役づくりに関して、いわゆる原作物とオリジナルがあると思うんですけど。原作物の作品に挑む際には、今回のように必ず原作にも触れたりしますか?

恒松 はい、もちろん触れます。原作から脚本が生まれて作品になっているので。一番の根本は原作で、どういう目的を持って描かれたのだろう?どういう子なんだろう?とかを考えます。ドラマ『今際の国のアリス』は(連続)ドラマだから、映画作品より多少は描かれていますけど……でもやっぱり映像になると、マンガよりもキュッとしちゃうことが多いと思うので、実際にどういうことがあったのかというのは、マンガからヒントを得て役をつくったりしています。

──『今際の国のアリス』は<シーズン2>も<シーズン1>同様、マンガ原作を忠実に再現されているようですけど……すごいですよね。撮影のときは、どんな感じだったんですか?

恒松 “げぇむ”のことですね。もう撮影はすごかったです。私が参加した“かまゆで”という“げぇむ”なんですけど。セットで、本当に“かまゆで”の会場を作っていて……。

──あれを?

恒松 はい。壊れたドームという設定なんですけど。ドームが壊れる前は、実物を動画で撮って、壊れたあとからはセットなんです。壊れたドームといっても、皆さん、あまりピンとこないですよね。本当にリアルな空間がスタジオ内に広がっていて「めちゃくちゃ時間がかかっているセットなんだよ」と(佐藤信介)監督がおっしゃっていたんですけど、瓦礫ばっかりだから「ああそうなんだ」みたいな。でも、ただ見るだけじゃわからなくて、よく見ると全部のコンクリートが違う形をしていたりとか、触っても痛くないコンクリートでできていたり、コンクリートと違う素材でできていたりとか。あとは“釜ゆで”だけに、ちょっと温泉みたいな場所があるんですけど、その温泉も溜められるところがあって、実際に私はそこで泳いだりとかもして。本当にすごくリアルで、セットの中に入ると「ヘイヤ」みたいに生き残らなきゃ!という気持ちになるというか……ここから出なきゃ!というくらい、本当に瓦礫に挟まれたような、閉じ込められたような気分になるセットで撮影していました。

──セットに煽られる感じ……。

恒松 本当に素晴らしかったですね。

撮影の合間には、もっぱら『ポケモン』を

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──演じた役柄の「ヘイヤ」は片足が義足になりますよね。そして活動的、もちろん戦闘シーンもある、そのあたりの演技プランは……。

恒松 クランクインする前に、実際に生活している方の映像を拝見したんですけど、皆さん、義足をつけて歩いてらっしゃる感じがしないように見えたんです。なので、走っているときは多少、跳ねたりもしたんですけど、基本的に足場が悪いところじゃなければ、普通の歩き方をしていました。ただ、アクションシーンもたくさんあって……「ヘイヤ」はアーチェリーの弓矢を使って戦う役だし。アクション部の方とは相談を重ねました。普通の弓はすごく固くて人にぶつかると危ないので、柔らかい同じような形を作ってもらったりとか。義足も、硬いと蹴るシーンでケガをしてしまうので、柔らかい部分を作ってもらったりとか。アクションのときの動作も動けない動きがあって、右ではできるけど左ではできないとか……一番スムーズにできるのはどれか?というのを、皆さんと考えながら作っていった感じでした。

──弓でのアクションは、かなり練習したんですか?

恒松 弓は、クランクイン前にアーチェリーのプロの方に教えていただきました。でも実際の「ヘイヤ」は、プロという設定ではなく弓道部という設定なので、構えができるくらいにしたり。ほかにも、アーチェリーの弓は本当はゆっくり引いてパン!って射るんですけど、実際の戦いでそんなことをやっていたら死んでしまうので、パン!と、すぐ打つ感じにしたり。練習では、リアルとは、少し変えてやっていました。

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──たしかにそうですね。撮影中、共演者の方とはどうでした?

恒松 はい。基本的に(「アグニ」役の)青柳翔さんとずっと一緒にいたので、お話をすることも多くて。地方での撮影だったんですけど、お休みの日もけっこうありました。「何やってるの? 休みの日」と聞かれたので、そのとき私ちょうど『ポケモン GO』をやっていて「『ポケモン GO』をやっています」って言ったら「俺も入れよう」って。青柳さんとふたりで『ポケモン GO』友達になって「昨日これ捕まえたんだ」みたいな会話を。でも現場で行くところは山や森が多くて、全然電波もつながらないし「何もいないじゃん!」「ジム遠っ!」みたいなことを話していました(笑)。

──たしかに(ポケモン)いなそうですよね(笑)。

恒松 本当にずっと『ポケモン GO』をしていましたね。そういう何気ない会話が多かったんですけど、撮影の後半のほうで青柳さんが「なんか、役のふたりの関係って、ネオンみたいだよね」というようなことをおっしゃって。

──……ネオン?

恒松 孤独なふたり同士が出会って、ふたりで特別な絆ができる、でもそれは恋人ではない……という。それを聞いて「私もそう思ってやっていたんです!」みたいな。本当にクランクアップの2日前くらいに、その話をして「ああ、ふたりとも同じことを考えていたんだ!」となりました。

──ほかの共演者の方々とは?

恒松 そうですね。お会いする共演者は少なかったので。アリス役の山崎(賢人)さんとは何日間か一緒の撮影があって、山崎さんはちょうどそのとき『梨泰院クラス』(2020年)にハマっていたんです。皆に薦めていて、スタッフさんも全員観たんですけど、私も時間があったのでお休みの日に全部観たので、誰が推し?とか……そういう話をしていました(笑)。

──完成した作品(『今際の国のアリス シーズン2』)をご覧になってどうでした?

恒松 もう素晴らしかったですね! シーズン1に続いて、映像もアクションも完成度がすごく高いですし、美術もすごいです。なによりシーズン1よりも各キャラクターの生き様が描かれているので、ストーリーが終盤になるにつれて、皆の思いが集結することが視聴者の人にもわかるという。皆バラバラにいるところからのアッセンブルみたいな。本当にそういう感じがすごくて。感動しながら観ていました。

──アッセンブル、最後の“げぇむ”の前に……。

恒松 そうですね、皆がたまたま集まって、最後の敵を倒しに行くみたいなのもすごくかっこよかったです。

今後は悪女を演じたい

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──『今際の国のアリス シーズン2』を経て、今後チャレンジしてみたい役柄はありますか?

恒松 近年、私が演じている役柄は……「ヘイヤ」はちょっと違いますけど、よい子の役、明るい社交的な女の子の役が多いんです。「ヘイヤ」みたいな、心に闇というか、痛みを抱えている女の子を演じるのも楽しいですし、この前の舞台(『ザ・ウェルキン』)では意地悪な女の子を演じてそれも楽しかったから、映像作品では最近悪い人の役をあまりやっていないので、ダーク系な役も久々に映像でできたら楽しそうだなと思っています。

──どのぐらいまでのダーク度合いで……。

恒松 “悪女”くらいまでいってもいいんじゃないかな?と(笑)たまには。

──映画『タイトル、拒絶』で演じた役なんかも、闇を抱えているように見えましたが。

恒松 そうですね。彼女は、痛みを隠している系ですよね。そういう役も、やってみて自分の心に残る役ではあるので、引き続きやっていきたいですね。

──「ヘイヤ」役を演じている『今際の国のアリス シーズン2』のこんなところを観てくださいというところを、ぜひ。

恒松 そうですね。まだ<シーズン1>を観ていない方もいらっしゃるかもしれないですけど……この作品は日常、何気なく普通に生きている人が、いきなり「今際の国」という生死を争う“げぇむ”が開催されているところへ連れてこられて、自分の人生を見直したりとか、生き方を見直していくという作品です。シーズン2では、特に厳しい戦いがたくさんあって、その中で各キャラクターの大切なものというのが本当はなんなのか?ということが描かれています。作品を観ていると、キャラクターたちに背中を押されて、私ももっと一生懸命生きようとか、彼らみたいに未来へもっと力強く一歩を踏み出そうという気持ちになると思います。

──ありがとうございます。引き続き、これまでの歩みなどについて伺わせてください。

山崎賢人の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤

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恒松祐里(つねまつ・ゆり)

1998年10月9日生まれ。東京都出身。子役としてデビューしたのち、『女子高生の無駄づかい』(2020年/テレビ朝日)、『おかえりモネ』(2021年/NHK)など、数々のドラマに出演。映画『くちびるに歌を』(2015年)など、ムービーにも多数出演、映画『きさらぎ駅』(2022年)では映画初主演を果たした。近年では、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督 シーズン2』(2021年)のニューヒロイン役が話題に。現在配信中の新作・Netflixオリジナルドラマ『今際の国のアリス シーズン2』に「ヘイヤ」役として出演。2023年1月からスタートした連続ドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ)に出演中。

  【インタビュー後編】

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