胸キュンも、涙も!韓国ドラマの猛者たちが選ぶ“忘れられない名作”とは?|「林美桜のK-POP沼ガール」韓ドラ女子座談会・前編

林 美桜のK-POP沼ガール

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「林 美桜のK-POP沼ガール」
K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム

 引き続き、韓国ドラマにどハマりしている林美桜。「韓ドラ好きな方々と、思いっきり語りたい!」ということで、10月某日に急きょ座談会を開催することに。

座談会に参加してくださったのは、韓ドラファンの中でおそらく知らない方はいないおふたり。Xの感想ポストが共感の嵐でバズりまくっている、沼野チョロ子さんとmiko 映画ドラマ沼の住人さん。

「恋愛&胸キュン部門」「泣ける部門」「人生ドラマ部門」の3ジャンルに分けて、イチオシの作品を互いに紹介。リモートとは思えない、白熱したトークをお楽しみください!

【恋愛&胸キュン部門】“契約恋愛モノ”がたまらなく好き!

林 美桜(以下:林) 私も常日頃、おふたりのSNSを楽しく拝見していたので、「今日は思いっきり語れる!」とすごくワクワクしています。

沼野チョロ子(以下:チョロ子) ありがとうございます、うれしい!

miko 映画ドラマ沼の住人(以下:miko) よろしくお願いします!

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 さっそくですが、おふたりの韓ドラ歴はどれくらいですか?

miko 初めて観たのは『冬のソナタ』(日本放送は2003年~)ですが、遠ざかっていた期間もあったので……。でも、少なくとも10年以上は追いかけていますね。

チョロ子 私はコロナ禍に観始めたので、4年くらいです。性格的に一度ハマったらとことんなので、ものすごい勢いでチェックしました。

林 今日は、そんな韓ドラ歴の中でおふたりが出会った作品から、各ジャンルのイチオシを教えていただければと思っています。最初は「恋愛&胸キュン部門」のオススメをお伺いできますか?

チョロ子 私がまず選んだのは『九尾の狐とキケンな同居』(2021年)っていう、チャン・ギヨン様の出演作品です。私、ラブコメが好きなんですが、これぞ理想的なラブコメ!って感じで……とにかく最初から最後まで、すべてが完璧なんですよ。甘い瞬間もあれば、ちゃんと試練もあって、そのバランスや見せ方がすごくいいんです。

 ええ~! この作品、知らなかったです。

miko 今すぐに観たほうがいいです!!!! チャン・ギヨン史上、一番といっていいほどカッコいい。

チョロ子 (深くうなずきながら)この作品で、チャン・ギヨンは九尾を持つ狐、つまり人間ではない役を演じているんです。見た目は人間なんですけどね。

そんな彼と、イ・ヘリ演じる大学生の女の子が出会って始まる物語です。九尾を持つ狐としていつか人間になりたいと願い、奮闘するというちょっと変わった設定なんですが、このファンタジー要素も効いてるんですよね。

続いてもうひと作品、チェ・ウシクとキム・ダミの『その年、私たちは』(2021年~)も推したいです。「二度と会いたくない」と思っていた元恋人たちが再び出会うといったストーリーなんですが、作品の見せ方がとにかくシンプル。よけいな要素がなく、ふたりの関係をじっくりと描いてくれるところがよくて。

それから私、ドラマのエピローグ(本編終了後に追加される短い映像で、韓国ドラマでは定番の手法)がすごく好きなんですが、この作品でも、本編では明かされていなかったエピソードが楽しめたりして、そこもいいんです。

 わかります~! まず、主演のおふたりが素晴らしすぎて。

miko そうそう。それまでのチェ・ウシクってコミカルな役どころが多かったけれど、この作品が契機になってイケメン俳優として頭角を現したのかなと思います。

それから、彼とダミちゃんはその前に共演していた『The Witch 魔女』(2018年)では殺し合いをする関係だったのに、本作では一転して恋仲に……というのもおもしろかった!

チョロ子 そういうの、見どころですよね!

 さっそく大盛り上がり(笑)。じゃあ次、私が行かせていただきます。選んだのは『ユミの細胞たち』(2021年~)です。

チョロ子 ああもう、大好きですよ!

miko もはや大好きなのが前提として、登場するふたりの男性のうち「あなたはどっち派?」っていう話ですよね!

 アン・ボヒョン演じるウンか、パク・ジニョン演じるボビー(バビ)か。私は、ウン派です。

miko&チョロ子 (勢いよく挙手して)一緒!

miko 満場一致、珍しい展開。だいたい割れるのに。

 ちょっと恥ずかしいんですが、ジニョン演じるボビーはアプローチの仕方や存在が現実的じゃないですか。だから、観ていて「これはちょっと、リアルによすぎる!」と、それ以上感情移入しないように自制しちゃって(笑)。

一方、アン・ボヒョン演じるウンは少し変わり者で、私の場合はそういうところがドラマの中の人物として心を寄せやすかったのかなと。

miko この作品って、細胞たちがキャラクターとして登場してしゃべったり、アニメーションが使われていたりするんだけど、人間関係や葛藤がすごく現実的に描かれているんですよね。そういうところがよくて、私も今回挙げようと思っていたくらい好きで……(本作に登場するキャラクター“腹ペコ細胞”のぬいぐるみを手に)。

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 ああっ!

チョロ子 最高。私も持ってます(笑)。

 『ユミの細胞たち』仲間と話せて、うれしい……。そんなmikoさんの「恋愛&胸キュン部門」イチオシ、気になります。

miko 私は、一番好きなラブコメといえばコレ!というのがあって。それが『1%の奇跡』です。これは2003年版と2016年版があるんですけど、私はハ・ソクジン主演の後者がとにかく大好きです。

チョロ子 ソクジンオッパ……。

miko そう。私の韓ドラ沼のお友達はこのドラマが好きすぎて、でもハ・ソクジンがなかなか来日してくれないからって、自主的に『1%の奇跡』ファンミーティングを開催したんですよ(笑)。キャストはいなくてファンが集うだけなんですが、Xで参加者を呼びかけたところ、15人くらいが集まって。

 すごい熱量!

miko それくらい、今でも熱狂的な人気のある作品ですね。

チョン・ソミン演じる主人公ダヒョンは小学校の先生で、ある日、校外学習の途中でおじいさんの命を救うんです。そのおじいさんが実は財閥の会長で、後日、ハ・ソクジン演じる孫のジェインに「ダヒョンとの結婚を条件に、すべての財産を譲る」と言い出して、ふたりは大困惑。なんとか交渉した末、6カ月間の期間限定の交際を始めることに……というストーリーで。

私、“契約モノ”が大好きなんです(笑)。終わりがあるという設定で、関係性がどう揺れ動いていくかっていうのがすごくいい。この作品だと、ふたりの立場がまったく違うっていう要素もあるから、回数を覚えていないくらい観返しているけど毎回本当におもしろいです。

チョロ子 拍手しちゃうくらい、プレゼンが完璧。mikoさんは『1%の奇跡』ファンとして有名ですもんね。

miko これで今日、私の役目はほぼ完遂したかなってくらい(笑)。

【泣ける部門】それぞれの立場から家族を思う姿に、涙…

 では続いて、「泣ける部門」のオススメに移りましょう。

miko 韓ドラって泣ける名作が多すぎて悩んだんですが、「最近観た中で一番ティッシュの消費量が多かったのはどれかな?」と考えて思いついたのが、『おつかれさま』(2025年)でした。

 ああ~!!!!

チョロ子 間違いないですね。

miko 一見「重いドラマ?」って思われていそうなんですが、世代を問わずあらゆる視聴者が共感できるポイントのある作品なんですよね。今ちょっと思い返しても泣いちゃいそうなので、あまり深く話せないくらい……(笑)。

主演のIUとパク・ボゴムの演技が素晴らしかったですし、ふたりが年老いてからを演じたムン・ソリとパク・へジュンも本当に素敵で。

チョロ子 子が親を思う気持ち、親が子を思う気持ち、それぞれが描かれているから若者からお年寄りまで楽しめるんですよね。

miko うんうん。もちろん恋愛模様もたっぷり描かれているから、いろんな要素があってね。

それから『私が死ぬ一週間前』(2025年)は、観ている人の数は少ないと思うのですが、本当にオススメ。まずタイトルから泣かせにきているんですが、ファンタジー要素もあればヒューマンドラマのよさもあり、これも泣きましたね。コンミョンとキム・ミンハが主演です。今はまだ有料レンタルしかないのですが、全6話で観やすくもあるので、未見の人はぜひ!

チョロ子 『私が死ぬ一週間前』、すごくよかった……泣かされました(笑)。私も、泣ける韓ドラをオススメさせてください。『ムービング』(2023年)です。

miko わーなるほど! そこ行くんですね。

チョロ子 ヒューマンドラマでもたくさん好きな作品はあるのですが、私はこれで。ジャンルとしては超能力ものではあるものの、根幹にあるのが実は家族ドラマっていうところがミソなんです。

「誰のために、なんのために戦うのか?」という問いに、この作品の登場人物たちは「自分の大切な家族のために」って答えを持っていて。子供のために、親のために、みんながそれぞれの立場から家族を思う姿は、『おつかれさま』にも通じるかもしれません。

 『ムービング』はコメディ要素もあるから、そういう意味でもしっとりしすぎなくて、幅広い人にオススメできそうです。

チョロ子 たしかに! 楽しく笑えて、家族愛で泣ける素晴らしい作品です。

家族の物語でいうと、『輝くウォーターメロン~僕らをつなぐ恋うた~』(2023年)も大好きなんです。耳の聞こえない両親を持つ青年が、ある日、1995年の世界へ行ってしまって……というファンタジーで。

タイムスリップものと聞くと「おや?」と感じるかもしれませんが(笑)、過去へ行った先で青年が出会うのが、彼と同年代のお父さんなんですよ。しかも当時のお父さんはまだ耳が聞こえていて、お母さんとの出会いも目の当たりにして。

親の過去って、子供は知らないことが多いじゃないですか。実はお父さんはこういうことに情熱を傾けてキラキラしていたんだということだったり、お母さんとどう結ばれるかだったり、そういうのを間近に見て何を感じるかという。これはもう、グッときます。

 mikoさんもおっしゃっていたとおり、韓ドラは泣ける作品が多いから、ジャンルも幅広いですよね。ひと口に「家族愛で泣ける作品」といっても、超能力ものだったりタイムスリップものだったりいろいろあるんですね。

続いて、私のイチオシも紹介させてください。『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』(2021年)です。

miko&チョロ子 あれは……よかった……!

 ソン・ガン演じる青年チェロク、パク・イナン演じる元郵便配達員のおじいちゃんドクチュルがふたりでかつての夢をかなえるためクラシックバレエダンサーを目指すというストーリーなのですが、人生経験が豊富な年長者だからこそ伝えられる教訓だったり、与えられる勇気があるなと感じられる作品ですよね。私自身も「人生は一度きり、挑戦してみよう」と背中を押されました。

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また終盤、認知症になったドクチュルに思い出してもらおうと、チェロクが舞うシーンもとにかく美しくて、ボロボロ泣きました。

miko ご老人が出ている作品って、私はちょっと刺さりすぎちゃうことが多くて、逆に敬遠しちゃうんです。この作品もだいぶ寝かせていたのですが、やっと観て、やっぱり胸が締めつけられました。あのラストも素晴らしくて……忘れられないシーンとして心に刻まれましたね。

【人生ドラマ部門】コロナ禍で出会い、日々に彩りを与えてくれた

 それではいよいよ私たちのオールタイムベスト作品、「人生ドラマ部門」を発表していきましょう!

チョロ子 これは選ぶのが難しすぎました!(笑)

miko 選びに選びましたね。被るかな?とも思ったので、私は比較的最近の作品からチョイスしました。『今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~』(2023年)です。

パク・ボヨン演じる看護師が、ある日内科から異動になって精神科で働き始めるのですが、やがてメンタルの不調に陥ってしまって……というかなりシリアスな話。

ただ最後まで観てみると希望が見えるというか、「明けない夜はない」というメッセージが伝えられるんです。内容としても、精神科の事情についてはもちろん、シングルマザーの現実や教育問題、毒親問題、経済格差など、その背景からもたくさんのことが見えてくる骨太な作品になっているんですよね。

重いテーマなのでなかなか手が伸びにくいかと思うのですが、「青龍シリーズアワード」でドラマ最優秀作品賞に輝いたほど高く評価されている一作ですし、なにより視聴者が観終わったあとに自分を見つめたくなるような、そんな気持ちにさせるパワーを持ったドラマなので、多くの人に届いてほしいですね。

チョロ子 私、これ途中で観るのをやめてしまったんですよね。つらくて……。

miko それもすごくわかるなあ。

チョロ子 ただ同時に、本当に素晴らしい作品だということもわかったので、勇気を出してもう一回観てみたいです!

miko あとは、やっぱり『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』(2018年)かな。これはもはや「みんなの人生ドラマ」かなと思ったので、あえて外したんですが。

 ズバリ、私の人生ドラマでもあります。この作品が「みんなの人生ドラマ」たるゆえんって、どんなところなんでしょうかね。

miko “恋愛モノ”にならなかったところだと、私は思います。あのふたりの特別な関係性というか。恋愛ドラマにせずに、ヒューマンストーリーに仕上げたことと、底辺に生きる人々の息苦しくもリアルな生活を描きながら、温かくも思いやりある希望も描かれていて……寂しくも温かいドラマだなと。

 たしかに。完全に理不尽な立場に置かれているIU演じるジアンが、イ・ソンギュン演じるドンフンと出会い、恋愛ではない関係でお互いの共通点を見出して、手を差し伸べ合う。一緒にいて癒やしを得られるんだけど、結局それ以上の幸せを求めるには離れなくてはいけない、というその関係性がこの上なく切ないんですよね。

逃げ場のない孤独感にすごく共感してしまって。観ていてしんどいんですが、そういう虚しい感情って自分だけじゃないのか……とちょっと救われる部分もあったりして、ものすごく深いところに響いてくるドラマなんですよね。

もうひとつ、人生ドラマを挙げるとすれば、私は『ミセン』(2014年)です。

チョロ子 色褪せない名作。

 描かれているのが、会社員の日常っていうのもよくて。そのなかでいろいろな事件が起きて、人々が団結していくわけですが……社員同士って家族や友達ではないけれど、同じ目標に向かって走っているという共通の宿命を持っているじゃないですか。

一緒に悩んで時には憎み合って、何かを成し遂げられたら喜びを分かち合う。ただ同じ会社に入社した、ただそれだけの他人同士なのに、それでも運命をともにひた走っていく……現代社会人のリアルが映し出されているところが共感できるし、観ていてすごく励まされます。実際、仕事でちょっと落ち込むようなことがあったときに観返すドラマですね。

miko たしかに、会社勤めの人の胸を打つ物語ですよね。韓ドラはあまり観ないけど『ミセン』は好きという方も多いみたいです。

 なるほど! そういう意味では、韓ドラの入口にもピッタリなのかも。では最後に、チョロ子さんの人生ドラマを聞かせてください。

チョロ子 私はいろいろ考えた挙句、自分でもちょっと意外なセレクトになって。『わかっていても』(2021年)と『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(2018年)です。

なぜこのふたつになったかというと、「人生ドラマ」っていろんな考え方ができるなと思っていて。もちろんすごく大きな影響を受けたものだったり、忘れられない感動をもらったものという捉え方もできるんですが、私にとっての「人生ドラマ」は、平凡な日常を彩ってくれるような作品なんですよね。

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林&miko ああ~!!

チョロ子 それでまさにコロナ禍、起伏のない日常で出会って、韓ドラの魅力に気づかせてくれたのがこの2作品だったんです。観ているときの「なんだこの楽しさは!」という感覚、その時間がなによりもありがたくて。コロナが落ち着いて普段の生活が戻っても、「帰ったらあれを観よう」と考えて幸せな気持ちにさせてくれる韓ドラが、私は大好きなんです。

 素敵な話。人生を変えた出会いと言っても過言ではないですよね。

チョロ子 本当に。それからやっぱり私は恋愛ドラマが好きなので、この2作品は観ていて「カッコいい~」と夢中にさせてくれるんですよ。あり得そうな話でもあるから、どんどん私も主人公になったような気持ちになるというか。その体験そのものが、この上ない幸せなんですよね。

『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』については、この作品に出てくるジュニ(チョン・へイン)を超える胸キュン男性主人公に、まだ出会えてないなってくらい刺さってて。好きすぎて、もう観返せないくらい。観るとしんどくなるから。

 ええ!?

miko わかります。しんどい!! しんどい!!

チョロ子 でもジュニのことを思うと、今でも幸せになれる。日常の中で、そんな特別なひとときだったり“ひと呼吸”をくれる作品です。

 たしかに、そうですよね。「人生ドラマ」って人生の数だけ捉え方がそれぞれだから、選ぶ基準も違ってくる。それがすごくおもしろいです。想像以上に深い話もお聞きできましたが、おふた方と繰り広げたい“韓ドラ談義”はまだまだあるので、後半戦も引き続きお願いいたします!

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後編では、近年の作品を中心に、韓国ドラマの最新トピックを語ります。何年経っても、韓ドラに魅了される理由とは?

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文=菅原史稀 編集=高橋千里

林 美桜のK-POP沼ガール