女優・髙石あかりの人生を変えた映画『ベイビーわるきゅーれ』
#14 髙石あかり(前編)
旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。
髙石あかり(たかいし・あかり)。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、舞台や数々のテレビドラマへの出演を重ねている。初主演を果たした映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)がヒット。現在、続編となる映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)や『わたしの幸せな結婚』(2023年)が公開中。まずは、来歴を伺うところから……。
「focus on!ネクストガール」
今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。
12歳、沖縄の海で映画デビュー
──最近、目にする機会がすごく多くなっている髙石あかりさんですが、初めにデビューのきっかけをお伺いできればと。
髙石 はい、保育園のころから女優さんになりたいと言っていました。小学3年生くらいからダンスを習っていたのですが、そのスクールでエイベックスのオーディションを知り、受けたことがきっかけです。
──事務所へ入って、最初はどうでした?
髙石 レッスンの日々でした。最初はモデル部門に所属し、ウォーキングレッスンなどを重ねながらの毎日でした。
──自分の目指す方向性としては?
髙石 やっぱり、小さいころから女優さんになりたいというのが夢だったので、その思いはずっとあったと思います。
──そのころから女優さんに……事務所での、一番最初の仕事はなんですか?
髙石 私が12歳のときに出演した『島々清しゃ』(2017年)という映画です。1カ月間、沖縄へ行ったのですが、初めての仕事から、共演者の安藤サクラさんたちと、すごく貴重な経験をさせてもらえたと、改めて思います。
──そのときの記憶に残っているエピソードは何かあります?
髙石 撮影が夏で、みんなで海で遊んでいたんです。そこへ撮影が終わった安藤さんが「……何してるの?」って、普通に話しに来てくださって。私たちは「海で遊んでまーす!」と答えて、そのまま遊んでいたんですけど、やってきた安藤さんも、そのままバシャーン!と(笑)私たちも、もう「ええーっ!?」みたいな感じで……本当にパワフルな方でした。
──勢いで……(笑)。
髙石 はい、安藤さん自ら「私もー!!」みたいな感じで、服を着たまま(笑)。
──その後、安藤サクラさんとは?
髙石 今もたまにSNSを通して連絡をいただいたりしています。
──安藤サクラさんもだとは思いますが、憧れている女優さん、目指している女優さんは、いらっしゃいます?
髙石 安藤サクラさんはもちろんですけど、宮崎あおいさんや蒼井優さん。事務所へ入る前は、ドラマの『花より男子』(TBS/2005年)に憧れて(役の“牧野つくし”というより)井上真央さんになりたいと言っていたみたいです(笑)。
──なるほど。『花より男子』以外にも、よく観ていた作品や好きな作品はありますか?
髙石 なんだろう……映画好きなマネージャーさんに作品を薦められて、観に行ったら本当におもしろかったりとか。今まさに、好きになる作品がいろいろと出てきている状態です。
──……最近では?
髙石 『サバカンSABAKAN 』(2022年)です。日常を描くような映画はあまり観てこなかったんですけど、マネージャーさんに薦められて観たら、新しい道が開けたような感覚があって。インド映画の『RRR』(2022年)もそうですけど、すごく新しい道を開かせてもらっています(笑)……あと、最近だと『最強のふたり』(2011年)も!
──『最強のふたり』……両方ありますよね? オリジナルとリメイクと。
髙石 オリジナルのほうを観ました。ずっと借りてみたかったんですけど、作品のパッケージが素敵すぎて大切な日に観ようって思っていて。ずっとその大切な日が来るのを待っていたら、あれ? いつ来るんだろうとなって……普通に借りました(笑)。
──大切な日を待たずに「借りちゃえ!」と(笑)。
髙石 はい(笑)。
──ご覧になっていかがでしたか?
髙石 めちゃくちゃおもしろかったです。私、自分ではけっこうシリアスめな作品が好きだと思っていたんですけど、心温まるような作品も好きなんだなということを知りました。
人生を変えた『ベイビーわるきゅーれ』
──たしかに『最強のふたり』って、最後はハートフルな感じですよね。次はご自身の出演作品に関する質問なのですが、女優をやってきたなかで、一番印象に残っている作品はなんですか?
髙石 『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)です! 人生を変えてもらった作品だなと思っています。
──今、2作目を公開していますが、1作目の話が来たときはどうでした?
髙石 『ベイビーわるきゅーれ』の前に『ある用務員』(2021年)という作品で、阪元裕吾監督と伊澤彩織さんと初めてお仕事をさせてもらって。その撮影中に……そのときは“リカ”(髙石)と“シホ”(伊澤)なんですけど、このふたりの話の作品があったらおもしろいかも!というのを、監督含め3人で楽しく話していたんです。そうしたら、まさかの現実になって。役としては“リカ”と“シホ”ではないですけど、またふたりのキャラを演じさせてもらえる。阪元監督ですし、バディも伊澤さんでというのがうれしかったですね。すごく楽しみでした!
──“リカ”と“シホ”、そうなんですね! てっきり……実は、この企画で芋生悠さんにインタビューしたとき『ある用務員』の話が出て、そのときすでに『ベイビーわるきゅーれ』は観ていたんですけど。インタビュー後に『ある用務員』を観て、ここにも(『ベイビーわるきゅーれ』の“ちさと”と“まひろ”が)出ていたんだ!と思っていたんです。役名は違っていたんですね! 気づきませんでした。
髙石 意外と勘違いされている方が(笑)。
──なるほど、そういうことなんですね。
髙石 はい、“リカ”と“シホ”の撮影中の、伊澤さんと私の素の部分を見て、監督があて書きしてくださったのが『ベイビーわるきゅーれ』の“ちさと”と“まひろ”になっています。
──アクションシーンはどうでした?
髙石 それまでガンアクションの経験は、ほとんどなくて。『ある用務員』の撮影で初めて触ったんですけど、そのときはあまり使いこなせない役だったので、ただただ(銃を)ぶっ放すみたいな。『ベイビーわるきゅーれ』では、殺し屋として銃を使いこなせる役どころだったので、そういう意味ではそのときが初めてに近かったなと思います。
──『ベイビーわるきゅーれ』がロングランヒットして、どうでした?
髙石 (ロングランヒットが)もう不思議で……怖さまであるような感覚。想像もしていなかったというか。ずっと、自分たちの映画じゃないような感覚で。でもコメントを検索したりすると、多くの方がふたりに共感していたりとか。それを見て、やっぱり阪元監督の脚本ってすごいんだなというのを感じましたし、監督はどこまで見えていたんだろうというか……本当にすごいなと思いました。もう、ただただうれしくてうれしくて仕方がない。
──監督は、あて書きに近い書き方をしていたんですよね?
髙石 はい。『ある用務員』の撮影中に、伊澤さんが何度も何度も「私これ大丈夫でしたかね?」と、監督に……伊澤さんが演じていた“シホ”という役はしっかり者だったんですけど、実際には「大丈夫ですか?」と聞いちゃう、そういう(地の)部分を見て、それを『ベイビーわるきゅーれ』の“まひろ”に落とし込んだみたいです。私の場合は、真顔で銃の練習をしていたのを見て、意外とローな部分があるみたいなところを、たぶん“ちさと”のちょっと俯瞰しているようなキャラとしてつけ足してくださったんです。
“バディトーク”の作り方
──リアルな反響を感じて、さらに2作目の『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)の話が来たときは、どうでした?
髙石 ……来たかと(笑)。『ある用務員』のときもそうですし『ベイビーわるきゅーれ』の撮影中も、「2」があったらこんなことがしたいねとか、「3」があったら「4」があったら……というのを、監督から聞くのがすごく楽しい時間だったんです。それが現実になって。『ベイビーわるきゅーれ』をやりきって、多くの方から続編を観たいという声をいただいて本当に続編ができたらどうなるんだろう?と思っていたら、まさかの本当に……感謝しかないですね、すべての人に。この撮影に携わってくれたスタッフの方たち、監督、観てくださっている皆さんあっての『ベイビーわるきゅーれ』なので。『ベイビーわるきゅーれ』って何回も何回も観てくださる方が本当に多くて。支えてもらっているよなあと思っていて、早く「2」の制作を伝えたいなと思っていました。
──「2」の現場に入ったとき、伊澤さんとはすぐに「1」の空気に戻れた感じでした?
髙石 一瞬でした! 「2」の台本をいただいて。読んでいるときから“まひろ”のセリフがもう、全部伊澤さんの声で流れてくるようになっていて……それに、監督の意図もすごくわかるし。たぶんこうやって言ってほしいんだろうとか、こういうテンポ感かなというのが。ただの台本ではなく、全部色がついている状態に見えるような感覚でした。それが「2」ならではというか、続編ってこういうことなのかな?というのがすごく不思議な感覚で。最初、ホン読みをするとき、「1」をやった17歳のときは感覚でお芝居をやっていたので、感覚でやっていたものをどうやって掘り起こしたらいいんだと思って、少し不安もあったんです。でも伊澤さんとホン読みをしたときに「これだ!」という、落ち着ける場所がすぐに見つかった。懐かしさというか……「ああこれだこれだ、これをやれるんだ!」というのが。もう一瞬でした。
──方法論なんかなくても、すぐに感覚で……。
髙石 もう、すぐに!……行きのロケバスでなんですけど、セリフの量がとにかく多いので、ふたりでずーっとセリフをさらっていたんです。セリフをさらっているのに、途中で脱線して、役のまま違う話になり……そのままの流れで(笑)。役と人間が、もう一緒になっているような感覚で。
──「2」では「1」のときよりもふたりのバディトークが増えていて。あれは、どこまでがホン(脚本)で、どれくらいがアドリブなんですか?
髙石 9割はホンですね。アドリブは、あるかな?というくらいな感じです。
──アドリブは、ほとんどない?
髙石 ないですね。伊澤さんが、アドリブを持ってきてくださるときがあって。それを監督と話して、そのまま使われたりとかもあるんですけど。たとえば、映画の後半であるワードが出るシーンがあるんですけど、そのシーンは、撮休のときに伊澤さんの家へ行ってふたりでだらだらしゃべっていた内容を現場へ持っていきました。
──なるほど(笑)。
髙石 伊澤さんから「あのさ、こうこうこうこうこうっていうのあるじゃん!」って言われて、私は何を言われているか、よくわからない。でもとりあえず「それを持っていきますか」と言って、そのまま現場へ持っていく。
──あのテンポ感はそこから……。
髙石 バトルのラストシーンもそうです。前日に監督から「あそこはアドリブで」と言われて、当日、現場でみんなで考えました。
──ほかに『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』の撮影中の印象的なエピソードはありますか?
髙石 「1」ではなかった、アフレコですね。“ちさと”が“まひろ”に対して「ハンバーガー2枚重ねたらチーズバーガーになるんだよっていうメンズいるよね」みたいなことを話すシーンは、全部アフレコだったんですよ。そのアフレコの作業が楽しくて。 それと“ちさと”が賭け将棋を指すシーンがあるんですけど、あのシーンも全部アフレコで。セリフに書かれていたことを崩して話したので、アフレコ前に、まずは書き起こすところから始まって……「これ、自分は何を言っているんだろう?」みたいな。現場では、普通に言っていたはずなのに、聞き直すと「もう! 本当にセリフどおりしゃべってよ!」みたいな気持ちになって(笑)。その作業がすごくおもしろくて、それでいて、めちゃくちゃ難しかったなと(笑)。
※宮崎あおいの崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=高良まどか 編集=中野 潤
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髙石あかり(たかいし・あかり)
2002年12月19日生まれ。宮崎県出身。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、舞台や数々のテレビドラマへの出演を重ねている。初主演を果たした映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)がヒット。ドラマ『生き残った6人によると』(MBS/2022年)、舞台『鬼滅の刃』(2020年)、映画『わたしの幸せな結婚』(2023年)など、数々の映画やドラマへの出演を重ね、現在、ヒロインを務めるドラマ『墜落JKと廃人教師』(MBS/2023年)が放送されており、主演を務める映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』も公開中。