金曜22時、“友達”への電話。恋愛にキレ散らかした夜 in 飯田橋(野花紅葉)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」
「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。
野花紅葉(のはな・もみじ)
1997年10月20日生まれ、東京都出身。AOI biotope所属。個人演劇ユニット「モミジノハナ」主宰。恋愛がテーマの「会話にならない会話劇」を上演するユニットで、すべての作品で脚本・演出・出演をする。劇作家や舞台女優としての演劇活動のほかに、オンラインエッセイの毎日更新やTikTokショートドラマへの脚本提供など、活動の幅を広げている。
Twitter:https://twitter.com/momiji__44
劇団ホームページ:https://momijinohana.jimdofree.com
オンラインエッセイ(note):https://note.com/momijinohana/
はじめまして(おひさしぶりです)。野花紅葉です。
わたしは劇作家をやっている25歳で、高校1年生で初めて演劇の台本を書いてから今に至るまで、すべての作品で「恋愛ってなんなの!?」とキレ散らかしている女です。
ゆえに、わたしの「忘れられない一夜」はもちろん「恋愛ってなんなの!?」とキレ散らかした夜。でもそんな夜には覚えがありすぎるから、最新のキレ散らかしの話をします。
友達から恋人に発展するっていうアレ、嘘だと思ってて。
いや、「あるらしい」ということはさすがに知っていたのだけども、それでも自分の人生にないことって、なんていうか「らしい」のレベルから脱しづらいじゃないですか。
今までとってもたくさん恋愛をしてきたわけではないけど、してきた恋愛は全部めっちゃ全力だったし、全然めっちゃ好きだったと思うのです。余裕で。当たり前に。
その前提でわたしは、恋愛や性愛の対象となる人とならない人が、する人としない人が、ガッツリ分かれていたのですね。分かれていたというか、分けていたというか、分けたがっていたというか。
女の子は覚えがある人多いんじゃないかなぁ。
あの、あー、お前は口説くためにわたしと話してたんですねっていう、裸体の入手のためにがんばってたんですねっていう、わたし、人間だと思われてなかったんですねっていう、じゃあ、わたしが人間だと思ってテメエに使った頭とか紡いだ言葉とか尽くした心とかなんだったんですかね、っていう。
そういう気持ちってマジで永遠になりたくないからさ。
それへの対策をしたいというマインドから生み出されたのが、「友達は友達。絶対に恋愛・性愛の対象にしない」と「絶対に友達ではないし友達にはならない。恋愛・性愛の対象」を、はっきり分けてきっちり死守し続けるっていう、自分のスタンスを提示することによる自己防衛で、なんなら相手への誠実な態度ですらあると思って生きてたんです。
わたしは。
生きてたんですけど。
友達がいて。
立派なのに嫌味がなくて、温和なのに鋭くて、あらゆる物事をなるべく見ようと努めているような。わたしにとって彼の性別は恋愛・性愛の対象になり得るけども、さっき書いたようなスタンスのわたしは、マジのマジでスーパー最高な友達であると認識していたんです。
してたんですけど。
最新の話をしよう。
やーーー、これ、そうじゃなくねえ?って。気づいて。金曜夜22時の飯田橋で。
ちょっと「友達は友達」と言い張るには別の色が混じりまくってることが無視できないし、てかなんか、言い張るの、なぜだか寂しい気がするし。でもでも「間違いなく友達でもある」のよね。全然めっちゃ友達として交流し続けたいもん! 余裕で! 当たり前に!
と、大混乱したわたし in 飯田橋。
実はその人と一緒にいたわけじゃなくて、これまた最高な爆イケガールの友達に「恋愛ってなんなの!?」って話をしている最中で、しかもワインが2本空いていました。
ワインが、2本、空いていたんですね。
「電話すれば? 今」
お酒のせいで真っ赤な顔の爆イケガールが、お酒・混乱・照れ・その他いろいろのせいで、真っ赤な顔のわたしに。
「するわ」
しました。出ました。びっくりしました。
「びっくりしました」
するよね、そりゃあ。これはすべてをわたしがブチまけたあとの、彼の言葉です。
今までとってもたくさん恋愛をしてきたわけではないけど、それに、こうあるべきとかけっして思っているわけではないけど、それでもやっぱり、告白されたいとか追われたいとか思っちゃう、てか憧れちゃう。
だからこれまでわたし、決定的なことというのを自分からしないようにしてきてて。いや、客観的に見たらほとんど告ってんだけどさ、ギリギリのキワキワを攻める、攻めたい、攻めてるつもりっていう。急にダサい話をしてすみません。
でも、もう、この夜のわたしはダメでした。言いました。完全に、全部を。
「ここは飯田橋で、爆イケガールの友達と飲んでいて、あ、ワイン2本くらい空いてるんですけど、で、ちょっと好きかもしれないなって話になって、でも友達じゃないですか、わたしたち。わたしも友達だと思ってるしあなたのこと、でも、間違いなくそうなんですけど、間違いなくそれだけじゃなくて。いやでも、こんなこと初めてで自分でもよくわかってないっていうか、わからないまま電話しちゃって本当アレなんですけど、ていうかどう思ってるんでしょうかそちらは、キモいですか? キモいですよね、でもキライにはならないでほしくて、好きなので。いやぁ好きっていうか、ていうか、ていうか……」
セリフみたいだ、と思うのは、わたしが劇作家だからでしょうか。
たしかにわたしの作品ではクライマックスに女が男にこういうことを大声でブチまけるし、金曜22時のわたしは接続詞の使い方くらいしか違わないレベルで、これをたしかにブチまけました。
「ていうか……恋愛ってなんなの!?」
なんで怒ってるんだろう、わたし。電話口でも怒ってたけど。
「……問いだけがあります」
あるよね、問い。恋愛ってなんなんだろう。これはすべてをわたしがブチまけたあとの、彼の言葉“その2”です。
これがわたしの、忘れられない一夜、最新版。
あくまで「一夜」の話なので、その後については書きません。ていうか書けません、相手が居ることなので……
あ、あ、待って。でも最後にひとつ。
「野花さんと付き合ったら演劇にされちゃうんですか?」と言われました(彼の言葉“その3”)。10年近く恋愛のことだけを演劇にしているわたしは、そりゃあもう自分の恋愛のことを演劇にしてきましたが、なんていうか、「それバレてんだ」と思ってウケてしまいました。
次回公演の予定が立っていないので(泣)その問いについてはなんとも言えないのですが、ただ、logirlさんへ寄稿するエッセイにはなりました。ありがとうございました。そして何より、ここまで読んでくださったlogirl読者のみなさま、ありがとうございました。
またいつかどこかで、恋バナをしましょうね。飯田橋以外で!
文・撮影=野花紅葉 編集=宇田川佳奈枝