気鋭の女優・鳴海唯──『なつぞら』でデビューし『あんぱん』に出演。朝ドラへかける想い

focus on!ネクストガール

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#21 鳴海 唯(前編)

旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。

鳴海唯(なるみ・ゆい)。2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』で、テレビドラマ初出演を果たす。2021年『偽りのないhappy end』で映画初主演。その後、大河ドラマ『どうする家康』(2023年/NHK)、ドラマ『Eye Love You』(2024年/TBS)、映画『赤羽骨子のボディーガード』(2024年)、ドラマ『七夕の国』(2024年/ディズニープラス)などへの出演を重ね、今夏、NHK連続テレビ小説『あんぱん』に、今田美桜演じる若松のぶの同僚「琴子」役として出演。

憧れが生まれたのは11歳──行動に移したのは19歳

──まずは、デビューのきっかけからお伺いできればと……。

鳴海 小学校のときにドラマ『のだめカンタービレ』(2007年/フジテレビ)を観て女優という職業を知って、私もこういうお仕事をしてみたいと思ったんです。ただ、そこから10年くらいは行動に移さずにいて、気がついたら大人になっていました。

11歳くらいのときに憧れが生まれて、実際に行動に移したのは19歳のとき。映画『ちはやふる―結び―』(2018年/東宝)のエキストラに参加させていただいたのがきっかけですね。そこで「やっぱりこのままでは後悔する」と思って、大学を辞めて養成所に入ろう!と決めて、東京に出てきました。

──なるほど。大学を辞めるという決断は、かなり大きなハードルだったのではないですか?

鳴海 本当に親不孝なことをしてしまったなと思ってはいます。入ってすぐに辞めてしまったので……。

でも、この思いは今に始まったことではなくて、11歳のころからずっと心の中で沸々と、くすぶっていたんです。それが『ちはやふる』への参加をきっかけに、もう抑えきれないほどあふれてしまって……居ても立ってもいられなくなって、行動に移すしかありませんでした。

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──なるほど。最初のお仕事はなんでしたか?

鳴海 たしか最初は、ミュージックビデオだったと思います。セリフはなかったんですけど、初めてカメラの前に立たせてもらったとき、「どこを見ればいいのかわからない」と思いました。カメラが目の前にあるのに、「カメラを見ないでください」と言われて……「どういうことだろう?」と、そんなことを考えながら撮影に臨んでいました。

カメラを向けられる緊張感や、メイクをしてもらうことへの違和感など、すべてが新鮮で、そうしたフレッシュな感覚をそのまま受け止めながら撮影に臨んでいた記憶があります。

──セリフのあるお仕事の最初の印象はどうでしたか?

鳴海 その当時は、役づくりがどういうものかということすらわかっていなくて……いただいた台本をただ覚えて、それを一生懸命カメラの前で演じるということで精いっぱいだったような気がします。それでも「お芝居って楽しいな」と思えたことは、今でも覚えています。

結果的に作品として最初にメディアに出たのは『なつぞら』(2019年/NHK)なんですけど、実はその前に撮影した初めての作品があったんです。その作品で出会った仲間たちとは今でも会いますし、自分にとっては本当に大切な出会いでした。

一番最初に行った現場で出会った友達が今でもがんばっている姿を見ると勇気づけられるし、自分も「がんばろう」と思わせてもらえるんです。今もよくご飯に行って、思い出話をしたりしています。

──それはどなたですか?

鳴海 配信ドラマ『妖怪人間ベラ〜Episode0〜』(2020年)という作品でご一緒した、北原帆夏ちゃんと横田愛佳ちゃんです。1年に1回は集まって、近況報告をしています。

それと別の現場でも、大友花恋ちゃんや森田想ちゃんと再会する機会があって、彼女たちとも『ベラ』で一緒だったんですよ。そうやって初めての作品で出会った人たちと、現場でまた会えるのはすごくうれしいです。最近も(森田)想ちゃんと現場でお会いしたので、そのことを伝えたりしました。

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『なつぞら』出演で、街中でも声をかけられるように

──映像として世に出たのは『なつぞら』が先になったとのことですが、ご自身で試写などで初めて観た出演映像作品も『なつぞら』だったんですか?

鳴海 そうですね。自分自身が出演した作品を最初に観たのは『なつぞら』でした。

──『なつぞら』の出演は、オーディションだったんですか?

鳴海 はい。オーディションです。

──そのオーディションの印象はいかがでしたか?

鳴海 まず、「受けさせてもらえるチャンスがあるんだ」と驚いたのを覚えています。当時は、本当に受かるなんて思っていませんでした。

友達に家に泊まりに来てもらって、夜遅くまで相手役を手伝ってもらったりして……今までで一番時間をかけて取り組んだオーディションでした。本当に一生懸命だったと思います。

──実際に受けてみてどうでしたか?

鳴海 自分自身の手応えは特に感じなかったんですけど……当時、ドラマや映画で観ていた女優さんたちが目の前にいらっしゃって、そんな体験も初めてで。オーディションとはいえ、そういった方々とお芝居ができたことがすごくうれしかったです。「楽しかったなー」と思いながら(オーディション会場の)NHK放送センターから帰った記憶がありますね。

──『ちはやふる』ではエキストラというかたちで共演した広瀬すずさんと、今度は別のかたちでお会いしたわけですが、どんな気持ちでしたか?

鳴海 そうですね。高校生のころの自分に教えてあげたいくらい……本当に夢みたいな瞬間でした。

『なつぞら』を経て感じた、スクリーンやテレビの外から観ていた憧れの方々と共演させていただく喜びみたいなものを、それこそ『なつぞら』以降、たくさん経験させていただくことになるんですけど、たぶんその最初の体験ですね。

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──よく朝ドラに出演すると、街中で声をかけられるようになるって聞くんですけど……実際どうでしたか?

鳴海 『なつぞら』での出演は本当にちょっとだけだったので、そこまで声をかけられることはなかったです。でも、地方で仕事をしていると、「明美(役名)ちゃんだよね?」と声をかけていただくこともあって、朝ドラの影響力って本当にすごいなって、改めて感じました。あのドラマをどれだけの人が楽しみにしているのかが、実感できた瞬間でしたね。

──映像作品に出演するようになってからの、身近な人や友人からの反応はどんな感じでしたか?

鳴海 父はもう、私が映ってさえいればなんでもうれしいっていう感じで(笑)。どんな作品に出ても喜んでくれるんですけど、特にNHKの作品だとすごく楽しんで観てくれている印象があります。だからNHKの作品に出ると、親孝行がまたひとつできた!っていう気持ちになるんですよね。

そういう意味では今回、『あんぱん』に出演できたことも、おばあちゃんや親にちょっとでも孝行できたかな、という気持ちになりました。

共演者とのチームワークで臨んだ『あんぱん』

──その『あんぱん』ですが、撮影現場で何か印象に残ったことはありました?

鳴海 そうですね、『あんぱん』の1週間は、まず月曜日にリハーサルをして、火曜日から金曜日は、だいたい朝8時くらいから撮影が始まるんです。毎日NHKに通って撮影をするという流れが、ほかのドラマとは全然違っていて。

普段は時間も毎日バラバラだし、行く場所も変わるんですけど、朝ドラの撮影はルーティンがしっかり決まっていて、それがすごく身体に染みついた感じでした。その感じがすごく不思議で……ああ、これが朝ドラに出演しているっていうことなんだなと思いながら、撮影をしていました。

普段は作品が終わってもそこまで寂しくなるタイプじゃないんですけど、『あんぱん』は参加期間が3週間と短かったものの、毎日同じ現場に通っていたので、終わったときにはすごく寂しくて……。あのルーティンがなくなるのが寂しいな、と。

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──『あんぱん』での役づくりで、特に意識したことはありますか?

鳴海 私が演じる琴子のキャラクターは、一見すごく明るいんですけど、脚本を読んだときにすごく魅力的だなと思ったのと同時に、彼女がどうして明るく振る舞っているのか……その背景が気になったんです。だから、ただ明るいだけじゃなくて、なぜそう振る舞っているのかを丁寧に掘り下げていくことで、もっと人間らしい深みのあるキャラクターにできるんじゃないかと思って……一番そこを意識して向き合いました。ただ明るいキャラクターというだけで終わらせないようにする点には、すごく気をつけましたね。

あとは、やっぱり土佐弁が難しかったんですよね。普段セリフを覚えるときは、単に言葉を覚えるだけなんですけど、今回は「言葉」も「音」も覚えなきゃいけなくて、いつも以上に……覚えるまで2倍くらいの時間がかかりました。すごくハードルは高かったんですけど、この作品に出ている方はみんな同じ経験をしていると思うので、「大変なのは自分だけじゃない!」と思えて、それを励みにがんばれた気がします。

──共演者の今田美桜さんや津田健次郎さんらとは、現場でどんな感じの……。

鳴海 私が参加した『高知新報』でのパートは、北村匠海さん、今田さん、津田さん、倉悠貴さん、そして私の5人で、基本的に物語が進んでいくんです。現場では今田さんと北村さんがよく前室にいらっしゃって、自然とコミュニケーションも生まれて、いろんな話をしました。

芝居の話ももちろんしましたけど、全然関係ない話もたくさんしましたね。特にご飯の話題が多くて、「今日は何を食べようかな」とか、メニューを見ながら「このデリバリーがおすすめだよ」とか(笑)。

そういう日常的なやりとりを通じて、自然と仲よくなっていった感じですね。だから撮影が進むにつれて、チーム感みたいなものが、どんどん強くなっていきました。もちろん、それぞれの撮影日は違っていたりして完全に一緒に動いていたわけじゃないんですけど、前室の空気みたいなものは、きっと画面にも映っている瞬間があると思います。

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取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=丸林彩花 編集=中野 潤

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鳴海 唯(なるみ・ゆい)

1998年5月16日生まれ。兵庫県出身。2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』で、テレビドラマ初出演を果たす。2021年『偽りのないhappy end』で映画初主演。その後、テレビCMや大河ドラマ『どうする家康』(2023年/NHK)、ドラマ『Eye Love You』(2024年/TBS)、映画『赤羽骨子のボディーガード』(2024年)、ドラマ『七夕の国』(2024年/ディズニープラス)などへの出演を重ねる。2023年には写真集『Sugarless』を発売。今夏、NHK連続テレビ小説『あんぱん』に、今田美桜演じる若松のぶの同僚「琴子」役として出演。

▼『logirl』でマンガ連載(『テレビドラマのつくり方』)をしている、『妖怪人間ベラ〜Episode0〜』で監督を務めた筧昌也さんへのコメントを求めると「筧さん、私が新しい作品に出るたびに連絡をくださるんですよ。またご一緒したいです!と言っているものの、なかなかタイミングが合わなくて……がんばっていれば、きっとまたすぐに作品でお会いできると思うので、これからもよろしくお願いします!」

【インタビュー後編】

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