悔しくてノートに怒りをぶつけた、いろいろな感情が交錯する夜(箭内夢菜)

エッセイアンソロジー「Night Piece」

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エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」
「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。

箭内夢菜

箭内夢菜(やない・ゆめな)
2000年6月21日生まれ、福島県出身。2017年8月、「ミスセブンティーン2017」でグランプリを受賞し、雑誌『Seventeen』の専属モデルとしてデビュー。2018年、ドラマ『チア☆ダン』(TBS)でドラマ初出演、2019年には映画『雪の華』で映画初出演を果たす。以降、ドラマ『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS・TBS)『マイ・セカンド・アオハル』(TBS)などに出演。また、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)の「出川ガールズ」としても活躍。
Instagram @ yumenayanai_official

「夜」

私にとっては“敵”のようにも感じる。

普段は前向きでポジティブな私を、
ネガティブに変えてしまうような気がするから。

なぜなのだろう。
「夜」の自分は自分自身でも理解ができないほど、いろいろな感情が入り交じる。

私自身が矛盾する。

そんな「夜」ばかりだ。

箭内夢菜写真2

私は毎日、無意識にひとりで反省会をしてしまう。

今日はうまく発言できなかったな……
あのタイミングでこう言っとけばよかったな……
あの人に嫌われていないかな……
うまくみんなの輪に入れてなかったな……
もっとああすればよかった。
もっとこうすればよかった。
でも、今日これを言えたからスッキリした!
自分の気持ちはやっぱり素直に言うようにしよう!
みんなに褒めてもらえたのうれしかったな〜。
今日のお昼ご飯おいしかったな〜。

浮き沈みが激しいとは、私のことをいうのだと思う。

そして時々、そんなことを考えているうちに、どんどん考え事のスケールが大きくなっていく。

自分は、人生を生きていく上で何をしたいんだろう。
今の現状に満足しているのかな。
将来、自分はどうなりたいのかな。
人生においての優先順位ってなんだろう。
もしも明日地球が滅びるってなっても、後悔しないかな。

もう、キリがない。

21歳の夏、とある夜

いつものように反省会をしていた。

この何気ない、何か嫌なことがあったわけでもない日に、私は突然爆発した。

なぜか「怒り」が強かった。

でも、この怒りをどこにぶつければいいのかわからず、私は無我夢中で、ひたすらノートに自分の思いを殴り書きした。
その筆圧は、紙を破く勢いだった。

「思うままに、直感でやりたいことをやればいいものを、なぜこんなにもいろいろな思考が入るんだろう。言葉を選びすぎて、結局何を言いたいのかわからなくなってしまう。質問されたことから脱線してしまう。

そして結局伝わらない。

これはどうしたら改善できるの?

私の頭の中のことを代弁してくれる小人でもいればいいのに。

自分がどうしたいのかも理解できていない。
どうしたいのかくらい、自分で決められるようになってくれ……。

人に合わせることばかりじゃなく、
自分の思いを話さないとどんどんおかしくなるぞ。

はぁ、何も考えたくない。

何にも追われたくない。

自分から逃げたい。

自分にもいいところはたくさんあるんだから。
自分に甘いのを乗り越えればもっとできるはず。

支えてくれる人、アドバイスをくれる人、怒ってくれる人、背中を押してくれる人は幸せなことにたくさんいるんだから。
逃げずに自分自身が自分のことを支えてあげたい。認めてあげたい」

そんな内容だった。
自分がわからなくて、ムカついて、悔しくて、涙でぐしゃぐしゃになりながら書いた。

私は「言葉」をうまく人に伝えることが苦手で、とてもとても時間がかかる。

心で思っていること。
自分の意思、意見。

これがスパッと言えるようになったら、どんなに楽だろうか。

声にできない悩みが少しずつ溜まっていって、キャパオーバーになってしまったんだと思う。

Unknown

まだ芸能界に入りたてで、この世界の難しさと厳しさに耐えることで必死だった17歳のころ、

「何があっても、どんな状況でも、笑顔でいないといけない仕事を、夢菜はしているんだよ。だから、家族に何かあってもテレビの前では笑顔でいなさい。それがプロだからね」

と、母から教わったこの言葉を、私はふと思い出した。

17歳のころは、なんでそんなことを言うの?
と、その言葉の重みを感じることはできていなかったが、21歳の私は、その言葉で何度も立ち直ることができていた。

私はこの仕事が好きだし、いくつになってもやっていたい。

そう思える仕事に出会えたことは本当にありがたいことだし、今まで続けられているのもまわりの人が支えてくれているから。
見てくれている人がいるから。

 

そう思うと、少し涙が落ち着いた。

 

そして私は肩に力を入れず、楽にこの世界で生きていく方法を考えた。

職場での自分、ひとりのときの自分
家族の前での自分、友達の前での自分

このいろいろな自分を、使い分けることができたらいいのではないか。

でも、これってもしかしたら今まで意識していなかっただけで、普段からしていることなのではないかな。

そうも思えた。

よし、これから意識してみよう。
まずは、身近なところから。

と、いろいろなタイプの「自分」を使い分けてみると、
本当に少し楽になった気がした。

私は、出会う人、一人ひとりにいい顔をしようとしすぎていたんだ。

いろいろな自分も、結局は私自身の中に存在するものだから。
偽りでもなんでもない。
もっと気楽に「楽しむ」ようにしてみよう、そう思い、実践できたとき、頭が軽くなった気がした。

前よりも人と話せるようになった。

箭内夢菜写真3

あの日

たくさん泣いてたくさん考えて、自分の中のモヤモヤと葛藤して、でも自分は嫌いになりたくなくて、いろいろな感情が交互にあふれてこぼれた夜。

つらかったけど、いい気づきになった。
ある意味、自分を知り、向き合えたいい夜だった。

 

きっとこの先も悩み、小さな細かい分かれ道を迷い続けて生きていくと思うけど、
ネガティブになりがちな「夜」も自分と向き合い、守ってあげられる時間にしてあげようと思う。

文・写真=箭内夢菜 編集=宇田川佳奈枝

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