2013年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
  • mixiチェック

第9回

投稿日:2013年06月12日 21:50

sttl

あ、どうも、横山恵一です。実は僕、つい先日までは「どうも」なんて呑気な挨拶をしてる場合じゃなかったんですよ。この数日、うっかり靴下を履こうとして手にはめてしまったり、ネクタイを着けようとして肩から斜め掛けにしてしまったりするくらい、気が動転しちゃってて…。というのも、糸村さんが金子管理官から、三枝達也をみすみす拳銃自殺させてしまった責任を負わされた直後、消えちゃったんですよ! もちろん、糸村さんが悪いんじゃないですよ。あの人が捜査本部への報告は後回しで、思い付くままに行動するのは昔っからですからね。糸村さんの行動パターンは僕、イヤってほど知り尽くしてます。それに、三枝から岡野太一殺しの自白電話を受けた糸村さんが、すぐに動いたから、遺体も早い段階で見つかったわけですよ。むしろ、すごい貢献してますよね!

 

もちろん、その後すぐ、糸村さんは僕が見つけました。僕がにらんだ通り、糸村さんは三枝の遺体発見現場にいたんですけど、他殺の線を疑ってたみたいなんですよ。で、皆さんのご想像通り、その証拠捜しに僕も付き合わされてしまったんです。そしたら…ありましたよ、糸村さ~ん! 三枝の死因となった銃弾とは別の、もうひとつの銃弾が!! そう、三枝は何者かに撃たれて死亡。その後、犯人が三枝の手に硝煙反応を残すため、その手に拳銃を握らせて発砲した…というのが真実だったわけです。やりましたね、糸村さんっ!

IMG_1002

でも、三枝が自殺だと発表してしまった金子管理官は、再捜査を完全否定。糸村さんから警察バッジを取り上げて、1カ月の謹慎処分を言い渡してしまったんです。そりゃ、僕の気も動転しますって! でも、僕が離れてた間に、糸村さん、なんだかんだ言って月島中央署でうまくやってたんですね。水沢刑事課長を筆頭にみんな、糸村さんの再捜査を支援してくれたんです! うん、うん、僕には分かりますよ、糸村さんを放っておけない気持ち。あの人、そういう人なんですよ~!

●IMG_2758

結局、今回は月島保護者会…じゃない、中央署の皆さんの協力もあって、事件は見事解決しました。三枝を殺した犯人は、彼の娘・長島明日香が通う学童保育のスタッフ・大沢真だったんです。実は、大沢は17歳のとき、先輩である三枝から教わったハッキング技術を使って、消費者金融の顧客情報を入手して売りさばき、少年院に入っていました。それで、三枝を逆恨みしてたんです。しかも不幸なことに、町工場を営む父が長年かけて開発した製品を特許申請しようとしたところ、その技術を盗んだ大手企業に先を越され、ショックで自殺。その後、学童保育でバイトを始めた大沢は、長島明日香を通して、三枝と再会したんですが、彼が特許庁に務めていることを知り、復讐を計画したんです。

 

その計画実行の発端が、2年前の長島明日香誘拐事件でした。大沢は岡野太一とともに長島明日香を誘拐した後、山小屋に監禁。長島明日香は犯人がいない隙に逃走を試みたんですが、そこに覆面男が入ってきたため動揺し、小屋に置きっぱなしになっていた拳銃で覆面男を射殺してしまいました。でも、これはすべて仕組まれた罠だったんです。覆面男の正体は岡野太一。彼は実際には射殺されたフリをしていました。そう、大沢の狙いは長島明日香が犯人のひとりを射殺したという事実をねつ造し、それをネタに三枝を脅迫して、特許の横流しをさせることだったんです。大沢に従わざるを得なくなった三枝は、万が一自分が警察に捕まったときに家族に迷惑が掛からないよう、脅迫の件も含めて一切何も言わず、妻・長島弥生と娘のもとを去りました。

 

ただ、その後、大沢も予想していなかった誤算が生じます。岡野太一が山小屋での狂言をうっかり作家・浅井徹の恋人に話してしまったため、それがケータイ小説のネタにされてしまったんです。しかも、出版を取りやめさせようとした岡野太一が、浅井徹を殺してしまった…。そこで、大沢はすべての真相を闇に葬るために岡野太一を殺し、その濡れ衣を三枝に着せた後、自殺にみせかけて殺したというわけなんです。

IMG_2342

そこで…糸村さんじゃないけど、気になるのが、三枝が持っていた“赤いキャンディーだけが入ったドロップ缶”ですよ。実は赤いドロップ、長島明日香がラッキーアイテムとして、好んで食べていたものでした。三枝は二度と家族のもとへは戻れないことを覚悟しつつも、その赤いドロップだけを持ち歩き、希望を託していたんです。三枝は本当に、心の底から家族を愛していたんですね。その証拠に、大沢が逮捕直前に連れ去った長島明日香の居場所を突き止める決定打となったのも、三枝が長島明日香のブログに寄せたコメントに貼ったURLでした。そこには、三枝が長島明日香のランドセルにぶら下げていたキーホルダーに仕込んだ小型GPSの位置情報があったんです。ちなみに、そのURLにはforestの文字が…そうです! 三枝が糸村さんに遺した「森の中に隠れています」という言葉は、このことを指していたんです。

IMG_3158

なんだか今日は遠山さん以上に、話が長くなっちゃいましたが、以上が事件と遺留品に隠されていた真相です。もちろん、遺留品に託された三枝の思いは、糸村さんが解いたんですけどね。ただ、そもそもこの再捜査を成り立たせたのは僕と言っても過言じゃないですから! だって、三枝の遺体発見現場で銃弾を実際に見つけたのは、僕なんですよ! つまり、糸村さんが円滑に捜査の駒を進めていくためには、この僕が必要不可欠ってことなんです!! といっても、いつも通り、あの人はそんなこと忘れちゃって…あれ? 糸村さんだ! 糸村さ~ん、ちょっと待って下さいよ~! この後、会議があるんですから、勝手にどっかへ行かないで下さ~いっ!!

 

  • mixiチェック

第8回

投稿日:2013年06月05日 21:50

sttl

月島中央署の遠山修介です。先日、仙堂さんが妙に思わせぶりな発言と、(本人はたぶんニヒルだと思っているんでしょうが)不気味な笑顔を残したため、皆さん生きた心地のしない1週間だったと思います。実は仙堂さん、森田さんの尾行をしていました。仙堂さんって、コイツは自分の敵だと思うと、途端にねちっこい牙を剥くんですよね…。今回もいつの間にか、森田さんの弱みを握ろうと周辺を探っていて、僕もその正直どうでもいい捜査に付き合わされてしまいました。どうやら森田さん、和菓子店の女性パート店員のもとを度々訪れては、談笑されていたようです。

IMG_0470

しかし、熱い刑事魂を秘めた仙堂さんの鼻が利いたのか…。実は、このどうでもいい捜査の際、僕たちは偽造カードの売買現場に出くわしたんです(お恥ずかしいことに1人を除いて、全員取り逃がしてしまったわけですが…)。しかも、その時に逃げた売人・岡野太一が殺される事件までも発生しました。で、最近なぜか現場検証での遅刻が減った糸村さんが、現場に落ちていた水上バスのチケットに興味を示したのですが…まぁ、この点に関しては、もはや僕も驚きません。むしろ、あの人が誰も気にしない遺留品に目を付けないことの方が天変地異ですから。でも、今回は何に驚いたかって、そのチケットに森田さんと会話してた和菓子店の店員・長島弥生の元夫で、特許庁職員・三枝達也の指紋が付着していたんです!

 

三枝達也と長島弥生はある事件の後、離婚していました。その事件とは、森田さんと金子管理官が2年前に担当した少女誘拐事件。事件のあらましはこうです。三枝達也と長島弥生の娘・長島明日香を誘拐した何者かが身代金を要求。が、その3日後に記憶を失った長島明日香のみが、山麓で発見されました。結局、犯人の連絡も途絶え、事件の全貌は分からず仕舞いでしたが、森田さんはその後も長島明日香を心配し、様子を聞きに長島弥生を訪ねていたとか。森田さんって生粋の嫌なヤツと見せかけて、実はツンデレ・タイプだったんですね。見直しました。

IMG_1926

あ、僕の感想はどうでもいいですね。話を事件に戻しましょう。ここからは入り組んでいて、説明が難しいんですが、まずは岡野太一が殺された直後に発覚した、浅井徹という小説家の殺人事件についてお話しします。この事件は、現場から岡野太一の指紋が検出されたため、岡野が殺される前に手を染めた犯罪だと判明しました。実は、その捜査の過程で浮上した殺害動機が、思わぬところにつながっていたんです。殺害動機はおそらく、浅井徹のケータイ小説をめぐるトラブル。というのも、岡野太一は生前、浅井徹のケータイ小説が「自分のアイデアを盗作したものだ」と主張していたそうなんです。そのケータイ小説は、少女の誘拐をネタにしたミステリーでした。もうお分かりですよね。その小説の描写が、長島明日香の誘拐事件とそっくりだったんですよ! しかも、真偽のほどは不明ですが、その中には「誘拐され、山小屋に監禁された少女が誘拐犯を撃ち殺した」という、驚くべき描写があったんです。

 

さらに、その新事実発覚と前後して、水上バス乗り場の防犯カメラの映像から、岡野太一と揉める三枝達也の姿が発見されました。さらに三枝達也の自宅から、岡野太一の血痕が付着したタオル、岡野殺害現場の土壌と一致する泥が付着した靴、偽造カード等も見つかったんです。ところがその矢先…行方をくらましていた三枝達也が、数日前に水上バスのチケットの件で聞き込みに来た糸村さんに電話をし、岡野殺しを自白した直後、亡くなってしまいました。自ら拳銃を握りしめて絶命していたことから、拳銃自殺を図ったとみられます。

IMG_0502

容疑者と連絡を取りながらも、死なせてしまったとなると…。事情はどうであれ、警察の落ち度ということになってしまいます。糸村さん、大丈夫でしょうか…。徹底して空気を読まない糸村さんでも、さすがに今回は不味いと感じているはずです。ですが糸村さん、自分が組織内で置かれてる立場よりも、三枝達也の自宅にあった“赤いキャンディーだけが入っていないドロップ缶”と、三枝の鞄の中にあった“赤いキャンディーだけが入ったドロップ缶”、電話で三枝が岡野太一殺害の動機として語った「森の中に隠れています」という言葉が気になっているようで…。

 

今回の事件の裏にはまだまだ明らかになっていない“深い闇”があるのかもしれません。糸村さん、どこからツッコめばいいか分からないくらいの超S級変人ですが、彼が気になることに必ず“事件の裏を紐解くカギ”があることだけは確かですから…。

  • mixiチェック

フォトギャラリー

  • image
  • sttl
  • sttl
  • sttl
フォトギャラリーを詳しく見る≫