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第7回

投稿日:2013年05月29日 21:50

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東京は暑いですねぇ。私、仙堂卓巳もこのところ、ホットな毎日を送ってますよ。何ですって? やっと恋人ができたのかって? あのねぇ…あんたっ! それは客商売のホステスにすら相手にされず、万年恋愛ツンドラ地帯をたくましく生き抜く私に対する嫌味かっ!? えっ? どうなんだっ!? …おっと、不覚にも取り乱してしまい、申し訳ありません。私、この手の話題にはついカッとなってしまうタチでしてね。ともかく、私がホットになっている理由は、来週あたり明らかになりますから(ニヤリ)。

 

そんなことより、今週の話です。実は先日、銀座のクラブのホステス・島崎未紗が自宅で絞殺されたんですよ。彼女、老舗テーラーに嫁いだんですが、少しでも多くの儲けを出そうと考える夫・島崎真彦と職人気質の義父・島崎幸男が5年前に衝突しましてね。島崎真彦は家出、現在では島崎幸男も老人ホームに入所し、被害者は店を閉めたまま一人暮らしを続けていたようです。というわけで私、さっそく被害者が勤めていたクラブへ聞き込みに参りました。そこで、私と遠山の身に起こったことは聞かないで下さい。それを聞かれると私、キレちゃいますから! ま、それはさておき、その時に被害者がつけていた顧客ノートを入手したんですが、まぁスゴイもんです。シングル」とか「ダブル」とか、酒の好みまで細かく書いてあるんですよ。そういえば、私も学生のころ、好きな女子の牛乳の飲み方などを細かく網羅した“僕の女神ノート”を作ってましたっけ…。あれは3分ではとてもじゃないが語り尽くせない、私のほとばしる思いがビッシリと詰まった10冊です。

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そうそう、3分といえば、糸村さんですよ。あの人には困ったもんです…。今回もまた妙な遺留品に目を付けちゃいましてね。シュシュですよ、シュシュ! 「被害者はショートカットなのに、なぜ持ち歩いてたんでしょう?」って…いや、ごもっともな疑問ですよ。ただねぇ…こんな憂いある頭部の私だって、好きな女性のシュシュなら、卵を持つように優し~く持ち歩くと思いますよ! 彼女にも何か理由があったんでしょう。ま、事件とは関係ないと思いますけどね、私は。でも、糸村さんときたら、その遺留品のシュシュと、被害者が仁科菜摘という女性の経営する子供服専門店に無料提供していたシュシュについて調べ始めてしまいまして…。相変わらずお気楽なモンです。

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で、そのシュシュですが、私の予想通り、事件とは直接関係ありませんでした。事件の真相をざっと申し上げます。犯人は仁科菜摘。彼女は島崎真彦にずっと片想いをしていて、離婚させるために島崎未紗がクラブで働いていることや、その他あることないことを吹き込んでいたんです。で、島崎真彦は遂に離婚を決意。事件があった日に島崎未紗のいる実家へ戻り、離婚届を置いていったんです。でも、その時の会話の中で、島崎未紗は仁科菜摘が裏で動いていたことを知った。それで、その後家を訪ねてきた仁科菜摘と口論になり、殺されてしまったというわけです。

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実は島崎未紗、今でも島崎真彦のことを愛してたんですよ。ただ、それを証明したのが悔しいかな、糸村さんが必要以上に執拗に、こだわっていたシュシュでしてね。鑑定の結果、遺留品と、店に提供していたシュシュは別人が作ったものだったんです。遺留品のシュシュはその昔、島崎真彦が島崎未紗のために作り、プレゼントしたもの。それを被害者はずっと大切に持っていたんです。一方、店に提供していたシュシュですが、あれは被害者が作ったものでした。島崎真彦が再びテーラーでスーツを作る日を待ち望んでいた彼女は、彼のハサミを使ってシュシュを作り続け、切れ味を保持していたんです。実はこちらのシュシュ、裁断面がガタガタだったんですが、それは右利きの被害者が、左利きである島崎真彦のハサミを使っていたからでして…。顧客ノートに書いてあった「シングル」や「ダブル」も、スーツの好みだったんですよ! 彼らはいつかテーラーの顧客になるかもしれない。その時に役立てられれば…と被害者は思い、書き留めていたんでしょう。

 

以上が、糸村さんの見解ですが、男・仙堂卓巳、この純粋な愛に感動致しました! 後で聞いた話なんですが、島崎幸男も息子が気兼ねなく家に帰って来られるよう、自ら老人ホームに入ったそうで…。くぅーっ、泣ける家族愛じゃないですか! 私も一刻も早く嫁をめとり……おっと、ヤツが動き出しました。燃える男・仙堂卓巳、これより尾行を開始したいと思います。誰の尾行かって…? まぁ、それはまた来週あたりにでも(ニヤリ)。

 

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第6回

投稿日:2013年05月22日 21:50

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どうもお久しぶりです。横山恵一です。この間、ふらふら街を歩いてたら、タライかってくらいデッカイ虫眼鏡を見つけたんですよ。「これ、買ってあげたら、糸村さん喜ぶだろうな~」って思ったんですけど、財布の中を見たら、まさかの259円しかなくて…。そう言えば僕、糸村さんの面倒ばっかり見させられてて、銀行に行ってるヒマもなかったな~。まぁ、いっか。…と思って諦めました。

 

そんな今日この頃、事件が起きました。不動産会社の御曹司で、副社長の高梨一弥が自宅近くで殺されたんです。なんか彼、女性関係が超派手だったみたいです。仙堂さんと大違いですよね~。まぁ、それはさておき、遺留品を見た糸村さんがま~た目をクリクリさせ始めちゃったんです。「高級そうな財布の中身が3000円なんておかしい」とか、500円の商品券と引き換えられる商店街のスタンプカードを見て「セレブがスタンプカード集めたりしますか?」とか言って…。だから僕、糸村さんに言ったんですよ。「付き合ってた彼女が商店街の近くに住んでたんじゃないか」って。まぁ、「何言ってんの? 横山くん」みたいな顔でスルッとスルーされちゃいましたけど。でもすぐに、高梨一弥が殺される数時間前、商店街の近くに住む結城美奈世という女性と連絡を取ってたことが分かったんです。しかも、彼女には彼との間にもうけた駿くんという子どもがいたんです。ほら~、糸村さ~ん! 僕の言った通りじゃないですか~!! ただし、認知はしてもらってないし、彼女自身が高梨一弥と直接会うことはなかったそうですけど…。

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そんなとき、宿題もせずテレビに夢中な子どもみたいに、会議にも出ず監視映像に食い付いてた糸村さんが、殺される直前の被害者がジャケット着てることを発見したんですよ。でも、発見された遺体はジャケットを着てないんです。あれ? ホントだ! やるな~、糸村さん。と思った矢先、燃やしたジャケットと一緒に、ビニール袋に入った凶器のナイフが発見されたんです。しかも、結城美奈世の指紋が付着していて、彼女も犯行を認めました。骨髄移植が必要な駿くんの手術期限が迫っていたものの、費用が足りず、彼女は高梨一弥に金を無心したそうです。でも、拒否されたため、殺した…と。ところがここにきて、月島中央署の無邪気な坊や・糸村さんが、スタンプカードが被害者のものだとは信じられない、遺留品は駿くんを救うための偽装じゃないかって言い出したんです! それで改めてジャケットの燃えカスを調べたら、小さな金属片が検出されたんですよ。つまり…。

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犯人は、駿くんとよくキャッチボールをしていた工場の工員・一場克斗だったんです。7年前に傷害致死事件を起こした一場克斗は、うちの水沢課長に検挙され、少年院に入ってたことがあるんですね。で、出所後は真面目に暮らしてたんですが…。最近になって少年院時代の仲間に借りたバイクをぶつけ、「金を払え」と脅されてたんですよ。それでつい、帰宅途中の高梨一弥をナイフで脅し、金を奪ったんです。でも、自分がよく駿くんと遊んでいる人物だと気付かれてしまい、揉み合いになった。その結果、高梨一弥をナイフで刺し、そのまま逃走してしまったんです。

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実は、その一部始終を目撃した人物がいました。それが結城美奈世です。彼女は一場克斗をかばうため、強奪されて空っぽになっていた財布に手持ちの金を入れるなど、慌てて遺留品を偽装。捜査の目をくらませようとしました。そのときに、お札の間に挟まっていたスタンプカードも一緒に残すという、誤算が生じてしまったんです。でもなぜ、そこまでして一場克斗をかばったのか…。実は一場克斗、医者から止められている野球が大好きな駿くんを思うあまり、自ら志願して骨髄のドナー適合テストを受け、適合することが判明していたんです。そう、結城美奈世は自分が万が一逮捕されようが、我が子の移植手術が上手くいくことだけを願い、一場克斗をかばおうとしたんですよ!

 

もちろんやってしまったことは間違ってますけど、これって親心、無償の愛ですよね。なんか胸に響くなぁ…。僕も、今日は糸村さんに優しくしてあげようかな。まぁ、いつも優しいんですけどね。

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第5回

投稿日:2013年05月15日 21:50

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月島中央署の遠山修介です。趣味や恋愛に熱中するのは良いことですが、一方で何事もほどほどに…って言うじゃないですか。この間、うちの署長も社交ダンスのステップを踏みながら出勤してたら、ぎっくり腰になりまして…。どんだけ情熱的に踏んだんでしょうか…。というか、社交ダンスって男女ペアでタラタラリンと踊るアレでしょ? そんなに楽しいものなんですかねぇ…。

 

さて、署長の情熱が無用の災難を招いた数時間前、九条美千代という画家のアシスタント・峰岸百合子がアトリエに泊まり込みで、個展の準備をしていたところ刺殺されました。美大の講師をやっている友人に聞いたんですが…あ、「それって彼女?」とか、仙堂さんみたいな無粋な質問はナシですよ。九条美千代は日本を代表する画家・九条実篤の娘で、彼女自身もある時期を境に突然才能が開花した、秀抜な画家なんです。九条親子の専属エージェントである画商・城田貴の話では、彼女は「父親の亡霊をやっと取り払えた」と言ってたそうです。

 

ところが捜査を進めると、とんでもない情報が入ってきました。峰岸百合子は世間には内緒で、九条美千代の代わりに絵を描いていたっていうんです! それが事実であれば、九条美千代がこの秘密を隠ぺいするため犯行に及んだ…という線が濃厚です。ただ、事件当夜の彼女のアリバイは、裏が取れちゃってるんですよ。つまり、犯人は他にいることになるんです。

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そのときです。出た! 斜め掛け鞄の浮遊霊…じゃなかった、糸村さんです。例によって糸村さん、峰岸百合子の筆箱に入っていた“折れた絵筆”に夢中で、いろいろ嗅ぎ回ってたみたいですけど、急に「犯人は九条美千代と間違って、峰岸百合子を殺したんじゃないか」って言い出したんです。その推理は素晴らしいと思います。ただ、未練がましい男じゃあるまいし、絵筆のことはもういい加減、忘れてもいいんじゃ…。別に凶器って訳でもないんですし…。

 

でも、それは軽率な判断でした。糸村さんがその絵筆を見せたことで、九条美千代はあっさり峰岸百合子がゴーストの画家だと認めたんです。3年前に行き詰っていた九条美千代は気分転換を兼ね、スケッチに出掛けた隅田川沿いで峰岸百合子と遭遇。アシスタントを志願する彼女を雇ったそうです。ところがその後、腱鞘炎で絵が描けなくなった九条美千代が彼女に絵を描かせたところ、圧倒的な出来栄えだったため、以降は峰岸百合子が代理で絵を描くことに。峰岸百合子が絵筆(※これ、九条美千代のものだそうです)を折ったのは、散々彼女を利用した自分への「筆を折れ」という、憎悪の宣告だったのでは…と、九条美千代は語ったそうです。

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ですが、真実は違いました。糸村さんが懲りずに科捜研の村木さんをこき使って調べると、絵筆から微量の紙粘土が検出されました。しかも、峰岸百合子の家には紙粘土の造形品があり、その穴に折れた絵筆がぴったり挟まったんです。実はこれ、腱鞘炎で痛む手の負担を軽減するようデザインされた持ち手で、九条美千代に贈る目的で作ったものでした。なぜ彼女は九条美千代のためにそこまで…。実は峰岸百合子は九条実篤の隠し子=美千代の実の姉だったんです。幼いころから施設に預けられていた峰岸百合子は、心を閉ざしていました。でも中学時代、写生会で声を掛けてくれた九条美千代の明るい絵に触発され、絵を通した感情表現や、人と関わることを覚えたそうです。そして3年前…。自分を救ってくれた妹の力になりたい――九条美千代がスランプだと直感した峰岸百合子は、偶然を装って彼女と出会い、アシスタントを志願。最近では妹を思うあまり、城田に腱鞘炎のことを話し、治療優先のために個展延期の依頼もしていました。そう、峰岸百合子は九条美千代のことを恨んでなどいなかったんです!

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ただ、運命は時に残酷です。当初から峰岸百合子=ゴーストだと感づき、金に困っていた城田は、九条美千代を殺して絵の値段を高騰させた後、峰岸百合子を売り出そうと画策。しかも城田は、峰岸百合子を九条美千代だと勘違いし、殺してしまったんです。やりきれない話です…。

 

すみません、今回もまた話が長くなってしまいました…。どうも僕、トークがあまり得意ではないようです。いわゆる女性ウケしない性格ってヤツですね。僕、昔っからこんな感じなんですよ。ダメですよね(苦笑)。

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第4回

投稿日:2013年05月08日 21:50

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またお目にかかりました。え~私、月島中央署の仙堂卓巳です。だいぶ昔の話になりますが、私ね、学生時代は結構勉強ができたんですよ。勉強ができれば、こんな私でも女子に御贔屓にしてもらえるんじゃないかって、そりゃもう頑張りました。でもね…結局、モテるにはイケメン顔とか、ムダにそよ風が吹くような爽やかさがなきゃダメなんですよ! 私の学生時代、頑張れば頑張るほど、けたたましく閑古鳥の野郎が鳴きましてね…。切ないったら、ありゃしませんでした!

 

まぁ、どうしてこんな心寂しい思い出が今更蘇ったかと申しますと、この間、安西俊明という名門女子高のカリスマ数学教師が殺されたからなんですね。彼、エリート育成に力を注いでたらしいんですよ。だから、得意のサッカーに力を入れた末に大学受験に失敗した息子・安西和也とも、ずっと疎遠だったらしいです。一流大学に入れなかろうが、サッカーが得意なら女子にもモテて、華やかな人生が送れていいんじゃないかって、私なんかは思うんですけどね。

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で、この安西ですが、深夜の講師室においてカッターで首を切られて亡くなっていました。灰皿には何かを燃やした跡があり、被害者の手にも微量の灰が付着してたんです。刑事なら当然、一番にこの点が引っかかるはずです。なのに、糸村さんときたら…。講師室に置いてあった中国茶の茶碗の捜査を最優先したんですよ! 確かに講師室には中国茶の茶葉はなく、コーヒー豆が置いてあって、糸村さんの言う通り、被害者はコーヒー党だったみたいですけどね。別にいいじゃないですか、気まぐれに使いもしない中国茶の茶碗を買っていたとしても! 私も学生時代、弾きもしないギターを買ったものですよ。だって、モテの代名詞といえばギターでしょう!

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案の定、茶碗は事件とは直接関係がありませんでしたよ。結論から申しますと、犯人は教科書販売業者の久保栄司でした。彼はかつて安西によって高校を退学させられた元教え子。退学後にやっとの思いで現在の会社に契約社員として雇ってもらえ、努力の末に正社員への道が開けようとした矢先でした。ところが、取引先の学校に務める安西から、教科書の来年度契約をいったん白紙にしたいと言われた。一度ならず、二度までも人生をメチャクチャにされる…。自暴自棄になった久保は安西を殺しました。でもね、安西は落ちこぼれだった久保を退学させ、苦しい人生を歩ませたことを悔いていんですよ。だから、せめてもの罪滅ぼしに…と、物盗りの仕業に見せかけるため、灰皿の中で自らの現金を燃やしたんです。糸村さんがしつこく現場を調べたところ、凶器のカッターもコーヒー豆の中から見つかりました。これも安西による証拠隠滅だったんです。

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ただ糸村さんによれば、あの茶碗にも隠された物語がありましてね。糸村さんが茶碗の取扱店であるカフェに足を運んだところ、安西に落第させられた大橋香菜という生徒に遭遇したんです。実は彼女、親には内緒でパティシエになる夢を叶えるため、自ら安西に頼んで、落第させてもらったそうです。安西はそんな彼女に驚きを隠せず、バイト先に訪ねてきていたんですよ。そのバイト先というのが、遺留品の茶碗を取り扱っていたカフェです。茶碗は、安西がそのカフェのオーナー・雨宮玲子から買っていたものでした。安西は雨宮玲子から「人の幸せは他人が決めるものじゃない」と言われ、大橋香菜の夢を応援することを決意したそうです。実はその言葉、そもそも雨宮玲子が安西和也に言われたものでした。彼女は、現在フリースクールの教師をしている安西和也の元教え子だったんです。それを知った安西はいつかもう一度、息子と向き合って話をしたいと強く思った。その願いを託し、息子が好きな中国茶の茶碗を2つ購入したというわけです。

 

泣ける話じゃあないですか! 人の幸せは他人が決めるものじゃない…。私もね、モテない人生ではありますが、諦めずに自分の幸せを追求していきたいと思いますよ!!

 

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第3回

投稿日:2013年05月01日 21:50

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あ、どうも! この春、警視庁捜査一課から月島中央署に異動してきた横山恵一と言います。このあいだ僕、イヤ~な夢を見ちゃいまして。おしゃぶりを咥えた糸村さんが全力で三輪車をこぎながら、僕を追っかけてくるんです! だ~か~ら、僕は糸村さんの保護者じゃないって何度言えば、分かってくれるんですか~っ!! …って叫んだとこで、目が覚めました。ね、イヤ~な夢でしょ?

 

さて、僕がそんな夢に連日うなされていたころ、宗方栞というキャバクラ嬢と汐見悟志という商社マンの心中事件が起こりました。部屋には、2人の血判が押された遺書が残されてて…。宗方栞は母親が蒸発して、父親も病死。汐見悟志の母親は2カ月前に、暴漢に刺されて死亡していました。家族を亡くした者同士のやりきれない心中…まぁ、そんなところだと思います。

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でもね、ここでまた糸村さんの例の暴走が始まっちゃったんですよ…。汐見悟志が持ってたプレゼントの箱――これ、中身は香水だったんですけど、そもそも箱が開けられた形跡がないんです。彼女へのプレゼントなら、心中する前に開けるだろうに…って、糸村さん、もう気になっちゃったみたいで、ひたすらこの香水のことを調べ始めちゃったわけです。そしたら、汐見悟志は前にも同じ香水を買ってたことが判明したんです! しかも、彼の婚約者・橘千晶へのプレゼントとして! で、一方の宗方栞も新庄彰俊っていうホストと交際してた上に、生活安全課にストーカー被害の相談もしてたみたいで…。今回の事件、心中事件で片づけるには不可解すぎます。

 

いろいろ調べていったら、宗方栞は3年前に尖端恐怖症で心療内科に通ってたことも判明しました。実は糸村さん、彼女の部屋に包丁やナイフがなかったことにも引っかかってたんですけど、その件はこれで解決です。でも糸村さん、また別に気になるものを見つけちゃったんです…。産婦人科で撮られた、生まれたばかりの汐見悟志と母親の写真なんですけど、背景に東京タワーらしきものが写ってたんです。でも、汐見悟志が生まれたのって、名古屋の病院のはずなんですよね。それで調べてみたら、写真の赤ちゃんは汐見悟志じゃないことが分かったんですよ!

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写真の赤ちゃんは宗方栞でした。宗方栞の母親は夫の暴力に耐えかねて蒸発したんですけど、実はそのときに2人目の子を妊娠してたんです。それが汐見悟志。要するに、2人は姉弟だったんです! 汐見悟志が姉の存在を知ったのは、亡くなった母親の遺品を整理していたとき。この写真を見つけたのがキッカケでした。そんなとき偶然、宗方栞と出会い、彼女が姉であることを確信。汐見悟志は自分が弟だと告白するため、宗方栞のマンションを訪ねたんです。そして、心中を…と言いたいところですが、これ、やっぱり心中事件じゃなかったんですよ。

 

血判を押すために切られた2人の指の傷は、彫刻刀によるものでした。犯人は印章店を営む宗方栞の叔父・宗方慶一だったんです。彼は父を亡くした宗方栞に目をかけ、仕事を教えて店を譲ろうとまで考えていた。でも、彼女は恩に報いようにも、尖端恐怖症を克服できず、印鑑を彫る仕事を断念せざるを得なかったんです。一方、そんな事情など知らない宗方慶一は逆恨みし、彼女を追い回しては、生活費を援助する代わりに肉体関係を強要していた。宗方栞はそれを苦に自殺。マンションを訪れ、遺体を発見した宗方慶一はその場から逃げようとしたんですが、そこへ汐見悟志が現れたため、彼を殺し、心中にみせかけるために遺書や血判を偽装工作したんです。

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汐見悟志は婚約者と会ってほしいとお願いするため、宗方栞のマンションを訪れていたんだと思います。そこで手土産として、新しい家族となる橘千晶が喜んでくれた香水を選んだ。宗方栞も自分たち家族の一員だと伝えたいがために…――というのが糸村さんと橘千晶の推理でした。

 

でも糸村さん、今回、そもそもその推理に辿り着いたのが、僕のおかげだってこと、認識してるんですかねぇ? だって、現場で最初にプレゼントの箱を見つけたのは、この僕ですからね! きっと、そんなこと忘れてるんだろうなぁ…。親の心子知らず…。あっ、別に僕が糸村さんの保護者だって、認めたわけじゃないですからね!

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