2013年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
  • mixiチェック

第2回

投稿日:2013年04月24日 21:50

sttl

糸村さんは気まま過ぎる釣りを、仙堂さんは恋愛とは無縁の慎ましい生活を、署長は妙に情熱的に社交ダンスを…と、皆さん勤務時間外を謳歌しているようですね。でも僕、遠山修介のプライベートは…同僚の女性警察官の皆さんにもなぜかよく聞かれるのですが、これと言って語るようなエピソードもなく、至って穏やかで普通でして。まぁ、それが何よりなんじゃないでしょうか。

かたや、世間はやけに物騒です。先日もフリージャーナリストの相馬悟郎が撮影所で刺殺され、現場が爆破されましたが、この事件…解決したかと思ったら、続きがありました。今度は廃ビルが爆破され、モデル事務所のマネージャー・大森恵が全身火傷で意識不明の重体に陥ったんです。彼女は、相馬殺しの犯人・遠野麻理子の主演映画に出ていた新人女優・愛川みちるのマネージャー。しかも、遠野麻理子は撮影所爆破に関しては否認しているので、前回の事件と何か関連がありそうです。

IMG_5035

僕と仙堂さんは、大森恵が勤務する事務所の社長・筧英雄を訪ねました。大森恵の近況を捜査するためです。ところが、そこへ神出鬼没のあの人が来ちゃったんです…。ええ、糸村さんです。糸村さん、今回は現場に落ちていた遺留品のルビーが気になってしまったらしく…。初動捜査は慎重かつ確実に行うべきだ、と僕は思うんですけどね。糸村さんときたら…案の定、基本的な聞き込みは華麗にすっ飛ばし、ルビーについて尋ね始めたんです。しかも、筧は「見たことがない」と証言したので、普通はここで終わりにするはずなんですが、糸村さんは「犯人が落としていった物という可能性もある」と解釈したようで…。子犬みたいな顔して、蛇のような執着心…。僕には洞察力がまだまだ足りないんでしょうか? 未だに糸村さんという人がよく分かりません…。

IMG_5610-2

ただ糸村さん、本当に地球規格外の変人で、ワケの分からない人ではあるんですが、洞察力は僕より遙かに上なのかもしれません。なにせ今回も、このルビー(※正確にはルビーを模した合成コランダムだそうです)が犯人特定の手掛かりとなりましたから…。

現場にルビーを落とした人物=犯人は、遠野麻理子の付き人・永井涼子でした。その昔、彼女は妻子ある男性の子を産んだそうです。でも、モデルになる夢を掴んだばかりの彼女は、子どもには幸せに育ってほしい一心で泣く泣く、自分とお揃いのルビーの指輪とともに、子どもを医師夫婦に託しました。その子こそが、1カ月前に自殺したモデル・長澤絵里だったんです。死の直前、長澤絵里はモデル仲間の北原麻美に階段から突き落とされ、顔に傷を負っていました。真相を知った大森恵は、その件で自分の恋敵である北原麻美を強請り始めました。しかも更なる恐喝材料を得ようと、陰で長澤絵里を精神的に迫害し、自殺に追い込もうとしたのです。永井涼子の犯行の動機は“娘の復讐”でした。

   IMG_5825-2

ですがこれ、そもそも“間違った復讐”だったんです。長澤絵里は自殺したのではありませんでした。彼女は生前、高級宝飾品を扱うベッツィー社の専属モデル契約を拒否。そのことに憤慨した筧によって、殺されていたんです。では、なぜ長澤絵里は契約を拒んだのか!? 彼女は生き別れとなった産みの母親が自分の存在に気づき、再会できる日を夢見てモデルとなり、ルビーの指輪を常に身につけて仕事に臨んでいました。ところが、ベッツィー社との契約書には「当社以外のアクセサリーを身につけない」という条件が書かれていた…。だから、彼女は契約を拒んだのです。

胸が痛みます…。撮影所を爆破したのも永井涼子でしたが、それも世話になった遠野麻理子のために証拠を隠滅しようとしたため。彼女はとても情の深い人だったんです。でも、その情の深さが間違った復讐劇をも生んでしまった。そして、彼女の娘もまた母親譲りの情の深さゆえ、自らの死を招く結果に…。あっ、すみません。3分のつもりが、糸村さんの話以上に長くなってしまいました…。今日はこのへんで終わりにして、至って穏やかで普通の生活に戻ることにします。

  • mixiチェック

第1回

投稿日:2013年04月17日 19:47

sttl

先日、女優の遠野麻理子が映画会社専務との交際宣言をしましたよね。でも皆さん、人生は良いことばかりが続くと思ったら、大間違いです。私もこの間、まさにタイプの女性と月島の商店街ですれ違いましてね。ところが、吸い込まれるように彼女を見た途端、親の仇どころの騒ぎじゃない猛烈な殺気を浴びせられまして…。一瞬先は闇――私の恋愛人生、いっつもこんな感じですよ! あ、申し遅れました。私、月島中央署の刑事・仙堂卓巳と申します。

IMG_3902

話を戻しますが、どんなに美人で絶好調の遠野麻理子であろうと例に漏れず、です。こともあろうに交際宣言の直後、相馬悟郎というフリージャーナリストを殺してしまいましてね。現場も爆破されていましたし、本人は警察の目も誤魔化せると思ったんでしょうが、そうは問屋が卸さない! 別にね、手柄をひけらかすつもりは毛頭ありませんが、この私が仙堂だけに先導を切って、被害者の身元を割り出し、刺された痕があるのを見つけたわけです。

ところが糸村さんときたら、被害者が持っていたハーモニカばかり気にしていまして…。ハーモニカを持ち歩いて、何がおかしい!? って思いませんか? 私もね、小学生のころはクラスのマドンナの気を引こうと、音楽の授業がない日も窓際で、ニヒルにハーモニカを奏でたりしたものです。相馬だって、そんなスケベ心で持ち歩いていたかもしれないでしょう。

IMG_4354

ただ悔しいかな、今回は…というか、今回も糸村さんのおかげで事件が解決しまして…。というのも、そのハーモニカは遠野麻理子が10年前に映画の中で吹いたもので、マウスピースに彼女の父親の血痕がついた陶器の欠片が詰まっていることが判明したんです。実は彼女、その映画の撮影中、大金を脅し取ろうと付きまとう父親を殺してしまっていたんです。その時、撮影現場である屋敷の部屋にあった壺に、父親が体をぶつけましてね。割れた壺の欠片が現場にあったハーモニカのマウスピースに入ってしまった、というわけです。

そこで、相馬の登場です。彼は10年前、その映画で助監督を務めていたんです。彼は誰よりも遠野麻理子の実力を買っていましてね。偶然にも殺害現場を目撃してしまった相馬は、彼女を現場から逃して遺体を湖に沈め、壺も自分が割ったことにしたんです。ただ、そのせいで壺が映り込んでいたシーンはすべて、撮り直さなければならなくなった。その責任を取る形で、相馬は助監督を辞めさせられていたんです。まったく、厳しい世界です…。

IMG_4610

ところが先日、その相馬が突然、遠野麻理子を訪ねてきた。彼女は相馬が復讐のために現れたと思い、刺殺したというわけです。でも、これが“誤解”なんです。相馬は病に侵され、余命1カ月の身だった。だから最後に一度会いたい――そんな純粋な想いで、相馬は遠野麻理子を訪ねてきたんでしょう。その証拠に相馬の自宅には、彼女の出演映画すべての半券が残されていましてね。例のハーモニカも10年前の事件直後に、黙って現場から持ち出していたと思われるのですが、それも遠野麻理子との大切な思い出を胸に、映画業界を永遠に去る覚悟を決めたからだったのでは…?――と、自転車に乗った誰かさんが言ってました。

まさにってヤツですよ! 分かりますか? この“男の愛の深さ”が! 数々の女性にそんな無償の愛を注ぎ続ける私には、身に染みすぎて神経痛を起こしそうなほど、よ~く分かります。でも…女ってヤツには、それが全っ然伝わらない! 困ったものです…。

  • mixiチェック

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫