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第5回

投稿日:2013年05月15日 21:50

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月島中央署の遠山修介です。趣味や恋愛に熱中するのは良いことですが、一方で何事もほどほどに…って言うじゃないですか。この間、うちの署長も社交ダンスのステップを踏みながら出勤してたら、ぎっくり腰になりまして…。どんだけ情熱的に踏んだんでしょうか…。というか、社交ダンスって男女ペアでタラタラリンと踊るアレでしょ? そんなに楽しいものなんですかねぇ…。

 

さて、署長の情熱が無用の災難を招いた数時間前、九条美千代という画家のアシスタント・峰岸百合子がアトリエに泊まり込みで、個展の準備をしていたところ刺殺されました。美大の講師をやっている友人に聞いたんですが…あ、「それって彼女?」とか、仙堂さんみたいな無粋な質問はナシですよ。九条美千代は日本を代表する画家・九条実篤の娘で、彼女自身もある時期を境に突然才能が開花した、秀抜な画家なんです。九条親子の専属エージェントである画商・城田貴の話では、彼女は「父親の亡霊をやっと取り払えた」と言ってたそうです。

 

ところが捜査を進めると、とんでもない情報が入ってきました。峰岸百合子は世間には内緒で、九条美千代の代わりに絵を描いていたっていうんです! それが事実であれば、九条美千代がこの秘密を隠ぺいするため犯行に及んだ…という線が濃厚です。ただ、事件当夜の彼女のアリバイは、裏が取れちゃってるんですよ。つまり、犯人は他にいることになるんです。

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そのときです。出た! 斜め掛け鞄の浮遊霊…じゃなかった、糸村さんです。例によって糸村さん、峰岸百合子の筆箱に入っていた“折れた絵筆”に夢中で、いろいろ嗅ぎ回ってたみたいですけど、急に「犯人は九条美千代と間違って、峰岸百合子を殺したんじゃないか」って言い出したんです。その推理は素晴らしいと思います。ただ、未練がましい男じゃあるまいし、絵筆のことはもういい加減、忘れてもいいんじゃ…。別に凶器って訳でもないんですし…。

 

でも、それは軽率な判断でした。糸村さんがその絵筆を見せたことで、九条美千代はあっさり峰岸百合子がゴーストの画家だと認めたんです。3年前に行き詰っていた九条美千代は気分転換を兼ね、スケッチに出掛けた隅田川沿いで峰岸百合子と遭遇。アシスタントを志願する彼女を雇ったそうです。ところがその後、腱鞘炎で絵が描けなくなった九条美千代が彼女に絵を描かせたところ、圧倒的な出来栄えだったため、以降は峰岸百合子が代理で絵を描くことに。峰岸百合子が絵筆(※これ、九条美千代のものだそうです)を折ったのは、散々彼女を利用した自分への「筆を折れ」という、憎悪の宣告だったのでは…と、九条美千代は語ったそうです。

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ですが、真実は違いました。糸村さんが懲りずに科捜研の村木さんをこき使って調べると、絵筆から微量の紙粘土が検出されました。しかも、峰岸百合子の家には紙粘土の造形品があり、その穴に折れた絵筆がぴったり挟まったんです。実はこれ、腱鞘炎で痛む手の負担を軽減するようデザインされた持ち手で、九条美千代に贈る目的で作ったものでした。なぜ彼女は九条美千代のためにそこまで…。実は峰岸百合子は九条実篤の隠し子=美千代の実の姉だったんです。幼いころから施設に預けられていた峰岸百合子は、心を閉ざしていました。でも中学時代、写生会で声を掛けてくれた九条美千代の明るい絵に触発され、絵を通した感情表現や、人と関わることを覚えたそうです。そして3年前…。自分を救ってくれた妹の力になりたい――九条美千代がスランプだと直感した峰岸百合子は、偶然を装って彼女と出会い、アシスタントを志願。最近では妹を思うあまり、城田に腱鞘炎のことを話し、治療優先のために個展延期の依頼もしていました。そう、峰岸百合子は九条美千代のことを恨んでなどいなかったんです!

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ただ、運命は時に残酷です。当初から峰岸百合子=ゴーストだと感づき、金に困っていた城田は、九条美千代を殺して絵の値段を高騰させた後、峰岸百合子を売り出そうと画策。しかも城田は、峰岸百合子を九条美千代だと勘違いし、殺してしまったんです。やりきれない話です…。

 

すみません、今回もまた話が長くなってしまいました…。どうも僕、トークがあまり得意ではないようです。いわゆる女性ウケしない性格ってヤツですね。僕、昔っからこんな感じなんですよ。ダメですよね(苦笑)。

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