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第3回

投稿日:2013年05月01日 21:50

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あ、どうも! この春、警視庁捜査一課から月島中央署に異動してきた横山恵一と言います。このあいだ僕、イヤ~な夢を見ちゃいまして。おしゃぶりを咥えた糸村さんが全力で三輪車をこぎながら、僕を追っかけてくるんです! だ~か~ら、僕は糸村さんの保護者じゃないって何度言えば、分かってくれるんですか~っ!! …って叫んだとこで、目が覚めました。ね、イヤ~な夢でしょ?

 

さて、僕がそんな夢に連日うなされていたころ、宗方栞というキャバクラ嬢と汐見悟志という商社マンの心中事件が起こりました。部屋には、2人の血判が押された遺書が残されてて…。宗方栞は母親が蒸発して、父親も病死。汐見悟志の母親は2カ月前に、暴漢に刺されて死亡していました。家族を亡くした者同士のやりきれない心中…まぁ、そんなところだと思います。

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でもね、ここでまた糸村さんの例の暴走が始まっちゃったんですよ…。汐見悟志が持ってたプレゼントの箱――これ、中身は香水だったんですけど、そもそも箱が開けられた形跡がないんです。彼女へのプレゼントなら、心中する前に開けるだろうに…って、糸村さん、もう気になっちゃったみたいで、ひたすらこの香水のことを調べ始めちゃったわけです。そしたら、汐見悟志は前にも同じ香水を買ってたことが判明したんです! しかも、彼の婚約者・橘千晶へのプレゼントとして! で、一方の宗方栞も新庄彰俊っていうホストと交際してた上に、生活安全課にストーカー被害の相談もしてたみたいで…。今回の事件、心中事件で片づけるには不可解すぎます。

 

いろいろ調べていったら、宗方栞は3年前に尖端恐怖症で心療内科に通ってたことも判明しました。実は糸村さん、彼女の部屋に包丁やナイフがなかったことにも引っかかってたんですけど、その件はこれで解決です。でも糸村さん、また別に気になるものを見つけちゃったんです…。産婦人科で撮られた、生まれたばかりの汐見悟志と母親の写真なんですけど、背景に東京タワーらしきものが写ってたんです。でも、汐見悟志が生まれたのって、名古屋の病院のはずなんですよね。それで調べてみたら、写真の赤ちゃんは汐見悟志じゃないことが分かったんですよ!

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写真の赤ちゃんは宗方栞でした。宗方栞の母親は夫の暴力に耐えかねて蒸発したんですけど、実はそのときに2人目の子を妊娠してたんです。それが汐見悟志。要するに、2人は姉弟だったんです! 汐見悟志が姉の存在を知ったのは、亡くなった母親の遺品を整理していたとき。この写真を見つけたのがキッカケでした。そんなとき偶然、宗方栞と出会い、彼女が姉であることを確信。汐見悟志は自分が弟だと告白するため、宗方栞のマンションを訪ねたんです。そして、心中を…と言いたいところですが、これ、やっぱり心中事件じゃなかったんですよ。

 

血判を押すために切られた2人の指の傷は、彫刻刀によるものでした。犯人は印章店を営む宗方栞の叔父・宗方慶一だったんです。彼は父を亡くした宗方栞に目をかけ、仕事を教えて店を譲ろうとまで考えていた。でも、彼女は恩に報いようにも、尖端恐怖症を克服できず、印鑑を彫る仕事を断念せざるを得なかったんです。一方、そんな事情など知らない宗方慶一は逆恨みし、彼女を追い回しては、生活費を援助する代わりに肉体関係を強要していた。宗方栞はそれを苦に自殺。マンションを訪れ、遺体を発見した宗方慶一はその場から逃げようとしたんですが、そこへ汐見悟志が現れたため、彼を殺し、心中にみせかけるために遺書や血判を偽装工作したんです。

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汐見悟志は婚約者と会ってほしいとお願いするため、宗方栞のマンションを訪れていたんだと思います。そこで手土産として、新しい家族となる橘千晶が喜んでくれた香水を選んだ。宗方栞も自分たち家族の一員だと伝えたいがために…――というのが糸村さんと橘千晶の推理でした。

 

でも糸村さん、今回、そもそもその推理に辿り着いたのが、僕のおかげだってこと、認識してるんですかねぇ? だって、現場で最初にプレゼントの箱を見つけたのは、この僕ですからね! きっと、そんなこと忘れてるんだろうなぁ…。親の心子知らず…。あっ、別に僕が糸村さんの保護者だって、認めたわけじゃないですからね!

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