2008年09月07日 09:30
夏も終わりましたね。僕にとってはとても忙しく、そしてとても充実した夏でした。素晴らしい思い出が一杯詰まった今年の夏、終わりをビシっと決めてくれたのは、題名のない音楽会においても、僕にとって記念すべき第一回の放送に出演してくれたスーパーキッズ・オーケストラ(SKO)です。今年で6年目になるSKOの活動ですが、益々実りのあるものになってきたと思います。兵庫の大ホールが超満員2000人のお客様に、彼らの想いが十分に届けられ、会場中が大きな感動で包まれました。夏は、何かに挑戦したい季節。SKOの子供達から大きな達成感をいただきました!
 
さて今回の放送は、僕が芸術監督をつとめる兵庫県立芸術文化センターのオーケストラ、兵庫芸術文化センター管弦楽団(通称PACオケ)の登場です。曲はお馴染み、ベートーヴェンの交響曲第7番。何でも略すのが好きな人は「ベト7」と呼んでいる名曲ですね。200年も前の地球裏側で誕生し、時間も距離も飛び越えて、日本でもコマーシャルやドラマに使われ、今や最もポピュラーなクラシックを代表する名曲の一つでしょう。
 
僕にとっては大変思い出深い曲でもあります。1989年秋、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールに優勝した僕に、日本での凱旋コンサートが決まります。ちょうどバーンスタインはウィーンフィルとヨーロッパで演奏旅行を行っており、もちろん僕は同行したのですが、その時のプログラムがこの「ベト7」でした。ベートーヴェンの生地、ボンで行われたレニーの演奏会は大変素晴らしいもので、終演後、興奮しまくっていたレニーが「ユタカ!お前のデビューは、この曲で決まりや!」ってな感じで、楽屋の外にたくさんのファン(そこに当時のドイツ首相もいたと思いますが)を待たせたまま、なんと楽屋で指揮のレッスンが始まったのです!「この曲はビックリシンフォニーなんだ」これは、皆さんに伝えたかった今回の一つのテーマでもありますが、これはレニーから教えられたものなのです。
 
1990年1月、この曲をメインに凱旋帰国をし、それを聴いてくださった名指揮者、山田一雄先生からアリオン音楽賞を手渡されました。自分にとって大きな未来の扉が開かれたような気分でした。けれど同じ頃、体調がどんどん悪化していったレニーは、タングルウッド音楽祭でこの曲を指揮し、残念なことにそれが彼の人生最後の舞台となってしまいました。
 
いろいろ思い出の詰まった「ベト7」、そんな僕の想いを、見事に音に変換してくれた兵庫PAC(パック)。まるでロックの演奏のようになった「ベト7」。今回の演奏が、我々の友情をまた更に深いものにしてくれたように思います。