2011年03月27日 09:30

 先週の金曜日、日本を発ってパリに入った。今回の仕事はフランス国立管弦楽団の定期演奏会。演奏したことがない珍しい曲ばかりで、日本を離れる前に勉強しなければならなかったけれど、震災が起こってからなかなか楽譜を開く気になれなかった。被災された方達のこと思うと、辛くて、悔しくて、心が締め付けられる。音楽家という仕事は、平和だから出来ることなのかもしれない。こういう事態になり、自分の無力さを思い知らされる。でも、音楽家である前に一人の日本人として、この震災の復興に向き合わねばと、何度も自分自身に言い聞かせていた。

 そんな悶々とした日々を過ごしていた時、事務所から電話があった。デュッセルドルフ・シンフォニカーと、昨年の大晦日に僕が指揮をしたケルン放送交響楽団の二つのオーケストラが、合同で日本のためにチャリテイーコンサートを開催したいという提案だった!デュッセルドルフは、ヨーロッパの中でも最も日本人がドイツ人との友情を育んできた街だろう。震災からわずか数日で二つの名門オケが声を掛け合い、ソリストに声をかけ、合唱まで用意してくれ、日本に「勇気と力を届けたい」と申し出てくれたのだから、こんなに嬉しいことはない。僕の気持ちもこれで固まった。僕らは幸いにも生きている。家族や友人を亡くされた方々の気持ちを考えると、本当に胸が痛む。だからこそ、自分に出来ることを精一杯やろう。

 ラジオ・フランスでも収録されたパリの演奏会では、演奏会前にバッハのG線上のアリアを献奏し、黙祷を捧げた。またリハーサルの合間には、パリ商工会議所で開催された、日本への経済支援を呼びかけるアタリ氏の講演会に、僕も出席することになった。フランス人がこんなにも日本を思ってくれていることを改めて知った。

 今回の震災の復興には長い時間が必要だろう。しかし、世界中が復興を心から願ってくれていること、世界中が支援しようとしてくれていることを、被災された皆様に強くお伝えしたい!美しい町が皆さんに戻ることを、僕は祈り続ける。

視聴者からのコメント
2011年04月02日 23:56
セッキー

いつも楽しく拝見させていただいています。31日のなつぞうさんの提案、とてもいいと思います。仙台フィルの方々は今後も被災地で継続的にそういった活動をされるようです。それも併せて取り上げていただけたらなおよいと思います。被災地の方々が、再び穏やかな気持ちで音楽と触れ合うことができますように願っています。

2011年04月02日 14:04
アカシア

阪神淡路の震災から、神戸復興など佐渡さんが音楽を通して応援されていたのを知っていました。
今回も海外のオーケストラとコンサートされるというのは、東北の方々がいつかどこかで知る事になるでしょう。どうか日本人の今の気持ちを代表して、頑張っていただきたいと思います。
私も有珠山噴火の時から、洞爺湖を離れてしまいましたが、全国の皆様からの応援の数々は忘れていません。
一日でも早く、被災者の方々が日曜の朝「題名のない音楽会」をゆっくり見る日が来るのを祈ってます。

2011年03月31日 13:37
なつぞう

仙台に住んでいる者です。毎週番組を楽しみに拝見させていただいております。このたびの震災によりたくさんの人が傷ついている中、私も命は助かったものの、会が津波により水没し今後に不安がついて回ります。私は合唱をやっておりますが、いま仙台ではどのホールも使用ができません。5月に開催する予定だった演奏会も中止となり、練習もできず、大好きな地元の仙台フィルの演奏会も7月までは聴くことができません。先日仙台フィルは復興コンサートを街角のスタジオでおこないました。観客は入りきらないほどでびっしりで80人程。バーヴァーの「弦楽のためのアダージョ」のほか「ふるさと」を観客も涙混じりに一緒に歌っていました。私は涙が出て止まりませんでした。
この仙台フィルの演奏をたくさんの人に届けたい。そこでどうかこの番組で仙台フィルの演奏を聴かせてはもらえませんでしょうか?いま私たちが一番勇気をもらえるのは、地元で一緒に過ごしていた仲間の頑張っている姿を目にすることです。
音楽を愛する者として、どうか、どうか叶えてください。

2011年03月28日 12:34
kira

佐渡さんにお願いです。1人でも多くの被災者の方々に心休まる暖かな音楽を贈り続けてください。
私の小さな家族“きら”は地震のショックで黄泉の世界へと旅立って行きました。都会のコンクリートの箱の中で私の留守の部屋で想像もつかないくらいの恐怖を味わったのでしょう。1週間後の出勤して留守の間にさよならも言わず息絶えていました。とっても良いコだったのに…。日曜の朝に私の横でお知りを向けながら耳をそばだてている姿が無い事がとても悲しいです。
被災地の皆様の悲しみ苦しみは何倍などという言葉では表せない辛さだと思います。
どうか音と言う魂の癒しを日本中にわけてください。お願いします。

2011年03月28日 01:03
yuuyuu

東北出身者として、友達家族を亡くした一人として、世界中の方々が復興の手を差し伸べてくださるご支援に心から感謝申し上げます。
心落ち込んでいた私を元気にさせてくださつたのは前回の題名のゲスト、辻井さんと見守る佐渡さんの優しい眼差しでした。
そして昨日の辻井さん作曲の澄んだ清らかな演奏でした。
ありがとうございました。

2011年03月27日 23:50
相馬裕志

神戸の震災の年、黛先生のご提案なんでしょうがこの番組でマーラーの「復活」が演奏された時には、本当に嬉しかった。今年のこの機会にこの曲を再び取り上げることは、大変意義深いものがあると思います。是非佐渡さんの棒で!

2011年03月27日 14:06
まみーずまま

世界中のひとたちが、みなさんが日本を思っていてくださっているんですね。自分にできることなんて、ほとんどないのですが、宇宙で1つ地球の人々はみんなつながっていると、いまこそ思います。
被災されたひとたちが、すこしでも癒されますように!復興まで道は遠いですが・・

2011年03月27日 11:44
takahashinoriko

毎週日曜日は、主人とふたりのサンデー音楽会です。
音痴の主人がこの日だけは、おいしいコーヒをいれてくつろぐひと時です。

ありがとうございます。

2011年03月27日 09:52
emiemi

コーヒーを飲みながら「題名」を見る。いつもの日曜の朝。
なにげなく日常を過ごせることに、感謝します。
パリでの演奏会、インターネット放送で聴きました。G線上のアリアでは、涙がこみ上げてきました。私に出来ることを精一杯やっていこうと決心しました。

2011年03月27日 09:40
サドラー2号

今回の震災については世界中から支援の手が差し伸べられていて、私は被災者ではないけれども、Twitterなどでそのことを知るたびに涙が出るほど嬉しく思っていました。世界の人との連帯を感じ、平和を願う思いは共通なんだと新ためて感じました。そしてまた、音楽を求める心も世界共通ですね。困難の中でこそ、音楽による癒しは一層必要とされるもの。私も、音楽の力を信じて頑張っていきたいと思います。被災された方々に子の祈りが届くことを願って。