2010年11月14日 09:30

日本の皆さまチャオ!今週は再びイタリア、トリノからのブログです。今年の2月3月に王立歌劇場のオペラの指揮でここトリノに6週間滞在しましたが、今回はトリノのもう一つのオーケストラ、イタリア国立放送交響楽団との演奏会です。このオケとはもう10年の付き合いになります。初日の練習に到着すると、メンバーが「お帰りなさい!マエストロ」と笑顔で迎えてくれます。やっぱりイタリアのオケは明るいですね。今回は神戸からの出発だったので、自宅から車で伊丹空港へ、そこから伊丹→成田→パリ→ミラノ、そしてミラノから迎えの車でトリノまで更に1時間半という気が遠くなるほど長い旅でしたから、彼らメンバー達の笑顔には随分といやされました。ところで、この時期のトリノの最大の楽しみといえば、なんといっても白トリュフ!正確には、トリノから車で小一時間のアルバ村が有名ですね。さっそく着いた次の日に生パスタに白トリュフをシュッシュと削って美味しくいただきました!トリュフはフランス産の黒いものが有名で、こちらも十分高級食材なのですが、これがイタリア白トリュフになると黒の何倍もの値段がします。香りに特徴があり、バターやお肉のソースと一緒になると、まるで身体中を包み込むように特有の香りが広がります。ただしこの白トリュフをいただくと「トリュフは香りを楽しむもの」という常識は完全にくつがえります。香りはもちろん素晴らしいのですが、口の奥からジワリジワリと広がってくる美味こそが最大の魅力です。おもしろかったのは、テーブルにとても小さい電子式のはかりが出てきて、削る前にトリュフをその上に乗せてグラム数を測ります。それからトリュフ用のカンナでバターだけで味付けした卵パスタの上にシュッシュと削り落していくわけです。そしてまた残ったトリュフをはかりの上に…。そうなのです、時価も時価、正確に1グラムいくらで計算するのです。今回のレストランはとても美味しく、且つリーズナブルな方でしたが、それでも1グラム5ユーロ、2人分のトリュフで45ユーロ(約5千円)ぐらいでした。僕は数百円の豚骨ラーメンでいいや!なんてすぐに思ってしまいそうですが、松茸や白トリュフなど季節の逸品もたまには良いものです。

  話は変わりますが、トリノに滞在中に上記の王立歌劇場にも行きました。ちょうど「蝶々夫人」の初日だったのですが、終演後に舞台裏を訪ねたら、本当にオケのメンバー全員が揃って僕が来るのを待っていてくれたのです!というのも、彼らは今年の夏に日本公演をしていて、その際僕が大量のビールの差し入れをしたのですが、そのお礼というわけです。こんな経験は長い指揮者人生でも初めてのことですね。やっぱりイタリアは楽しいし、面白いなぁと思います。

  さて、番組は「マーラー交響曲第5番」でした。大曲です。前にも<5>という数字で特集を組みましたが、ベートーヴェンの第5交響曲「運命」と同じく、5番という数字が持つ宿命的な意味あいが曲に色濃く出ているのが大変興味深い。そして何しろ名曲です。これはもちろん聴いている方にとっても名曲なのですが、番組でも宮本文昭さんからお話があったように、演奏している方にとってもとてもやりがいのある曲なのです。この曲は後期ロマン派の代表作と言っていいと思いますが、感情の起伏の激しさや、オーケストラという大きな創造体の力を駆使した物凄いドラマが作り上げられる喜びに触れることが出来ます。まだまだ他にもマーラーの面白さは皆様にお伝えしたいことがたくさんありますが、それはこの番組のコンセプトでもあるように、皆様自身が新しいページを自ら開いてくださったらと願っています。マーラーに関する本も多く出ていますし、特に奥様のアルマが書いた本などはなかなか面白いですよ。そしてどこかのオーケストラが、マーラーを演奏する機会がもしあれば、ぜひ会場に出かけて生の演奏に触れていただきたいと思います。白トリュフの味を説明するのもそうですが、やっぱりこれを実際に味わってもらうのが一番の方法ですから!


視聴者からのコメント
2010年11月14日 09:56
ぶうりん

マーラーはCDで聴くだけでなかなか
コンサートに足を運ぶことができずにいましたが、今日は演奏を視覚的にも楽しめました。楽器と楽器との掛け合いや、管楽器がベルアップして演奏するところなど、マーラーの職人ぶりが伝わりました。宮本さんの不思議とうなずけるお話、千住さんのわかりやすい解説をおききして、今度はぜひ生でマーラーを聴きたい!と思いました。

2010年11月14日 09:38
サドラー2号

長いこと合唱をしているとマーラーを歌う機会もあったわけで、2番「復活」と3番を歌ったことがあり、それでマーラー大好きになりました。もちろん5番も大好きです。
マーラーってすごく牧歌的で美しいかと思うとスペクタクルでドラマチックで、ほんと、飽きないですよね!
でも、小澤征爾さん指揮の3番を歌ったとき、ステージで爆睡したことはヒミツです(笑)

2010年11月14日 09:30
げ@一介のリスナー

少年の頃、「まとまりがなく、とっ散らかってて、独りよがりで、過ぎ去った時代に対してひたすら恋々としているだけの無駄に長い暗あい音楽」にしか聴こえなかったグスタフ・マーラーですが、その美しさに初めて惹きつけられたのが今回採りあげられた第五番の交響曲でした。ヴィスコンティの映画「ヴェニスに死す」には今でも心から感謝しています。
来年1911年は、今度はマーラー没後100周年に当たりますね。
ウィーンに行ってマーラーのお墓参りが出来ればいいなと思っています。