美味しいものといえば、今年はミシュランの関西版に＜神戸＞が加わりました。僕が通うお店が何軒か登場したのはやっぱり嬉しいものですね。神戸で唯一の三つ星を獲得したのは、「カセント」というスペイン料理のレストラン。実はここ数年前から大人気のお店で、残念ながら僕はまだ行けていないのですが、ここのシェフとはちょっとした縁があります。数年前に『ミセス』という雑誌に毎月「クレッシェンド・ボナペティート」という食べ物と音楽に関するエッセイを連載していました。当時僕はミラノのオーケストラの首席客演指揮者をしており、その劇場のすぐ裏にヨーロッパミシュランの星を持つ「サドラー」（！？）という名前のお店があり取材に行きました。素晴らしいおもてなしと味に大感激したのですが、そのヨーロッパを代表するレストランの厨房で肉を任されていたのが若い日本人の福本さんでした。まだ彼は20代の中頃だったと思いますが、「頑張ってな～」なんて励ましたのを思い出します。その彼がその後スペインに渡り、今食の世界でも注目を集めているスペイン料理を身につけて神戸に帰り開いたお店が「カセント」なのです。何しろ三つ星を取る前から予約したくても年内はもう無理という状態だったほど。三ツ星獲得、本当に素晴らしいですね。

　そして、僕がもうひとつ嬉しかったのが、天麩羅の「やまなか」が星二つを獲得したこと。このお店は開店後わずか5年にしての快挙ですが、僕はここ数年通っていて、日本一美味い天麩羅屋だと思ってます。開店5年だけあって御主人もまだ若い。天麩羅屋というとやはり老舗でなくてはと思う方も多いと思いますが、何と言ってもやはり味です！やまなかさんは、何でも目の前にある物を手当たり次第揚げているのではと思うほど、出てくるネタの種類が豊富です。明石や淡路でとれた最高の海の幸を用意し、野菜も本来の魅力を生かしながら別物に変身させます。特に鳴門金時芋の天麩羅は絶品です！最後は掻き揚げの天丼か天茶でしめるのですが、僕は最初に行った時、天茶を選びました。不思議なことにお茶に一切油が浮いていない、物凄くあっさりとした軽快な天茶です。そうなるとどうしても、もう一方の天丼が食べたくなってきて、特別にお願いして天丼も注文したところ、こちらはタレが効いて、白飯が美味い！と感動。絶対お勧めです！

　放送がない日のブログがどんどん長くなりますが、もう一つ神戸のパン屋さんを紹介させてください。僕の友人でよく演奏会にも来て、オーケストラのメンバーにも一杯パンを差し入れしてくださる西川さん。彼は長年神戸の有名店「コムシノア」でパンを焼いてきた職人さんです。そんな彼が、神戸の北野にとってもおしゃれなパン屋「パンと暮らしのサ・マーシュ」をオープンさせたのです。異人館が立ち並ぶ近くで、パン屋さんなのに大きな門があります。店のシンボルともいえる凄く可愛い鉄の門をくぐると数メートル花に飾られた小道を歩きます。そしてその奥に平屋建ての素敵なパン屋さんがあるのです。お店のデザインは奥様のアイデアだそうです。味はもちろん、長年の経験を生かしたシェフのこだわりの塊みたいなパンばかりです。とてもシンプルでパン本来の味を大事にしています。食パン、バゲット、田舎パン、オリーブ油を混ぜたものなど、パンの美味しさを改めて感じさせてくれます。お店に置いている殺菌されていない牛乳もお薦め！臭さが一切ありません。星つきのレストランでランチもいいですが、ここにぶらっと立ち寄って、愛情こもったパンの説明を聞きながら、その日の気分でいくつかのパンを選び、店の前庭のテーブルでお昼御飯にするのも最高ですよ！