2009年07月19日 09:30

 兵庫で9回公演を終えたオペラ「カルメン」、東京公演がいよいよ開幕しました。僕にとって非常に大きな経験になったのは、兵庫で9回も繰り返しやった作品を、オーケストラを東京フィルハーモニー交響楽団に変えて作り直せたということです。オケはさすが、東フィル!経験値が明らかに兵庫PACオーケストラと違います。HPACオケの魅力を誰よりも知っている上で書きますが、東フィルの機能性の高さはさすがです。歌をよく聴き、歌手に寄り添うように音を奏でてくれます。僕の指揮者としての労力も、同じ作品を指揮していてもずいぶん違う(笑)。でもね、HPACオケは少しずつ成長していけばいいのです。みんなで精いっぱい練習して、一歩ずつ成長していく。それを楽しみにしてくれている、最高に温かい兵庫のファンに見守られ、世界一面白いオーケストラになる!また一つ、遣り甲斐が見つかった気がしています。

 さて、実は今回の「カルメン」は僕にとっては本格的オペラの東京デビューにもあたります!二期会での指揮というのも初めてだし、上野の東京文化会館のオケピットに入るのも初めてです。二十歳の時にオペラの世界で仕事をはじめ、6年間、関西二期会で副指揮者を経験しました。これは非常に大きな経験で、というのも副指揮者は最初の練習から最後の本番まで、ずっと練習に立ちあい、本番指揮者の手助けをし、演出上、歌手から指揮が見えないところを、舞台裏でペンライトで指揮をしたり、本番指揮者に何かが起こって、急病の時に備えていつでもスタンバっているわけだけれど、まあ、そんなことはなかなか起こらない(笑)。20年以上も前の話ですけれど、文化会館のオケピットまでの道のりは、長かったような、あっという間だったような…。込み上げる思いを胸に指揮台に立った、肝心の「カルメン」初日ですが、無事に大成功で終えることが出来ました!大勢のお客様がスタンディングでカーテンコールしてくださいました。嬉しいですね~。楽譜の隅々までが身体に入った状態で、最高のコンディションでの東京オペラデビューになりました。

 

 さて今回の放送は、音の探究者、僕にとっても憧れの冨田勲さんの特集です。実はこの日の収録は、もう一本が天才ピアニストのファジル・サイの回だったのだけれど、ファジルが「ゆたか、マエストロ冨田を紹介してくれよ!」と頼みに来ました。海を越えて、彼を尊敬している音楽家が沢山いるのです。僕が中高校生の頃、冨田さんのシンセのレコードを持っていました。なかでもホルストの「惑星」は相当聴きこみました。本来のオケの演奏と比べたら相当アレンジされている音が鳴ります。僕なんかは、小さいころから「楽譜どおりに弾きなさい!!」と怒られ続け、ほとんどそうは弾けなかったタイプですが、こんなにも作品から離れて、自分のスタイルを前面に打ち出されると、これはこれで本当に面白いなぁと思えたものです。だから今の佐渡裕の中には、カラヤン、バーンスタインや小澤征爾らの音が身体にしみ込んでいるけれど、同じように冨田さんの音への姿勢もしっかり身体に染みついています。収録後に冨田さんから「新橋で飲もう!」とお誘いいただいたのに、残念ながらご一緒出来ませんでした。ぜひ今度冨田さんと酒を酌み交わしたいと思います。

 

視聴者からのコメント
2009年07月24日 17:54
みみすけだニャ!

やっぱり、佐渡さんの指揮は憧れです名前を覚えてくださった時は、本当に嬉しかったです。ニャーゴ!日曜日にカルメンで、オペラ鑑賞デビュー!4階席から、双眼鏡で佐渡さんをバッチリ鑑賞!見えて嬉しかったニャ!(横でパパがすねてたけど)次の日に、佐渡さんのことばかり考えていたら、「ソナチネ」のファの#を抜かしてしまいました!やっちゃったー♥今度、いつか「ブロードウエイ」の楽譜をもってお会いしたいと思います!上手くなりたいので絶対ですよ!おねがいします。フニャー!

2009年07月20日 16:12
キューバ序曲♪

〝前のめりで拍手〟…本当にそうですね。背もたれが要らないくらい! 19日の〝カルメン〟体感してきました。初めてのオペラ…舞台から迫力のある歌声、演技と圧倒されっぱなし…休憩を挟んでからは少しリラックスし、ミカエラ(木下美穂子さん)の一途な歌声に目が潤み、カルメンの素直な生き方に共感し…愛さずにはいられない存在のカルメンを実感!
客席の雰囲気、オーケストラの音の響きも普段のクラシックの演奏会とは大違い…驚きの連続でした。素晴しいチャンスをありがとうございました。
…ごめんなさい。番組の方は出掛ける前の家事に追われ見ることができませんでした。再放送を見ます!

2009年07月20日 08:07
おそまつさん

東京でのオペラデビューおめでとうございます!!!
私もHPACさんの温かくそして厳しいファンの一人です。ふっふっふっ。これからますます楽しみにするんだニャロメー!
いい音がする風鈴を探してるんですが、明珍火箸、いいかもー。

2009年07月20日 06:37
うさこ

冨田勲さんの「惑星」はかなり聴きこみました。これがシンセサイザーで作られている音?1人で演奏してるの?どうやってこの音を作ったの?など『?』の連続でした。オーケストラの「惑星」より神秘的な「惑星」でした。冨田さんといえば、子供時分からアニメの音楽を担当されていて、絵の動きと音楽がまさに一体となって引き込まれていました。私が音楽が大好きになったのも、冨田さんのおかげであるといえます。ありがとうございます。

2009年07月19日 21:50
SAI

子供の頃にTVでそうと知らず聴いてはいましたが、初めて冨田さんのことを知ったのは中学の音楽の授業でした。私が初めて接した「展覧会の絵」はオケ版でもピアノ版でもなく冨田さんのものでした。中でも「卵の殻をつけた雛の踊り」は特に印象的だったのでよく憶えています(生徒達に一番ウケてましたし)。
あと印象的だったのは(他局ですが)大河の「徳川家康」(多分)で、冨田さんの曲というと「声」のイメージがとても強いです。

2009年07月19日 12:47
題名フアンT

<音響の追求者が生んだ世界>を見、テレビ放映としてはめずらしい大規模な作品に感動した贅沢な30分でした。世界の富田さんの温厚なお人柄や尺八の藤原道山さんの真摯な態度がうかがえるのもテレビならではないでしょうか。今後も色々なジャンルの作品を楽しみにしてます。

2009年07月19日 11:56
40年来のファン

展覧会の絵 原曲は、1874年、ラヴェルの編曲が50年後の、1924年、そして、さらに
50年後の、1974年に、冨田勲の画期的編曲と報じられていたと思います。
黛さんの時、黛さんの声を、電子処理して、音をだしたら、かえるみたいだ、とやって
たと思いますが、この時冨田さん出演していたのでしょうか。
音の電子処理は、倍音を自由に扱えたとおもいますが、これにより、新しい表現が
可能になり、冨田さんいち早く採用したという事でしょうか。
電子楽器、当初は、真空管、LSIの進歩で、いまは、大分コンパクトになっていると
思いますが、当時は大分苦労があったのでは。
日本への回帰、床しくおもいました。明珍火箸。ウェーベルンの極致では。

2009年07月19日 09:30
げ@一介のリスナー

原曲を凌駕するドラマ性をふんだんに漲らせ、途方もない空間に誘い込むようなシンセサイザーの世界に魅了されるはるか以前の幼少の日々、どろろ、ジャングル大帝、リボンの騎士、あるいはキャプテンウルトラにマイティジャックと、熱中したTV番組は必ず冨田先生の音楽が彩りを添えていました。長じて僕が日本の伝統に目覚め、20世紀や現代の音楽に全情熱を傾注する羽目になった原典こそ冨田勲先生そのものです。
わが日本の誇る音楽のネ申よ、永遠なれ!