2009年06月21日 09:30

 オペラ「カルメン」の稽古も最後の追い上げに入っています。舞台の仕組みがものすごく面白いのだけれど、そのために音楽を犠牲にしなくてはならなかったり、演出家との熱いせめぎあいが続きます。オペラというのは、本当に大勢の人が関わって作りますから、出演者、スタッフのそれぞれに、満足、不満足が起こります。作品で悩むのは楽しいことだけど、人と人がぶつかることは苦しいことですね。でも、今回は厳しい練習を何度もこなしてきました。ぶつかりあいも何度も経験し、そうしてゆっくりと新しい創造物が出来上がっていくのです。

 

 30年ほど前に、初めてオペラの仕事にかかわりましたが、今こうして、当時と比べれば、あらゆる面で規模もレベルも全然違う大きな舞台を、芸術監督として任されていることを、改めてありがたいなぁと思います。芸術監督である僕を色々なグループが支えてくれているですが、中でもステージの進行をする演出部の仕事ぶりには感動します。彼らは、演出家を補佐し、舞台装置や照明、音響、衣装、道具など、全ての進行にかかわり、それらを繋いでいます。歌手の練習には全て参加し、舞台がスムーズに進行するように細心の注意を絶えず払っていて、まさに縁の下の力持ちです。スタッフを含め、みんなが創造の歯車の一つになった時、オペラは大きな大きな感動を伝えることができます。ここから仕上げて、初日の舞台で兵庫のお客様と一体になってこそ、本当の完成。あと一週間です!

 

 さて、今回は「声魂 コエダマ」と題し、人の声が持つ不思議な力にスポットを当ててみました。実はこの日、1本目の収録は<山下洋輔トリオ>だったのです。スペシャルゲストも登場しご想像のように、音楽的にも、それからトークとしても、物凄く盛り上がりました。この収録の後に「声魂」は実はやりにくいのでは?と思っていたのですが、これこそが声の不思議。会場に素晴らしい声が鳴り響き、お客様も我々も包み込まれるような幸福感で一杯になりました。
人間にとって最高の楽器は声だと思っています。“身体”が楽器なのですから、その人が過ごした人生経験や、生き様が声になって表れます。苦しみを乗り越えた経験も、勇気を振り絞った体験も、喜びに溢れた瞬間も、最高の楽器を通して、その人だけが持つ音色で歌われる時、誰でも歌える歌が、その人にだけしか歌えない歌に変わっていきます。こうした歌を聴くと「ありがとう」と僕の中の感謝力がぐぐぐーっと込み上げてきます。心の細胞がビタミンを得たように活性化し、優しく、たくましく、豊かな気持ちになれるような気がします。

視聴者からのコメント
2009年06月23日 17:34
風そよぐ

流れるように奏でられる心の音色が並ぶ声、その中に潜められる様々なトーン。喜怒哀楽と四つの漢字が語られる音色は、聴く者の中にある喜怒哀楽の色調と重なる“根”のセレナーデ。画面を通して響く音色に思わず食い入る視線、胸いっぱいに迫り来る声魂のトーンに、ただ呆けるままに聞き入りました。ギネス世界記録番組おめでとうございます。番組のお陰で、実に多くの方々の音色、技、時には肌に触れる様な愉快なお話しまで楽しんでいます。

2009年06月23日 10:57
ぼたん

「感謝力」という言葉を初めて聞きました。素敵な言葉ですね。
ゲストのお三人の感謝力にあふれ、心から湧き出る歌声に魅かれています。
また、世界の大歌手を前に、「やっぱり母親が台所で口ずさんでいた歌が僕にとって一番!」と話されたことに驚きました。もちろん世界の指揮者のお母様だからお歌もすばらしいのでしょうが、でもそういう意味だけでなく、日本中でだいどこ(台所)で家族のためにがんばってるお母ちゃんたちへの最高のエールのように思えました。うちの子供らもいつかそんなふうに思ってくれたらええなあ。(^-^)
「カルメン」もおもしろそうですね。舞台裏でのご苦労話を読み、一層興味を持ちました。長丁場だそうですが、どうぞお身体に気を配られて、めいっぱい楽しまれますように。大成功をお祈りしています。

2009年06月22日 18:17
コッぺリアン#

声は、人の心を動かしたり、響かせてしまう魅力があるんだと感じました。特に、オペラなんかは歌をきいているだけで、その人が思っていることがわかるんですよね~。とても、感動しました。

2009年06月21日 13:52
ちーぼぼ

いつも楽しく拝見しています。今回の声魂…人の歌声って本当にすごいですね!最後の「アメイジング・グレイス」心が洗われるように自然と涙が流れました。これからも心に響く音楽、楽しみにしています。

2009年06月21日 10:52
mimo

「声魂 コエダマ」・・・・
素晴らしい!感動!感動!大々感動!

木下少年の成長に涙しました。
首をふる特徴のある仕草で、
夢を語ってくれた少年が・・・・。
涙があふれて・・・。
 「アリガトウ! コウシ君」

2009年06月21日 10:19
ポエム

言魂という言葉は知っていますが、声魂というのは初めて知りました。
素敵な言葉ですね。

声は心にじかに響きますよね。
詩の朗読もそうですが、歌の持つ力を改めて感じました。
最後の3人の唄声に包まれた時に鳥肌が立ちました!

2009年06月21日 09:54
しのママ

あーーーー!なんてすごいこった!!ホールで生の歌声を聞いた人は奇跡の一瞬を共有したのですね。そんな出会いがあるから、ホールに向かうんですよね。あの響き、体でかんじたかったなあぁ~!歌をうたう幸せを感じながら日々人間修行をしていきます。ハイ!

2009年06月21日 09:30
げ@一介のリスナー

声魂。言い得て妙ですね。
肉体から直接放たれる喜怒哀楽様々な振動は、そのものずばり、生命の響きすなわち音楽の源なんだと思います。
それにしてもあんなヴィブラート、どうやったらかけられるのかなあ。